ITを用いた予防医療への取組

地域社会への貢献に関するHighlight
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1.超高齢社会における日本の健康課題

日本は、生活水準の向上や医療の発展を通じて世界トップクラスの長寿国となると同時に少子化も相まって世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。
超高齢社会により、労働人口の減少、社会の活力低下、ひいては所得水準の低下の懸念が取りざたされており、さらには総額40兆円/年を超え国家財政の大きな負担となっている医療費や年金といった社会保障の負担が、特に現役世代を中心に重くなるといった懸念もあります。

日本の人口ピラミッドの変化

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出所:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10年1日現在人口)

  • 団塊の世代が全て75歳となる2025年には、75歳以上が全人口の18%となる。
  • 2060年には、人口は8,674万人にまで減少するが、一方で、65歳以上は全人口の約40%となる。

社会保障給付費の推移

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資料:国立社会保障・人口問題研究所「平成26年度社会保障費用統計」、2015年度、2016年度(予算ベース)は厚生労働省推計、2016年度の国民所得額は「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(平成28年1月22日閣議決定)」

  • 図中の数値は、1950,1960,1970,1980,1990,2000及び2010並びに2016年度(予算ベース)の会社保障給付費(兆円)である。

総務省「国勢調査」によれば、65歳以上の高齢者率は年々上がっていくと予想されており、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には、労働人口の1.8人で高齢者1人を支える必要があり、医療・介護の効率化はまさに待ったなしの状況です。

急速に超高齢社会が進む日本において、活力ある社会を実現する為には、多くの高齢者が長い間、健康に暮らし、年齢を問わず、その知恵や経験を活かして積極的に社会に関わることが必要不可欠ですが、そのためには高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防が重要な課題となります。

生活習慣病の予防には個人の健康管理が重要ですが、毎日継続して同じデータを蓄積することを、自らの意思のみで行うのは非常に難しく、自動的にデータが蓄積されていくなど、ITを利活用し、より手軽に健康管理ができる仕組み作りが必要です。
個人が手軽に生活習慣病予防に取り組める仕組みができることで、社会で暮らす一人ひとりがより豊かに暮らせるだけでなく、社会保障額及び現役世代への介護負担等の軽減にも寄与します。

また、企業経営の観点からも2015年の「データヘルス計画」の開始(厚生労働省)や「健康経営銘柄」の選定(経済産業省、東京証券取引所)がきっかけとなり「健康経営」が新しい潮流となっています。

労働人口の減少と医療費の増加が同時に起きている日本では、企業及び一人当たりの健康保険負担額が年々増加傾向にあり、企業自らがその課題の解決に取り組まなければ、不健康によるコストの拡大は避けられません。企業が負担する不健康によるコストには、医療費・欠勤など数値として見えるコストの他、何らかの疾病や症状を抱えながらも出勤することによる生産性の低下などがあります。この数値化が難しい「生産性の低下」が実は一番大きなコストとも言われています。企業が従業員に毎日の健康づくりを促すことで、従業員の健康のみならず、労働生産性も向上し、企業の競争力を強化させることから、「健康」と「生産性」を同時にマネージする「健康経営」を投資価値判断における一つの経営指標とみなす動きが強まっています。

  • 「健康経営®」とは、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

2.伊藤忠グループの予防医療×IT事業

伊藤忠商事は、2006年7月より、子会社であるウェルネス・コミュニケーションズ株式会社(以下、WCC)を通じて、疾病予防と健康増進領域におけるヘルスケア関連事業を展開してきましたが、近年は今までのノウハウを活かし「健康経営」に取り組む企業を全面的に支援するサービスを行っています。

「健康経営®」支援サービス

~企業の健康管理業務のお手伝い~ 【ヘルスサポートシステム】

人事部や総務部の仕事は、採用、研修、異動、査定、給与計算、年末調整、労使交渉 など、多岐に渡っています。 さらに、現状求められている健康管理業務は、従業員一人ひとりのデータを抱えなければならず、また適切な時期且つ個々人に合わせた健康診断或いは人間ドックの手配等、細かい作業が必要であり、かなりの負担となっています。
そこで、WCCでは、長年培ったノウハウを基に、企業向けクラウド型健康管理ソリューション「ヘルスサポートシステム(HSS)」を提供しています。
従来の紙でのデータ管理からデジタルでのデータ管理にすることで、従業員の健康状況の分析が容易に可能となります。また、再検査が必要な従業員のみならず、その予備軍も抽出できることから、疾病予防の為のツールとしても利用することができます。勤務体系の違いや年齢層、業界法等により、各企業で抱えている健康に関する課題は様々です。伊藤忠グループでは、各企業の課題に合わせ、健康経営に関する方針策定のコンサルティングや働き方の変革のためのシステム提供を合わせたトータルソリューションを提供することにより、企業の健康経営力強化に貢献します。

