第1期の活動とその成果

第1期:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを通じた取組(2013年11月—2016年3月)

第1期では、柱となる4つの活動:1.移動図書館(MLC)を通じた教育の機会の提供、2.児童労働撲滅へ向けた意識向上のための活動、3.児童労働からの解放と正規の学校への入学、4.行政に対する政策提言につき、プロジェクトが終了した際に目標とする結果を得るために、それぞれ細かい活動内容と成果指標を定め、活動を実施しました。

第1期プロジェクト期間の2年の間に、年間600人、合計1,200人の子どもたちがMLCを通じて教育機会を得るという目標に対し、実際は1,955人の子どもたちに教育を届けることができました。また、正規の学校への入学の支援については、300人の目標のところ、行政や学校と連携し入学手続きのサポートをした結果、382人の子どもたちが正規の教育機関に入学を果たすという成果を上げることができました。

活動1:移動図書館を通じた教育の機会の提供

目標とする結果

年間600人(合計1,200人)の子どもたちが移動図書館を通じて教育機会を得る

アウトカム

1,995人の子どもたちが移動図書館を通じて教育の機会を得た

活動内容 第1期の目標
成果指標
第1期の成果

1-1. 事業対象地の駅、バス停、市場を対象に子どもたちの置かれる状況を把握するためにベースライン調査を実施

ベースライン調査を実施
対象地の状況を把握した

1-2. 大学などの高等教育機関から100人の学生ボランティアを選定

  • 100人の学生が能力強化研修を受ける(年間50人)

学生109人(109%)に研修を実施

1-3. 学生ボランティアへのオリエンテーションと能力強化研修の実施

1-4. バスの購入及び移動図書館としての整備

  • 移動図書館が運営される

移動図書館が運営されている

1-5. 移動図書館にて子どもたちへ読み書きの機会を提供

  • 1200人の子どもたちが移動図書館の活動に参加する(年間600人)

1,995人(163%)の子どもたちが参加

  • ( )内の%は目標値に対する達成率

バスの購入及び移動図書館(MLC)としての整備

他州にある既存のMLCを参考にしながら、現地の条件に適したデザインを設計し、本やマルチ・メディアの配置を行いました。スタッフの定期的なモニタリングの下、2014年3月末には外装・内装ともに完成しました。伊藤忠のコーポレートカラーである青のラッピングを施し、椅子、黒板、そして本棚を設置、子どもたちの興味をひくように学校に近い学習環境の内装にしています。

バス右側には「Ride to School」のスローガンに加え伊藤忠商事のロゴを記載、セーブ・ザ・チルドレンのロゴの横には「すべての子どもたちは教育を受ける権利を持っており、教育は子どもたちに夢と希望を与えます」とヒンディ語で記載しています。

[写真]
バス外観
[写真]
カラフルなバス内装

開所式の開催

2014年6月12日児童労働反対デーの日に、在ムンバイ日本領事館を来賓に迎え、伊藤忠インド会社からの出席者と子どもたちで開所式を行いました。

[写真]
開所式の様子
[写真]
開所式には多くの地元の方々が集まりました
[写真]
MLCに乗って喜ぶ子どもたち

移動図書館にて子どもたちへ読み書きの機会を提供

  • MLCの完成前には、セーブ・ザ・チルドレン・インドの事務所に仮設教室を設置して、子どもたちに対する授業を開始しました。
  • MLCが完成した後は、早速MLCでの授業が始まり、1年間で686人の子どもたちがMLCに登録しました。また、2年次は、1,269人の子どもたちがMLCの活動に参加しました。
  • 3歳から14歳までの子どもたちが通っているため、授業を進めるのに難しい点もありますが、少しでも知識と技術を身につけ、正規の教育機関に入学(復学)できるよう支援しました。
  • 国語、科学、算数、美術・工作の科目について計画を立て授業を実施、また、それぞれの年齢に合わせた本や授業に必要な文具なども提供しました。
  • 「子どもにやさしい環境さえあれば、子どもたちは創造的になり、勉強に興味を持つことができるようになる」とインストラクターが話しています。
[写真]
MLC完成前のセーブ・ザ・チルドレン・インド事務所での授業
[写真]
MLCでの子どもたちによる読み聞かせのセッションの様子
[写真]
ウルドゥ語のレッスン
  • ムンバイ市内の大学などから学生ボランティアを募り、1年目40名、2年目69名、合計で109名の学生ボランティアを選定、彼らに、子どもを支援するスキルを身に着けてもらうべく、オリエンテーション及び能力強化の研修を実施しました。これらのボランティアが、MLCで授業を行ったり、対象地域の子どもの家庭訪問を通して、教育の重要性を保護者に対して働きかけを行う担い手となりました。
  • MLCでは、ボランティアとセーブ・ザ・チルドレンの事業スタッフが算数、理科、言語(マラティ語、ウルドゥ語、英語)の授業を行ったのに加えて、子どもの権利について説明したり、小さな子どもたちへの本の読み聞かせも積極的に実施しました。さらにアート・クラスと題して子どもたちがみんなで絵を描くなど、様々な活動を導入しました。
[写真]
ボランティアが子どもたちに算数を教えている様子
[写真]
子どもたちが数字の練習をしている様子
[写真]
子どもリーダーが演劇を取り入れながら子どもたちに教えている様子
移動式図書館(MLC)活動スケジュール:
曜日 活動地域
月曜日

