生物多様性保全

方針・基本的な考え方

伊藤忠商事の事業活動は、地球上の多種多様な生物が様々な関係で繋がることにより生まれる、生物多様性の恵みに大きく依存しています。当社は事業拠点周辺の生物多様性の保全と森林・水産資源等の持続可能な利用に関する「事業活動における生物多様性の保全」と、森林コモディティ等を取扱っている地域の社会貢献活動の一環としての「事業関連地域における生物多様性保全」の2つの取組みを実施しています。
グローバルに事業を行う伊藤忠グループは、地球規模の生物多様性を含む地球環境問題を経営の最重要課題の一つとして捉え、企業理念「三方よし」を実現すべく、伊藤忠グループ「環境方針」に示す生物多様性の保全を推進するため、「生物多様性方針」を定め、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

生物多様性方針

  1. 生物多様性に配慮した環境経営

    事業活動が生物多様性の恩恵に依存していることや、生態系に影響を及ぼす可能性のあることを認識して、自然共生社会構築のために、相互に関連する気候変動対策・資源循環対策・生物多様性保全などの幅広い環境活動が事業活動の中に取り込まれた環境経営を推進する。
  2. 事業と生物多様性との関わりの把握、影響の低減

    グローバルな視点で、グループ企業はもとよりグループ全体における事業活動と生物多様性との関わりを把握し、生物多様性への影響のネットポジティブ化を目指して、事業活動が生物多様性に与える影響の回避と最小化に努めるとともに生態系の回復を推進する。
    木材・天然ゴム・パーム油等の森林に関連するコモディティに関して、自然林と森林資源保護に関する調達方針を定め、法律等で指定された保護地域からの産出による森林破壊ゼロを確認するための情報収集を推進する。
  3. 国際的な条約と各国の国内法の遵守

    生物多様性条約等の生物多様性に関する国際的な条約、及び関連する各国の国内法を遵守し、生物多様性の保全を推進する。
    ワシントン条約(CITES)等で指定されている絶滅危惧種に関し、事業活動でこれらの取引に加担しないだけでなく、事業活動地域における絶滅危惧種保護の社会貢献活動を推進する。
  4. パートナーシップの強化と地域の生態系保全

    業界団体、サプライチェーン、NGO、国際機関などと連携し、生物多様性に関する認識の共有を図り、生物多様性保全の取組みを、より実効あるものにする。
    事業活動地域の生物多様性保全に配慮するとともに、地域の豊かで安全な暮らしの実現に貢献するため、行政機関のみならず、地域住民、NGOなどステークホルダーとともに自然資本を活かした地域の創生の視点から生物多様性保全を推進する。
  5. 情報共有と発信の強化

    啓発活動などにより、社員はもとより事業活動地域の地域住民における生物多様性についての理解を促進する。
    取組内容、目標と達成状況を継続的に開示することにより、社会全体の生物多様性への意識向上に貢献する。
  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)

代表取締役 副社長執行役員 CAO
小林 文彦

2022年4月制定

目標

伊藤忠商事は、サプライチェーンを含む事業の取扱商品における製品認証とトレーサビリティによる生物多様性保全と、事業に密接に関連している地域での生物多様性保全に資する社会貢献活動を実施しています。当社は森林資源(木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品、天然ゴム、パーム油)・乳製品・食肉・水産物・繊維原料を生物多様性に関わる重要な取扱商品と捉えており、それらに関する情報開示と目標設定に努めています。

