水・環境に関する公共インフラ事業

気候変動に関するHighlight
持続可能な資源の利用に関するHighlight

持続可能な資源利用への継続的な取り組み

現在、世界全体の人口増加や新興国の発展に呼応する形で、水の需要はますます増加しています。一方で、地球上の水資源のうち、人類が利用できる淡水資源は全水資源の0.01%程度と限られています。伊藤忠商事は、CSR上の重要課題と定めた持続可能な資源の利用の為、顧客(国/自治体/企業)の良きパートナーとして、公共インフラの開発・建設から、資産・運営を長期にわたって行っています。今回は当社が重点的に取り組む、水・環境に関する事業をご紹介します。

水事業におけるリスクと機会

世界の急速な人口増加、新興国を中心とした経済発展や工業化の進展、温暖化等を背景に、水需要は急激に増加しており、国連開発計画(UNDP)によれば2050年には水不足に直面する人口が10億人に達すると予想されています。世界の水ビジネスの市場規模は2005年では約60兆円でしたが、これらの需要の増加を加味し2025年には約111兆円にまで達すると見込まれています。伊藤忠商事では、世界的な水不足の状況を勘案し、かつ、水関連事業を有望なビジネス市場として捉え、現在、上下水道コンセッション事業、海水淡水化事業、EPC及び海水淡水化用逆浸透膜エレメント(RO膜)の製造・販売の3つの分野を中心に以下の通り取り組んでいます。

  • EPC: 設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)

世界の人口と世界の取水量の推移

[図表]
出典:経済産業省「水ビジネス国際展開研究会」(2010年)

上下水道コンセッション事業

伊藤忠商事は2012年、英国南西部のブリストル市とその周辺地域へ、上水サービスを提供する160年以上の伝統を有するBristol Water Groupの株式20%相当をカナダのインフラ投資会社であるCapstone Infrastructure Corporationより取得しました。Bristol Waterの30%の株主であるSUEZ environnement社は150年以上の歴史を持ち、フランスを拠点として70か国に事業を展開する水メジャーであり、世界中で約9,200万人に対して給水事業を行っています。

英国の水道事業は1989年の民営化以降サービス水準が著しく向上し、民営化の世界的な成功モデルといわれています。本件は日本企業として初の英国水道事業への参入となり、水源管理から浄水処理、給配水、料金徴収までを包括したフルサービス上水事業を約120万人に提供しています。

また、英国に次ぐ第2の水道事業として、スペインカナリア諸島にて上下水道サービスを提供するCanaragua Concesionesの株式33.4%をSUEZ environnement社の子会社CANARAGUA S.A.から取得しました。Canaragua Concesionesは、カナリア諸島の民営化された上下水道市場においてトップシェアを有し、自治体とのコンセッション契約に基づき、延べ130万人に対し上下水道サービスを提供する水道会社です。

両案件を通じ、伊藤忠商事は、これらの先進的な水道事業のノウハウを取得・蓄積し、今後の持続可能な水関連ビジネスの展開に活かしていく方針です。

プラント・
プロジェクト部
水・環境プロジェクト
第二課
田中 雄

Bristol Water 駐在者コメント

2013年1月から2015年1月までの2年間、イギリス・ブリストルに駐在しブリストル・ウォーターの一員として水道事業に取り組みました。駐在期間中は、設備投資計画の策定を中心に、経理・財務から浄水設備や配水管ネットワークの運転・維持管理などの現場に近い部分まで様々な業務に関わりました。現地での経験の中で最も印象に残っている点は、部署の如何を問わず会社の中に共通している意識、「水供給を通じて地域に貢献する」という強い責任感です。何らかの理由で断水等サービスに支障が出てしまった時だけでなく、日々のひとつひとつの業務においても、常に地域の人々の生活・健康を考えながら、全社一体となって問題解決に取り組んでいます。駐在中には、彼らの水道事業者としてのプライドを感じる機会が幾度となくありました。
帰国して東京から水・環境事業に取り組む立場となりましたが、今後は、ブリストルで得た経験・知識と、伊藤忠商事の事業経営力、信用力、機器・技術調達能力等の機能を組み合わせ、水・環境分野における取り組みを更に進めていきたいと考えております。

海水淡水化事業

メルボルンの案件写真

伊藤忠商事は、2009年にSUEZ environnement、豪最大手ゼネコンであるThiess Pty Ltd、豪最大手投資銀行のMacquarie Bankと共に、豪州ヴィクトリア州政府が進める大規模なRO膜方式海水淡水化事業へ参画しました(契約期間30年、日量約40万トン)。この事業は、海水淡水化設備、取水設備、送水パイプライン、送電線の建設を含み、2012年に完工しており、同州の水の安定供給を次世代に亘ってサポートしていくものです。
オーストラリアでは過去に深刻な水不足が発生しており、水不足への対応が国家問題として捉えられていますが、本設備により人口約440万人のヴィクトリア州メルボルン市の水需要の約30%を満たすことが可能であり、雨量に頼らない水の供給源として同市及び周辺地域への水の安定供給を支える事業となっています。
世界的な水需要の増加により、海水淡水化の分野は、2025年には2007年の約3倍の市場になると予想されている中、伊藤忠商事は、今後も水不足が深刻となりつつある地域を対象に、海水淡水化等の水関連事業への進出を推進していきます。