Padma Nagar (e), Shanti Nagar (f), Kamla Raman Nagar (g), Umarkhadi round (h), Chikal Wadi (k)

火曜日

Baba Nagar (i)

水曜日

Adarsh Nagar (c), Bharat Nagar (d)

木曜日

Rafi Nagar (j)

金曜日

Sanjay Nagar Ⅱ (a), Nirankari Nagar (b), Shanti Nagar (f)

  • 表中の(a)~(k)は、扉ページのM-East区内のプロジェクト対象コミュニティに対応しています。

活動2:児童労働撲滅へ向けた意識向上のための活動

目標とする結果

スラム街に住む子どもたちやストリートチルドレンが児童労働として搾取されることを防ぐために、保護者、雇用人、行政やコミュニティの子どもの保護や教育に関する意識が向上する

アウトカム

延べ2,219人の保護者、雇用者、教育関係者が、子どもの保護や教育の重要性について学ぶ機会を得た

活動内容 第1期の目標
成果指標
第1期の成果

2-1. 子ども会の結成:移動図書館に通う子どもたちの中から5名~10名を選定し、子ども会を結成。ライフスキル研修を実施し、子ども会を中心に地域の子どもの問題に取り組む。

  • 100人の子どもが子ども会の活動に参加する(年間50人)

1,122人(1,122%)の子どもたちがライフスキル研修に参加

2-2. 就学前教育への入園斡旋:年間300人の幼児の保護者に対してカウンセリングを実施

  • 600人の保護者がカウンセリングを受ける(年間300人)

2,035人(339%)の保護者にカウンセリングを実施

2-3. 行政、保護者、雇用者を対象に児童労働の撲滅を訴える会合やキャンペーンを開催

  • 20回の行政、保護者、雇用者を対象に児童労働の撲滅を訴える会合やキャンペーンを開催される(年間10回)

44回(220%)の会合やキャンペーンを実施

2-4. 地域の高校と連携し、学生ボランティアを募る。学生ボランティアを通じて子ども同士の学習法を斡旋し、学生ボランティアがロールモデルとして子どもたちの学習習慣を定着させる

  • 20人の学生がボランティアとして参加する(年間10人)

学生がボランティア26人(130%)

2-5. 更に支援が必要な子どもたちや保護者を選定し、政府が提供する住居施設や相談センターなどとリンクさせる

  • 子どもたちと保護者が政府が提供する施設や相談センターなどを活用する(2年間で10件)

11件(110%)のケースを確認し、フォローアップ

2-6. リスクや危険度の高い児童労働の環境を改善するように雇用者へ働きかける

  • 100人の雇用者や保護者を対象に、児童労働の環境を改善するように雇用者へ働きかける会合が開催される

104人(104%)の雇用者が会合に参加

2-7. 就学前教育への支援を行い、年間300人の幼児をセンターに入園させる

  • 600人の子どもたちが就学前教育施設に入園する(年間300人)

1,302人(217%)の子どもたちが就学前教育施設に入学

2-8. 20の就学前教育に関わる職員に対して意識向上研修の実施

  • 20人の就学前教育の職員が意識向上研修を受ける(年間10人)