事業活動における目標

区分・方向性 目標 2022年度の実績 SDGs
生物多様性の保全
伊藤忠商事の取扱商品と実施するプロジェクトのサプライチェーンでの生物多様性保全へのインパクトを減らす
2025年までに、生物多様性リスクが高いと考えられる投資案件(水力・鉱山・船舶等)全てにおいて、生物多様性に重点を置いたESGリスク評価を再度実施し、必要な場合は改善計画を実施する。
  • ESGチェックリストを改訂し、新規事業投資における生物多様性リスクの状況を把握するスキームを構築。
  • TNFD Forumへ参画し、自然資本に関するリスク・機会の分析を行うためのツールの使用を開始。
生物の多様性の構成要素の持続可能な利用
森林・水産・農産物等の資源を、将来にわたって安定して生産・供給していくために、資源の持続的な利用を強化する取組みを実施していく
  • 木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品:認証材、または高度な管理が確認できる材の取扱比率100%とする。
  • パーム油:2030年までに当社が調達する全パーム油を持続可能なパーム油※1に切り替える。特にNDPE原則※2に基づく調達の実現を目指す。
  • 当社取扱水産原料:MSC※3/CoC※4原料取扱量を、5年以内に15,000t/年を目指す。
  • 認証材、または高度な管理が確認できる材の取扱比率は、パルプ・木材で100%、チップで97%。
  • パーム油は2022年度のミルレベルまでのトレーサビリティは100% 。
  • 水産原料に占めるMSC/COC数量は2022年度7,500t。
  1. 持続可能なパーム油:RSPO及びこれに準ずる基準に応じたサプライチェーンから供給されるパーム油
  2. NDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation):森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ
  3. MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会):1997年設立の持続可能な漁業の普及に取組む国際NPO。本部はイギリスのロンドン。
  4. CoC (Chain of Custody Certificate): MSCにおける「加工・流通過程の管理」において、MSC認証を受けた水産物・製品のトレーサビリティを確保するための加工・流通業者に対する認証

ご参考:その他の事業活動における目標

事業関連地域における目標

目標 2022年度
行動計画
2022年度の実績 2023年度
行動計画
SDGs
(持続可能な開発目標)
環境保全を目的とした社会貢献事業の実施及びフォロー
  1. 「奄美大島・宇検村マングローブ植林プロジェクト」の推進。
  2. 「絶滅危惧種アオウミガメ保全プロジェクト」の推進。
  3. その他環境保全事業の推進。
  1. 奄美大島・宇検村における無人島枝手久島でのマングローブ植林を開始。また、宇検村のマングローブ・メヒルギの胎生種子を港区立青山小学校全児童で育成し、国立科学博物館筑波実験植物園、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)への寄贈を実施。
  2. 「絶滅危惧種アオウミガメ保全プロジェクト」について、アジア地域の海洋保全に取組む認定NPOエバーラスティング・ネイチャーの小笠原海洋センターで行うアオウミガメ産卵巣数モニタリング調査とふ化後調査を2016年度から支援継続。調査結果では、小笠原のアオウミガメの増加傾向が継続していることを確認。
  3. 滋賀県及び滋賀県立琵琶湖博物館と協働で絶滅危惧種アユモドキ・ゼニタナゴ保全プロジェクト(希少淡水魚の飼育技術確立に関する研究)を開始。
  1. 滋賀県及び滋賀県立琵琶湖博物館と協働で絶滅危惧種アユモドキ・ゼニタナゴ保全プロジェクト(希少淡水魚の飼育技術確立に関する研究)を推進
  2. 「奄美大島・宇検村マングローブ植林プロジェクト」の推進。
  3. 「絶滅危惧種アオウミガメ保全プロジェクト」の推進。
  4. その他環境保全事業の推進。

体制・システム

新規事業投資案件における生物多様性の影響評価

伊藤忠商事が取組む事業投資案件については、その案件が環境・社会に与える影響を「投資等に関わるESGチェックリスト」により事前に評価しており、例えば生態系への影響や、資源の枯渇等の自然環境・生物多様性への影響有無の把握も含まれています。影響が認められる場合はリスク分析の上、必要があれば外部の専門機関に追加のデューデリジェンスを依頼する等して、問題がないことを確認したうえで、投資実行することにしています。

