2年次の活動とその成果

インド移動図書館プロジェクト2年次の活動の成果と進捗状況は以下の通りです。

活動1:移動図書館(MLC)を通じた教育の機会の提供

  • ムンバイ市内の大学などから学生ボランティアを募り、1年次の40名に加え、2年次には69名、合計で109名の学生ボランティアを選定、彼らに、子どもを支援するスキルを身に着けてもらうべく、オリエンテーション及び能力強化の研修を実施しました。これらのボランティアが、MLCで授業を行ったり、対象地域の子どもの家庭訪問を通して、教育の重要性を保護者に対して働きかけを行う担い手となりました。
  • MLCでは、ボランティアとセーブ・ザ・チルドレンの事業スタッフが算数、理科、言語(マラティ語、ウルドゥ語、英語)の授業を行ったのに加えて、子どもの権利について説明したり、小さな子どもたちへの本の読み聞かせも積極的に実施しました。さらにアート・クラスと題して子どもたちがみんなで絵を描くなど、様々な活動を導入しました。
  • 2年次は、1,269人の子どもたちがMLCの活動に参加しました。
移動式図書館(MLC)活動スケジュール:
曜日 活動地域
月曜日

Padma Nagar (e), Shanti Nagar (f), Kamla Raman Nagar (g), Umarkhadi round (h), Chikal Wadi (k)

火曜日

Baba Nagar (i)

水曜日

Adarsh Nagar (c), Bharat Nagar (d)

木曜日

Rafi Nagar (j)

金曜日

Sanjay Nagar Ⅱ (a), Nirankari Nagar (b), Shanti Nagar (f)

  • 表中の(a)~(k)は、扉ページのM-East区内のプロジェクト対象コミュニティに対応しています。
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ボランティアが子どもたちに算数を教えている様子
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子どもたちが数字の練習をしている様子
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子どもリーダーが演劇を取り入れながら子どもたちに教えている様子

活動2:児童労働撲滅へ向けた意識向上のための活動

  • MLCに通う子どもたちの中から5〜10人を選定し、子ども会を結成し、彼らに対してライフスキル研修を実施、地域の子どもの問題に取り組む努力をしました。2年次は822人の子どもたちがライフスキルを学ぶために子ども会活動に参加しました。幼児の保護者1,435人にカウンセリングを実施しました。
  • 子どもたちのロールモデルとして19人の地元の高校生に協力してもらい、学習習慣の定着を図りました。
  • 児童労働の撲滅を訴えるキャンペーンを合計29回行いました。
  • 特に支援が必要な子どもたちや保護者を選定し、政府が提供する住居施設や相談センターなどにつなぎました。8件のケースを確認し、フォローアップを行いました。
  • リスクや危険度の高い児童労働の環境を改善するよう、雇用者への働きかけを行い104人の雇用者がこれらの会合に参加、参加者から「子どもが働くことで身体的・精神的な成長に多大な悪影響を与えるということが分った」等の感想がありました。
  • 532人の子どもたちが就学前の教育を行う公立の就学前教育施設に入学しました。
  • 就学前教育に関わる職員60人に対して意識向上研修を実施しました。
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より多くの子どもたちが学校に通うためにスタッフと子ども会の中心メンバーが話し合っている様子
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スタッフやボランティアによる家庭訪問。子どもたちの状況を確認し、必要に応じて親たちへのカウンセリングを行っている
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保護者と雇用者のミーティングの様子。コミュニティにおける児童労働の撤廃と働く子どもたちの教育について話し合う

活動3:児童労働からの解放と正規の学校への入学

  • スタッフが主体となって、10のスラム街やストリートチルドレンが居住する地域で合計29回の路上劇を実施し、子どもの権利や教育の権利、教育の大切さについての啓発活動を行いました。
  • 路上劇を観たコミュニティの住人からは、「路上劇を通じた啓発は、文字が読めない保護者に正しい知識を伝えるためにとても大切だと思う。」「私の子どもを学校に通わせるためにどうすればいいかを知ることができました。」「路上劇によって子どもの教育の大切さを知ることができました。」「私はこの活動を支援します。周りの家族にも子どもたちを学校に通わせるよう説得したいと思います。」等の感想がありました。
  • 絵を描くことを通して学ぶことの楽しさを実感できるイベントに584人の子どもたちが参加しました。
  • 行政や学校と連携し、入学手続きのサポートした結果、298人の子どもたちが地域の公立学校に入学しました。
  • 678人の子どもたちが、考えるスキル(創造的思考、批判的思考、意思決定、問題解決)やストレスと感情に向き合うためのライフスキルを学ぶイベントに参加しました。
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路上劇の様子
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自分たちで人形を作って、人形劇に参加した子どもたちの様子
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活動4:行政に対する政策提言