80人(400%)の職員が研修に参加

  • ( )内の%は目標値に対する達成率
  • MLCに通う子どもたちの中から5~10人を選定し、子ども会を結成し、彼らに対してライフスキル研修を実施、地域の子どもの問題に取り組む努力をしました。1年目は300人、2年目は822人の子どもたちがライフスキルを学ぶために子ども会活動に参加しました。
  • 1年目は600人、2年目は1,435人の幼児の保護者にカウンセリングを実施しました。
  • 1年目には15か所で子どもの権利や教育の権利に関する啓発活動を実施しました。2年目には児童労働の撲滅を訴えるキャンペーンを合計29回行いました。
  • 1年目770人、2年目532人の子どもたちが就学前の教育を行う公立の就学前教育施設に入学しました。
[写真]
事業スタッフと学生ボランティアよる家庭訪問とカウンセリングの様子
[写真]
カウンセラーが親たちを訪問
[写真]
ボランティアたちが家庭を訪問し、親たちへのカウンセリングを行っている様子
  • 子どもたちのロールモデルとして19人の地元の高校生に協力してもらい、学習習慣の定着を図りました。
  • 特に支援が必要な子どもたちや保護者を選定し、政府が提供する住居施設や相談センターなどにつなぎました。8件のケースを確認し、フォローアップを行いました。
  • リスクや危険度の高い児童労働の環境を改善するよう、雇用者への働きかけを行い104人の雇用者がこれらの会合に参加、参加者から「子どもが働くことで身体的・精神的な成長に多大な悪影響を与えるということが分った」等の感想がありました。
  • 就学前教育に関わる職員60人に対して意識向上研修を実施しました。
[写真]
より多くの子どもたちが学校に通うためにスタッフと子ども会の中心メンバーが話し合っている様子
[写真]
スタッフやボランティアによる家庭訪問。子どもたちの状況を確認し、必要に応じて親たちへのカウンセリングを行っている
[写真]
保護者と雇用者のミーティングの様子。コミュニティにおける児童労働の撤廃と働く子どもたちの教育について話し合う

活動3:児童労働からの解放と正規の学校への入学

目標とする結果

事業対象の子どもたちが危険な状況下で働く児童労働から解放され、うち25%(300人)が正規の学校に入学する

アウトカム

382人の子どもたちが正規の学校に入学を果たした

活動内容 第1期の目標
成果指標
第1期の成果

3-1. 年間10のスラム街やストリートチルドレンが居住する地域にて子どもの権利や教育の権利に関する人形劇を開催し、教育の大切さを働きかける

  • 20のスラム街やストリートチルドレンが居住する地域にて子どもの権利や教育の権利に関する人形劇を開催する(年間10回)

人形劇を44回(440%)開催

3-2. 子どもたちが絵を描くなどして参加できるような楽しいイベントを開催し、学ぶことの楽しさを実感できる機会を提供する

  • 100人の子どもたちがイベントに参加する(年間50人)

811人(811%)の子どもたちがイベントに参加

3-3. 子どもたちが正規の学校へ入学できるように、行政や学校と連携し、入学の手続きを行う

  • 300人の子どもたちが正規の教育機関に入学する(1年目100人、2年目200人)

382人(127%)の子どもたちが学校に入学

3-4. 300人の子どもたちを対象にライフスキル教育を提供する

  • 300人の子どもたちがライフスキル教育を受ける(1年目100人、2年目200人)

1,008人(336%)の子どもたちがライフスキル教育を受けた

  • ( )内の%は目標値に対する達成率
  • 絵を描くことを通して学ぶことの楽しさを実感できるイベントに1年目227人、2年目584人の子どもたちが参加しました。
  • 行政や学校と連携し、入学手続きのサポートした結果、1年目84人、2年目298人の子どもたちが地域の公立学校に入学しました。
  • 1年目:330人の子どもたちがライフスキル (コミュニケーション、リーダーシップ)を学びました。
    2年目:678人の子どもたちが、考えるスキル(創造的思考、批判的思考、意思決定、問題解決)やストレスと感情に向き合うためのライフスキルを学ぶイベントに参加しました。
[写真]
子どもたちがアートとお絵かきををしている様子
[写真]
お絵かきクラスの子どもたち
[写真]
地元の警察官による子どもの保護に関する授業の様子
  • 1年目:啓発を目的とした10か所で15の劇を実施しました。(テーマ:「教育の権利」、「学校に戻ろう(Back to School)」、「学校運営委員会やPTAの役割と責任」など)
    2年目:スタッフが主体となって、10のスラム街やストリートチルドレンが居住する地域で合計29回の路上劇を実施し、子どもの権利や教育の権利、教育の大切さについての啓発活動を行いました。
  • 路上劇を観たコミュニティの住人からは、「路上劇を通じた啓発は、文字が読めない保護者に正しい知識を伝えるためにとても大切だと思う。」「私の子どもを学校に通わせるためにどうすればいいかを知ることができました。」「路上劇によって子どもの教育の大切さを知ることができました。」「私はこの活動を支援します。周りの家族にも子どもたちを学校に通わせるよう説得したいと思います。」等の感想がありました。
[写真]
路上劇の様子
[写真]
自分たちで人形を作って、人形劇に参加した子どもたちの様子
[写真]