商品ごとの生物多様性の影響評価

伊藤忠商事は、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を導入し、事業活動が環境・社会に与え得る影響を認識しています。環境・社会リスクの未然防止を図るため、LCA的分析手法を用いて、当社が取扱う商品別に「サステナビリティリスク評価」を行っています。当評価は、バリューチェーン上で、生物多様性に負の影響を与える工程の有無を評価する仕組みとなっており、当社はこのシステムを通じ、環境関連法規制の遵守、生物多様性を含む環境リスクの未然防止、及び環境保全型ビジネスの推進を目指しています。

また、サプライヤーの実態を把握するため、生物多様性を含むISO26000の7つの中核主題を必須調査項目としたうえで、高リスク国・取扱商品・取扱金額等一定のガイドラインのもとに各カンパニー及び該当するグループ会社が重要サプライヤーを選定し、各カンパニーの営業担当者や海外現地法人及びグループ会社の担当者がサプライヤーを訪問しヒアリングを実施しています。

TNFDに沿った自然関連依存・影響の評価

[図]
依存度と影響度マッピング
[図]
依存度と影響度マッピング
  • 破線はENCORE全プロセスの依存度、影響度の平均

伊藤忠商事は自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)によるTNFDフォーラムに参画しています。2022年度は、TNFDベータ版フレームワーク(βV0.1-βV0.4)を参考に、当社グループの事業における生物多様性・自然資本への依存度・影響度が大きい事業活動を特定するための一次評価を実施しました。具体的には、国連環境計画等が開発した自然資本影響評価ツール(ENCORE)を用いて、当社事業の上流下流も含めたバリューチェーン上で行われている活動工程をENCOREが定めたプロセス別に仕分けしました。その上で、類似したプロセスを持つ事業ごとに集約し、28のグループを作りました。28グループ別に、当社の関与度合い等も考慮しながら依存度・影響度それぞれのスコアを算出し、右図のような「依存度・影響度マッピング」となりました。

今後は、LEAPアプローチといわれる「特定された事業活動における依存度・影響度の評価」、「依存度・影響度を踏まえた重要なリスクと機会の特定」、「対応方針の策定とモニタリング」を行っていく予定です。

取組み

事業活動における生物多様性の保全

森林資源関連事業における生物多様性への配慮

伊藤忠商事では、森林資源(木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品、天然ゴム、パーム油)の取扱いによる森林破壊防止を重点項目と考え、生物多様性保全のため、FSC森林認証等の製品認証取得とトレーサビリティシステムの整備に取組んでいます。

ご参考:木材、木材製品、製紙用原料及び紙製品

閉山における生物多様性への配慮

当社は鉱物資源の開発事業において、国際的な基準に基づき環境・衛生・安全(EHS)ガイドラインを定めており、その中で閉山における生物多様性への配慮についても規定しています。閉山計画は物理的な原状復帰だけでなく、特にステークホルダーと連携して地域の社会経済と環境に配慮し、地域に対する影響を最小化、利益を最大化できるように閉山計画を設計します。そのためには資金準備、操業に際して建設した水路等の安全確保、使用した化学品等の残留防止、生態系保全、といった対策が必要です。将来の閉山に向けてパートナーと協業し、資源国で定められている環境影響評価や閉山計画の策定を適切に行い、毎年のEHSチェックリスト作業の実施を通じて状況を確認する体制を整備しています。

  • 国際金融公社(IFC)のEHSガイドライン

事業関連地域における生物多様性の保全

伊藤忠商事は、ステークホルダーと共同して、絶滅のおそれのある野生生物の保全活動を実施しています。

世界遺産の島、奄美大島・宇検村とのマングローブ植林プロジェクト

奄美大島西部の宇検村では、多様な生物が息づく豊かでかけがえのないふるさとの自然を、次世代を担う子どもたちが誇りを持って愛せるものとして守り育てていく取組みを進めています。伊藤忠商事は2021年より本取組みに賛同し、宇検村の子どもたちが育てたメヒルギ苗を使ったマングローブ林の植林活動支援を開始しました。2022年は、宇検村・枝手久島での植林活動を開始しました。当社はマングローブ植林を通じて生物多様性の保全に寄与すると共に、将来的にCO2クレジット創出の取組みも目指します。