~従業員の健康意識を高め、健康な職場づくりを目指すために~ 【Re:Body】

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モバイルアプリ「Re:Body」の画面

伊藤忠商事はNTTドコモ、WCCと共同で、企業向け健康管理・増進支援モバイルアプリ「Re:Body」を用いた、健康な職場づくりを目指す法人向けサービスを提供しています。
「Re:Body」は、従業員自身が身体・健康に関するデータの確認・管理を行い、健康的な生活習慣を実践する「健康意識向上」を図るためのシステムです。
従来、健康診断や人間ドックで、数値に異常があった場合は、要治療として医療サポートなどが行われるようになっていますが、生活習慣病予備軍としてフィードバックをうけるだけで個人向けの疾病予防対策は行われておらず、あくまで個人が自発的に行うか否かにかかっているのが現状です。
個人が疾病予防に取り組むには、「やり始めること」「毎日続けること」「データに応じて行動すること」の3点を受動的にできる仕組み作りが必要です。
健康診断等の個人の健康データを管理している企業を通して、そのもう一歩先の従業員の健康生活力のアップを目指して開発されたものが「Re:Body」です。
「Re:Body」は毎年受診する健康診断の結果を閲覧し経年比較できる機能に加え、ウェアラブル端末や体重体組成計等と連動させることによって歩数・体重・体脂肪率・摂取カロリーなどの健康管理に必要な主要数値の閲覧、一元管理できるアプリです。更に管理栄養士などの専門家とのコミュニケーション機能を追加することで、健康に関連するデータ管理・閲覧のみならず、健康増進に対するアドバイスを行う機能を持たせることも可能です。
2017年度からの全国での提供を前に、まず伊藤忠商事で、2017年1月より一定のBMI数値を超えた若手社員約100名を対象に2か月間、Re:Bodyアプリと専門家とのマンツーマンでの健康指導サービスを提供する「スタイルアッププログラム」を行いました。

スタイルアッププログラム結果と参加者の声

健康への意識が変わった

[図表]

スタイルアップに効果があった要素

[図表]

ウォーキングイベント

[図表]

今後、自分でスタイルアップできそう

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  平均値Before 平均値After 平均減少率 最大減少率
体重

82.6kg

79.8kg

3.3%

12.7%

体脂肪率

24.7%

23.7%

4.0%

17.0%

腹囲

94.1cm

89.7cm

4.7%

19.6%

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スタイルアッププログラム参加者のコメント

  • 自分の体重等のデータを目視で確認できたのが良かった。仲間と一緒にダイエットしたことによって進捗状況を確認しあいながらできたのはモチベーションの継続に繋がった。
  • 見える化がしっかり出来るのでモチベーションがキープしやすい。
  • 食事改善・運動の意識含め、ある程度長期的に時間をかけて健康的な体作りをするという点でとても良いプログラムであると感じました。実際に今までより生活リズムが良くなっている実感があります。
  • あまり時間を取られずに取り組めるので仕事との両立はしやすく、無理なく行えた。

IT+ヘルスケアの目指す姿

伊藤忠商事は業界向けに提供してきたIT技術をヘルスケア分野にも積極的に活用することで、日本の高いサービス品質を維持しながら、医療費の増大を抑制すべく貢献していきたいと考えています。

例えば、ITの活用により、人々の健康状態や活動記録をデータ化し、より科学的に分析することが可能となり、過去の症例データと比較分析することで、将来の疾病予防やエビデンスに基づく診断・治療に繋がります。

「IT+ヘルスケア」はこの10年で環境も技術も劇的に変化してきました。インターネット及びワイヤレスの普及によるインフラ整備、半導体技術の発達による高機能ウェアラブル機器の開発、AIを活用した高度なビッグデータ分析技術、日本が得意とするロボット技術など、数々の新技術が生まれています。国による遠隔医療の普及促進施策も後押しし、これらの技術がより一層活用され、新たなビジネスチャンスが生まれると考えています。

伊藤忠商事のIT+ヘルスケアビジネスを世界に浸透させていく

当社が国内で培った健康・医療分野のサービスインフラと運営ノウハウを、CITICとの協業を通じ、アジアを中心とした海外にも広めてまいります。アジア各国においても高齢化、生活習慣病患者の増加が深刻な問題になっており、医療費の高騰・国の財政ひっ迫が大きな課題となっています。当社の「IT+ヘルスケア」サービスを、アジア市場でも積極的に展開し、世界に向けて発信していきます。

人々の健康をサポートしていくことは伊藤忠商事の大事な「使命」だと考えています。「健康で豊かな人生を全うしたい」という誰しもが持つねがいに応えるためにも、当社の複合的なサービスインフラとヘルスケアITノウハウを提供し、日本のみならず世界の医療の発展・健康増進に貢献していく所存です。

健康経営を実現するヘルスケアサービスの提供に向けて

松田 泰秀
ウェルネス・コミュニケーションズ 代表取締役社長

創業以来、「コミュニケーションを通じて毎日の元気を」を経営理念に掲げ、健康データを扱うプロフェッショナルであることを追求し、性別や世代、地域特性等に合わせた、便利でユニークで、継続してもらえるヘルスケアサービスを創出することを目指しています。
高齢化が進み、医療費の増加が国の財政に大きな負担となっている今、企業や生活者個人に求められているのは病気や介護を「未然に」防ぐ商品やサービスだと思います。しかしながら健康づくりには始めるにも、続けるにも見えないハードルがあります。このハードルを下げるような、そして5年後、10年後の企業のあり方や人々のライフスタイルに応えられるようなサービスを提供する為、弊社の基幹事業の刷新と、盤石な組織作りの推進に取り組み、私たちの手で発展途上のこのマーケットを育てていきたいと考えています。

「Re:Body」アプリサービス開発者の声

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松下 祐生
情報産業ビジネス部 主任

ヘルスケアITで、社員一人ひとりの健康意識改革を実現させたいという思いから、このサービスを自身の生活習慣を見つめ直すきっかけをつくり、健康への意識を高めてもらうツールとなるよう開発しました。また継続的な健康意識を醸成するために、毎日の体重、運動、食事の記録をお願いし、ヘルスコーチより個々人に寄り添ったメッセージを送ることで、“他人事”ではなく“自分事”として意識してもらうことにも気をつけ、各自がモチベーションを維持できるよう心がけました。私自身も実際に本サービスを使用し、改めて日々の運動・食事管理の重要性を実感しました。このようなITサービスを駆使し健康ソリューションを提供することで、人々の健康増進をサポートしていきたいです。