海水淡水化プラントのリハビリ・増設及びRO膜の製造・販売

サウジアラビアでは、生活用水の大部分を海水淡水化プラントに依存しており、同国の海水淡水化能力は世界最大である一方で、老朽化した装置も多数存在し、リハビリ工事が急務となっている状況です。伊藤忠商事はサウジアラビアにて1970年代より多数の海水淡水化プラントの納入を行ない、2003年には海水淡水化プラントで独自の技術を持つササクラと共にサウジアラビアにおける現地資本との合弁会社アクアパワー・ササクラ社(以下APS)を設立しました。それ以降、APSはササクラの機器・技術をベースとした海水淡水化プラントの建設を行うと共に、既存プラントのリハビリや保守部品の供給を含むメンテナンス等、海水淡水化プラントに関するトータルソリューションプロバイダーとして多様なサービスを提供しています。近年では2014年9月に、サウジアラビア海水淡水化公団(SWCC)より、アルジュベールフェーズ2C4 MSF海水淡水化プラントのリハビリ工事、続いて2015年1月にシュアイバフェーズ2の既設海水淡水化装置の増設工事を受注しました。今後も、同国内で急務となっている老朽化の設備のリハビリ及び地方都市の中小規模の新設案件の受注を目指していきます。

また、海水淡水化用RO膜の製造・販売事業は、現地資本、東洋紡と2010年3月に共同で設立したArabian Japanese Membrane Company(以下AJMC)を通じて推進しています。AJMCは今後、急速な経済発展や人口増加により、水需要が増加している中東湾岸諸国において、需要の拡大が見込まれるRO膜を製造することで、更なる拡販を目指していきます。

環境事業におけるリスクと機会

世界の温室効果ガス(GHG)排出量は、『OECD環境アウトルック2050』によると、2010年から2050年にかけて約50%増加し、より破壊的な気候変動を起こす可能性を指摘されています。当社では、気候変動の緩和とCO2削減に寄与するビジネスとして、様々な再生可能エネルギー事業等を手掛けておりますが、今回は、当社が2011年から展開する廃棄物処理・発電事業をご紹介します。

廃棄物処理・発電事業

伊藤忠商事は2011年よりSUEZ environnementグループと共に英国にて4件の廃棄物処理・発電PFI契約に調印し、建設を実施しています。
本事業では、従来直接埋立処分をしていた廃棄物を焼却処理することにより、4件合計で埋立廃棄物量を131万トン/年、温室効果ガスを33.5万トン/年削減するだけでなく、その余熱で165,000軒の家庭の消費電力に相当する発電を行うことになります。この化石燃料を使用しないクリーン発電の取り組みは、温暖化効果の大きいメタンガス発生を抑制し、温暖化効果ガスを削減することができる環境にやさしい事業です。

伊藤忠商事では1970年代に海水淡水化プラントの建設に関与して以来世界各地の課題や特性を勘案し、水・環境事業に取り組んできました。これらのノウハウや、国際的な資金調達、提携可能な多くの企業とのコネクション等を活かし、世界の水・環境問題の解決に寄与するため、今後も重点的に取り組んでいきます。

水事業及び廃棄物処理・発電事業のグローバルマップ

Bruno HERVET
SUEZ environnement
Executive Vice President Smart &
Sustainable Cities

ビジネスパートナーからのコメント

私たちは今、資源有効活用への挑戦を求められています。世界は急速な人口増加、都市への人口集中、天然資源の枯渇に直面しており、資源の確保・有効利用・再生が不可欠です。
当社は80,990人の従業員を擁し、全世界で92百万人に上水サービスを、65百万人に下水処理サービスを提供しています。さらに、50百万人近くが排出する廃棄物を収集し、年間14百万トンの廃棄物を処理、5,138GWhの再生可能エネルギーを回収することで、世界の全五大陸にて循環型社会及び持続可能な資源利用における重要な役割を担い、2014年度には143億ユーロの売上を達成しています。
また、顧客(地方自治体、企業・消費者)への革新的な解決策提供の為、従業員一丸となり資源有効活用への取組を進めるとともに、伊藤忠商事をはじめとするパートナー企業との共同取組を行っています。
伊藤忠商事とは近年、英国のBristol Water、スペインのCanaragua Concesiones、豪州のVictoria海水淡水化事業等の水ビジネスや、英国における廃棄物処理事業の共同経営を行っています。これらの共同事業において、伊藤忠商事のファイナンス組成能力、業界知見、世界的なネットワークを活用し、顧客が抱える課題に適した先進的技術・サービスを共同で提供しています。
伊藤忠商事の企業理念である「豊かさを担う責任」は、3Cs(“Circular”, “Concrete”, “Collaborative”)に基づき当社が掲げる長期持続可能な社会の創出に向けた取組と一致しており、今後も世界的な水・環境事業拡大を通し、当社と伊藤忠商事が世界の環境問題解決の一助となると確信しています。

  • SUEZ environnement “Sustainable Development”