  • メヒルギ:日本では鹿児島県と沖縄県に自然分布するマングローブ林を形成する植物の一種です。
[写真]
マングローブ再生事業始動
[写真]
育てた苗を植える小学生
[写真]
枝手久島における植林の試行開始

マングローブの生育域外保全プロジェクト

伊藤忠商事は、奄美大島・宇検村でのメヒルギの生育域内保全に加え、国立科学博物館筑波実験植物園との協働により、生育域外保全を開始しました。これは、2022年に当社東京本社の近隣小学校・港区立青山小学校の全児童が胎生種子から育てることを当社が支援し、その苗を寄贈したものです。

[写真]
筑波実験植物園の栽培圃場での生育域外保全
[写真]
筑波実験植物園水生植物温室での展示

滋賀県、滋賀県立琵琶湖博物館との希少淡水魚 協働保全プロジェクト

[写真]
琵琶湖博物館内の淡水魚飼育室での調査

伊藤忠商事は、創業地の環境保全を目的として、滋賀県および滋賀県立琵琶湖博物館と協働で、絶滅危惧種であるアユモドキ・ゼニタナゴ保全プロジェクト(希少淡水魚の飼育技術確立に関する研究)を開始しました。琵琶湖は、世界で20程しかない古代湖の一つで、1,700種以上の動植物が生息し、60種を超える固有種も存在します。水鳥の重要な飛来地でもあり、ラムサール条約による登録湿地です。

琵琶湖博物館では、絶滅のおそれがあるアユモドキ等の希少淡水魚の継代飼育を実施しています。現在、琵琶湖博物館に設置されている保護増殖センターや水族展示内の飼育設備では約35種類の日本産淡水魚類について飼育下での繁殖・系統保存が行われており、その中には、ゼニタナゴ等すでに生息地では絶滅した可能性のある個体群もいます。これらを絶やさず残し続けていくことは、国内における希少淡水魚の生息域外保全となり、将来の野生復帰を見据えた重要な取組みです。

アマゾンの生物多様性保全プログラムを支援

[写真]
アマゾンの熱帯雨林は世界最大で、地球上の酸素の1/3を供給するといわれている
[ロゴ]
「マナティー里帰りプロジェクト」のロゴ

ブラジルは、伊藤忠商事が1957年に進出して以来森林資源・鉱山資源事業を中心に様々な分野での事業を展開しており、アマゾンを始めとするブラジルの豊富な水資源・生物資源より様々な恩恵をうけています。当社は、2016年度より環境・生物多様性保全を目的とし、京都大学野生動物研究センターがブラジルの国立アマゾン研究所と進めるアマゾンの熱帯林における生物多様性保全プログラム「フィールドミュージアム構想」及び研究施設「フィールドステーション」の建設に関する支援を通して、危急種であるアマゾンマナティーを救う活動を行っています。本プロジェクトは、日本の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同実施する、地球規模課題解決と将来的な社会実装に向けた日本と開発途上国の共同研究「SATREPS(サトレップス)プロジェクト」の一つにもなっています。伊藤忠商事の支援により、2016年度からの3年間のプロジェクト期間で、9頭以上のマナティーの野生復帰と20頭以上の半野生復帰を目指し、実際には27頭の野生復帰と31頭の半野生復帰を果たし、また地域の住民100人以上に学びの機会を提供することができました。