活動4:行政に対する政策提言

目標とする結果

スラム街に住む子どもたちやストリートチルドレンに対しても教育の機会が提供されるよう、行政の意識が向上される

アウトカム

本事業の成果と学びをローカルNGOと共有するとともに、地方政府への提言がなされた

活動内容 第1期の目標
成果指標
第1期の成果

4-1. 行政と教育機関関係者を招き、ストリートチルドレンやスラム街に住む子どもたちの状況について話し合う機会を設ける。また、コミュニティを中心に子どもの保護を訴えるキャンペーンを実施する

  • 2回子どもの保護ワークショップとキャンペーンが実施される(年間1回)

ワークショップを2回(100%)実施

4-2. 年に一度行政関係者、保護者などを招き、移動図書館の成果を共有し、子どもたちの保護される権利や教育の権利などを訴える機会を持つ

  • 2回子どもの保護や教育の権利を訴える会合が開催される(年間1回)

ワークショップを2回(100%)実施

4-3. 子ども(裨益者)の状況を確認できるトラッキングシステムを確立する

  • 子どもの状況トラッキングシステムが機能している

子どもの状況トラッキングシステムが機能している

4-4. 事業の学びや成果を文書化し、政府に対する啓発活動として活用する

  • 10の好事例、成果や学びを文書化される(2年目)
  • 政府に対して1回政策提言が行われる(2年目)
  • 14の好事例、事業成果と学びをまとめた文書を作成し、地方政府に提言
  • ローカルNGOや地方政府を巻き込んだ成果共有発表会を開催

4-5. 事業の成果、学び、ケーススタディー好事例を他の支援団体(UNICEF、ILO、UNIFEM や国際NGOとインドNGO)と共有し、共同で州政府に対して政策提言を行う

  • ( )内の%は目標値に対する達成率

マルチ・ステークホルダー会議の開催

  • M-East区の区長とセーブ・ザ・チルドレンの共催で2015年9月にマルチ・ステークホルダー会議を開催しました。教育行政関係者、校長、教員、保護者、子どもたち等、約70名が参加、児童労働や学校からのドロップアウトに関する現状を共有し、これらの課題を乗り越えるための方策を議論しました。
[写真]
M-East区長の講演
[写真]
マルチ・ステークホルダー会議

事業成果のブックレットを発行

  • 2015年10月にムンバイ・プレス・クラブにてプレス・カンファレンスを開き、メディア向けにMLCプロジェクトの事業成果をまとめたブックレット“Moving on with Education”を発表しました。現地および日系メディア関係者、伊藤在ムンバイ日本領事、教員、保護者、子どもたち等、約60人が参加しました。
[写真]
プレス・カンファレンスにてブックレットを持って
[写真]
子どもたちがMLCでの経験を共有
[写真]
子どもたちと伊藤忠インド会社のメンバーにて
[写真]

14の好事例を含む、事業の成果をまとめたブックレット“Moving on with Education”[PDF]

  • この冊子の中の成果指標の数値等は2015年8月時点のデータがもとになっています。
[写真]

ムンバイ市M-East区
キラン・ディガブル区長

行政からのコメント

M-East 区の子どもたちが将来、安定した収入を得るにはスキル向上につながる教育を受けることが不可欠。教育を届けるインフラ環境が未整備な中、移動図書館というイノベーティブな取り組みをきっかけに学校に通う子どもが増えたのは極めて大きな成果です。

ムンバイ支店から参加した社員ボランティアの声

[写真]
伊藤忠インド会社のボランティア一同
[写真]
子どもたちとMLCの中で

11月14日はインドの初代首相ジャワハルラル・ネルーの誕生日で、インドではこの日を「子どもの日」としてお祝いしており、学校や多くの教育関連NGOがさまざまな子ども向けイベントを年齢ごとに実施します。この一環として、当社の移動図書館プロジェクトのパートナーであるセーブ・ザ・チルドレンは、ムンバイ市M-East区でお絵かきイベントを実施しました。
ムンバイ支店からは、8名のスタッフが当日のお手伝いをしました。移動図書館に登録する子どもたちのうち約40人がお絵かきイベントに参加し、彼らが描いた作品は額装されました。子どもたちは「夢の学校」などといったテーマで絵を描き、伊藤忠のスタッフはセーブ・ザ・チルドレンのスタッフとともに、子どもたちのお絵かきをサポート・指導しました。

私たちは、夢中になって楽しんでいる活発な子どもたちとの交流を楽しみ、「子どもの日」にこのような機会を得たことを、何よりもうれしく思いました。教育は、誰の人生においても大切な役割を果たします。伊藤忠が会社ぐるみでこの子どもたちのために活動をしているというのは、素晴らしいことです。

  • 全ての写真はセーブ・ザ・チルドレンの提供によるものです。