  • M-East区の区長とセーブ・ザ・チルドレンの共催で2015年9月にマルチ・ステークホルダー会議を開催しました。教育行政関係者、校長、教員、保護者、子どもたち等、約70名が参加、児童労働や学校からのドロップアウトに関する現状を共有し、これらの課題を乗り越えるための方策を議論しました。
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M-East区長の講演
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マルチステークホルダー会議
  • 2015年10月にムンバイ・プレス・クラブにてプレス・カンファレンスを開き、メディア向けにMLCプロジェクトの事業成果をまとめたブックレット“Moving on with Education”を発表しました。現地および日系メディア関係者、伊藤在ムンバイ日本領事、教員、保護者、子どもたち等、約60人が参加しました。
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プレス・カンファレンスにてブックレットを持って
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子どもたちがMLCでの経験を共有
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子どもたちと伊藤忠インド会社のメンバーにて
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14の好事例を含む、事業の成果をまとめたブックレット“Moving on with Education”[別ウインドウで開きます]

  • この冊子の中の成果指標の数値等は2015年8月時点のデータがもとになっています。

ケースストーリー

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イシュティヤクさん

イシュティヤクさんのケース

イシュティヤクさん(14)は、10年前に母親と3人の兄弟と一緒に、ネパールとの国境に近いウッタル・プラデーシュ州からこのスラム街に移住してきました。家族はとても貧しく、毎日生きていくために、彼は学校を退学して近くのゴミ捨て場でくず拾いをしていました。スタッフはコミュニティを家庭訪問している時にイシュティヤクさんと出会い、仕事の合間に彼をMLCに通わせるよう、母親を何度も説得しました。その結果、彼はMLCに通うようになり、再び学ぶことの楽しさを感じるようになりました。少しずつ自信を取り戻した彼は、MLCに通い始めてから6か月後、とうとう学校に再入学を果たしました。

イシュティヤクさんは「僕は学校に戻れる方法を知らなかった。でもこの青いバス(MLC)がもう一度学校で勉強できるように助けてくれたんだ。学校で勉強ができて、とてもうれしい。」と話しています。今日では、イシュティヤクさんは学校に通いながら、母親を助けるために働いています。そして、引き続きMLCに通い、他の子どもたちと一緒に勉強したり、活動に参加したりしています。


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シファさんとお母さん

シファさんのケース

貧しく子どもが多い家庭では、特別なケアが必要な子どもは家の中に閉じ込められ、必要なケアや情報に十分にアクセスできない場合があります。スタッフがコミュニティでの家庭訪問をしている時に、シファさん(5歳)と家族に出会いました。彼女には日常生活をスムーズに送るための特別なケアとトレーニングが必要ですが、家族はとても貧しいため、遠く離れた特別支援学校に通わせることができませんでした。スタッフが彼女をMLCに連れてくるように家族を説得したところ、彼女はおばさんに連れられてMLCにやってきました。カラフルで楽しそうなバスと映像機器を見た瞬間、彼女の目は生き生きと輝き、とても興奮した様子でした。その後、彼女は定期的にMLCに通うようになり、ビデオや本を使った授業で楽しく学んでいます。

シファさんのお母さんは「私は娘を通わせることができる場所を知りませんでした。一人だと、子どもを安心して預けられる場所を見つけることはとても難しいです。MLCは、娘が楽しむだけでなく、様々なことを学ぶことができる最も安全な場所の一つだと感じています。」と話しています。スタッフは引き続き家族と協力しながら、シファさんの特別支援学校への入学準備を進めています。

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ムンバイ市M-East区
キラン・ディガブル区長

行政からのコメント

M-East 区の子どもたちが将来、安定した収入を得るにはスキル向上につながる教育を受けることが不可欠。教育を届けるインフラ環境が未整備な中、移動図書館というイノベーティブな取り組みをきっかけに学校に通う子どもが増えたのは極めて大きな成果です。

  • 全ての写真はセーブ・ザ・チルドレンの提供によるものです。