ご参考:アマゾンの生態系保全プログラム支援

[写真]
完成したフィールドステーション
[写真]
危急種のアマゾンマナティー

絶滅危惧種アオウミガメ保全プロジェクト

伊藤忠商事は、生物多様性の保全を目的として、環境省レッドデータブックにて絶滅危惧種に指定されているアオウミガメの保全活動を認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)を通じて支援しています。ELNAは、アジア地域の海洋生物及びそれらを取り巻く海洋環境を保全していくことを目的に1999年に設立され、神奈川県より認定NPO法人の認定を受けている団体です。ELNAの24時間体制での保全活動により、小笠原諸島のアオウミガメの数は、増減を繰り返しながらではあるが増加傾向にあります。
また、父島に滞在して保全活動をするボランティアが滞在するための宿泊場所が老朽化していたため、住環境や利便性が向上した新しい宿泊施設の建設を支援し、2020年5月にユニットハウスが完成しました。

ご参考:ELNA 絶滅危惧種アオウミガメ保全活動報告[別ウインドウで開きます]

[写真]
絶滅危惧種アオウミガメ(小笠原諸島にて撮影)
[写真]
従業員が保全活動に参加
[写真]
ボランティア滞在用のユニットハウスを寄贈

ボルネオ島の熱帯林再生及び生態系保全活動

ボルネオ島はマレーシア、インドネシア、ブルネイの三カ国にまたがる熱帯林地域で、面積は日本の約2倍、世界でも3番目に大きな島です。生物多様性の宝庫といわれるボルネオ島も開発が進み、自然再生力だけでは生態系保全ができない程、傷ついた熱帯林も出てきました。伊藤忠グループが2009年から支援を続けている森林再生地のボルネオ島北東部のマレーシア国サバ州北ウルセガマでは、世界的な自然保護団体であるWWFが現地サバ州森林局と連携し、約2,400ヘクタールの森林再生活動を行っています。伊藤忠グループはそのうちの967ヘクタールの再生を支援し、2014年に植林作業が完了し、維持・管理作業を含む全ての現地作業は2016年1月に完了しました。これは一般企業の植林活動支援としては最大規模の面積となります。当地は、絶滅危惧種であるオランウータンの生息地でもあり、森林再生はこのオランウータンを保護するのみならず、ここに生息する多くの生物を守ることにも繋がります。

ご参考:ボルネオ島での熱帯林再生及び生態系の保全プログラム

[写真]
ツアー参加者による植林
[写真]
絶滅危惧種のオランウータン

ハンティング・ワールドのボルネオ支援活動

[写真]
絶滅危惧種のボルネオ象を保護する様子
[写真]
ボルネオ エレファント サンクチュアリの施設

伊藤忠商事が展開するラグジュアリーブランド「ハンティング・ワールド」は、1965年のブランド創設以来、「牙のない仔象」をモチーフとしたロゴマークを使用しています。これは自由と蘇生のシンボルであると同時に、絶滅危惧種の保護という未来を見据えた課題をも意味しており、創設者の自然への愛と敬意が込められています。そして、創設者が掲げた「自然との共生」実現のために、2008年よりNPO法人「ボルネオ保全トラスト」(BCT)が進める生物多様性保全活動を支援しています。同社では、チャリティーグッズを企画・販売し、その売上の1%をBCTに提供することで、「緑の回廊プロジェクト」※1のための土地購入資金やプランテーションに迷い込んだボルネオ象の保護のための費用に役立てています。2011年秋には、支援金によって「緑の回廊プロジェクト」区域内に土地を単独で取得し、「ハンティング・ワールド共生の森1号地」が誕生。さらに支援活動を継続し、現在では「ハンティング・ワールド共生の森 4号地」まで取得しました。2019年からはBCTをサポートしているBCTジャパンが推進する「恩返しプロジェクト」※2のサポートをスタート。怪我等をしたボルネオ象を保護・一時飼育するための施設「ボルネオ エレファント サンクチュアリ」の設立や、保護されたボルネオ象の命をつなぐための食糧費等にも役立てられています。

  1. 緑の回廊プロジェクト:森林保護区や保護林の間の土地を買い戻す等して、分断された森林をつなぎ、野生動物の移動経路を作ることで、生物多様性を保全する活動
  2. 恩返しプロジェクト:生きる場所を失ったボルネオ象を保護・一時飼育する活動

外部との協働

イニシアティブへの参画(財界・業界団体を通じた活動)

当社は、一般社団法人 日本経済団体連合会に参加しており、ブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開催された1992年設立の経団連自然保護協議会を通じて、アジア太平洋地域を主とする開発途上地域や国内の自然保護プロジェクトを支援すると共に、NGO等との交流、セミナーやシンポジウムの開催、「経団連自然保護宣言」や「経団連生物多様性宣言」とその行動指針の公表(2018年10月改定)等、経済界が自然保護に取組む環境づくりに努めています。また、2020年6月11日に発表された「経団連生物多様性イニシアチブ」にも賛同を表明しています。

持続可能なパーム油に向けて外部機関との協働

伊藤忠商事は、2006年に持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)に参加し、2030年までにRSPO認証ないしはそれに準ずるパーム油100%取扱いを目標に掲げ、他メンバー企業との連携・協業等を通じて、持続可能なパーム油の調達・供給に取組んでいます。
また、Zoological Society of London(ZSL)によるプロジェクトで、大手パーム油関連企業について50以上の指標を公開データに基づき評価を行っているSPOTT(Sustainable Palm Oil Transparency Toolkit,「持続可能なパーム油の透明性ツールキット」)にも参加し、双方向のコミュニケーションを通じてパーム油産業に関連するステークホルダーに情報開示を行っています。

ご参考:森林資源の持続的利用 – パーム油

パフォーマンスデータ

事業活動におけるパフォーマンスデータ

事業関連地域におけるパフォーマンスデータ

絶滅危惧種アユモドキ・ゼニタナゴ保全プロジェクト(希少淡水魚の飼育技術確立に関する研究)

琵琶湖博物館でのアユモドキ・ゼニタナゴの人工授精による繁殖を行うための調査のデータ
対象 活動内容 指標単位 2022年 2023年 5年後の目標
アユモドキ 個体の成熟に向けた飼育 全長(mm)(平均) 目標値 80 80 2024年度までの目標:繁殖可能な成熟個体の出現(10個体)と成熟にむけた飼育手法の確立※4
実績 - 89
肥満度※1(平均) 目標値 - 1.8
実績 1.83 1.79
成熟個体数 目標値 - 10
実績 0 58
人工授精による繁殖 累積繁殖稚魚数 目標値 100 200 累積繁殖稚魚数500個体
実績 0 0
6か月後の平均体長(mm) 目標値 30 30
実績 0 0
ゼニタナゴ 人工授精による繁殖 親魚数 目標値 50 100 人工授精技術の確立(孵化率、浮上率約80%)
実績 62 調査中
孵化率※2 目標値 50 50
実績 27.5 調査中
浮上率※3 目標値 50 50
実績 - 3.8
  1. 体重を体長の3乗で割って100をかけた値。成熟度の指標。
  2. 孵化した卵から人工授精させた卵を割った値(人工授精させた卵のうち、正常に孵化した個体の割合)。
  3. 春に浮上(遊泳)した仔魚から孵化した仔魚を割った値(一冬を越してどれだけの仔魚が泳げるようになったかを示す値)。
  4. 当面は、繁殖可能な成熟個体の出現(10個体)と成熟にむけた飼育手法の確立を目標とし、それが達成できた時点で目標の再検討を行う。

絶滅危惧種アオウミガメ保全プロジェクト

小笠原諸島でのアオウミガメの産卵モニタリング調査及びふ化後調査のデータ
単位 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2022年
前年度比
2022年
2000年比
考察
調査規模 調査海岸数 海岸 父島列島 30 30 30 30 30 -
母島列島 10 10 10 10 10 -
聟島列島 10 10 10 10 - -
延べ調査回数 280 168 172 202 182 90%
延べ調査人員 1,078 732 692 934 957 102%
調査結果 アオウミガメ産卵巣数 父島列島 1,800 1,500 1,700 1,200 1,700 142% 378% 昨年よりは大きく増加したが、長期的な経年変化で見ると2008~2016年頃の2,000巣近い産卵は近年見られていない。
母島列島 500 600 400 330 300 91%
聟島列島 30 40 28 33 - -
ふ化後調査巣数
(父島のみで実施)
1,200 1,000 1,200 930 1,120 120%
海に帰った子ガメ(推測) 55,000 43,700 55,000 44,000 56,000 127%
脱出率(脱出子ガメ数/卵数) % 25 32 36 29 34 117%
レビュー 小笠原のアオウミガメの増減数(推測) - 増減を繰り返しながらではあるが増加傾向。
脱出率の傾向 - 増減を繰り返しながらではあるが良好。

アマゾンの生物多様性保全プログラム支援

アマゾンマナティー野生復帰事業 成果指標
テーマ 活動内容 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
半野生復帰 マナティーを半野生環境の湖(マナカプル)や川に設置した生簀(クイエラス)に放流。
  • マナカプルに湖を設置する打ち合わせを開始。
  • 12頭のマナティーの健康診断を実施。
  • 9頭のマナティーを半野生湖へ放流。
  • 24頭のマナティーの健康診断を実施。
  • 12頭のマナティーを半野生湖へ放流。
  • 14頭のマナティーを半野生湖へ放流。
実績なし 実績なし 実績なし
野生復帰 マナティーをアマゾン川に放流。
  • アマゾン川へ放流後再捕獲されたマナティー1頭の健康診断を実施した結果、体長、体重共に増加しており、川へ放流した後も順調に自然環境に適応していることを確認。
  • 5頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • 10頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • アマゾン川へ放流したマナティー1頭を再捕獲し健康診断を実施した結果、体長、体重共に増加しており、川へ放流した後も順調に自然環境に適応していることを確認。
  • 12頭のマナティーをアマゾン川へ放流。
  • 18頭のマナティーをアマゾン川へ放流、VHF 発信機を装着し、⾏動モニタリングを⾏ない、全追跡固体が順調に野⽣適応していることを確認。また再捕獲個体の体重・体長増加も確認。
  • 新型コロナウィルスの影響により新たな放流は行えず、既に放流されていたマナティーのモニタリングも何ヶ月もの間中断を余儀なくされた。
  • 13頭のマナティーをアマゾン川へ放流、その内5等にVHF 発信機を装着し、⾏動モニタリングを⾏ない、放流個体と野生個体の交流や、16年間飼育されていた放流個体の妊娠を確認。野生適応の成功を示した。
地域住民への環境教育・啓発活動の実施 マナティー野生復帰事業を通じ、地域住民への生物多様性保全について啓発活動を行う。
  • マナティー放流時に、地域の住民200名以上に参加してもらい、マナティー保護を通じ、生物多様性保全の重要さの啓発を行った。
  • 地元の漁師にマナティー保全の重要性を理解してもらい、漁師2名が本事業へ参画した。
  • 環境教育には301名、マナティー放流時のお披露目会には370名の地域住民が参加し、マナティー保護を通じ、生物多様性保全の重要さの啓発を行った。
  • 昨年に引続き地元の漁師2名が本事業へ参画した。
  • 環境教育には350名、マナティー放流時には500名の地域住民が参加。マナティー保護を通じ、生物多様性保全の重要さの啓発を行った。
  • 昨年に引続き地元の漁師2名が本事業へ参画した。
  • マナティーの野生復帰事業の重要性を地域の人々へ伝える移動展用の展示物を作成。
  • 元マナティーの密猟者であった猟師の雇⽤促進。
  • 元マナティーの密猟者であった猟師の雇⽤促進。
  • 地域住民への生物多様性保全についての啓発活動を実施。
  • 万全の感染対策にて、地域住民に対する環境教育事業を実施。伊藤忠商事ロゴ入りTシャツ500枚を活動協力者・参加者に配布。