サプライチェーン・マネジメント

事業領域の拡大を背景に、伊藤忠商事のサプライチェーンは広域化・複雑化し、自社が直接管理できる工程だけでなく、原料の調達や生産地、中間流通及び消費地での人権・労働及び環境等へのリスクマネジメントがより必要となっています。特に自社の購買シェアが比較的高いサプライヤーの現場管理については、その配慮や責任度合も大きく、優先して取り組むべき事項として捉えています。
伊藤忠商事は、「伊藤忠商事サプライチェーンCSR行動指針」を定め、以下のような調査・レビューの取組を行うことで、問題発生の未然予防に努め、問題が見つかった場合にはサプライヤーとの対話を通じて改善を目指します。

伊藤忠商事サプライチェーンCSR行動指針

  1. 従業員の人権を尊重し、体罰を含む虐待などの非人道的な扱いを行わない。
  2. 従業員に対する強制労働・児童労働を行わない。
  3. 雇用における差別を行わない。
  4. 不当な低賃金労働を防止する。
  5. 労使間の円滑な協議を図るため従業員の団結権及び団体交渉権を尊重する。
  6. 法定限度を超えないよう、従業員の労働時間・休日・休暇を適切に管理する。
  7. 従業員に対して安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供に努める。
  8. 事業活動において、自然生態系、地域環境及び地球環境の保全に配慮し、環境汚染の未然防止に努める。
  9. 関係法令及び国際的なルールを遵守し、公正な取引及び腐敗防止を徹底する。
  10. 上記の各項目に関する情報の適時・適切な開示を行う。

サプライヤーへのサプライチェーンCSR行動指針の通知

サプライヤーから当社の調達に関する方針の理解と協力を得ていくことが重要と考え、2013年度に、継続的取引のある約4,000社のサプライヤーに対して「伊藤忠商事サプライチェーンCSR行動指針」を改めて通知しました。また2015年1月からは新規のサプライヤーと取引を行う場合は必ず事前に通知することを定め、当社のCSRに関する方針についてコミュニケーションを深めています。

違反サプライヤーへの対応

本方針の趣旨に違反する事例が確認された場合には、対象となるサプライヤーに是正措置を求めるとともに、必要に応じて現地調査を行い指導・改善支援を実施していきます。是正要望等を継続的にも行ったにも関わらず、是正が困難と判断された場合には、取引を見直す姿勢で取り組んでまいります。

サプライヤーCSR実態調査

サプライヤーの実態を把握するため、ISO26000の7つの中核主題を必須調査項目としたうえで、ディビジョンカンパニーごとにそれぞれの商品特性に適した方法でサプライヤーの実態調査を行っています。

[図]
サプライチェーン・マネジメント推進図

サプライヤーCSRチェックリスト

[図]
サプライチェーン・コミニュケーション ハンドブック

伊藤忠商事は、高リスク国・取扱商品・取扱金額等一定のガイドラインのもとに各カンパニー及び該当するグループ会社が重要サプライヤーを選定し、各カンパニーの営業担当者や海外現地法人および事業会社の担当者がサプライヤーを訪問しヒアリングを実施、またアンケート形式(サプライヤ-CSRチェックリスト)のCSR実態調査を2008年度より進めています。

2015年度からは、従来実施していたサプライヤーCSRチェックリストをISO26000の7つの中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画及び発展)に基づき改訂しています。本調査では中核主題以外も、生活資材部門(紙・チップ/木材)では森林保全のチェック項目、食料カンパニーは食品安全の項目、また繊維カンパニーでは知的所有権保護の項目等を追加するなど分野に応じた調査を実施しています。
また、サプライヤーとのコミュニケーションに関するハンドブックも作成し、担当者がより具体的に重要サプライヤーの環境・人権・労働慣行・腐敗防止等の管理状況の実態を把握し、改善アドバイスも行うことができるチェックの仕組みを展開すると共に、社員周知に活用していきます。今後も調査やコミュニケーションを継続することで、社員の意識向上とサプライヤーへの理解と実践を求めていきます。

ハンドブック記載例

強制労働の禁止 従業員を無理矢理働かせてはいけません

強制労働とは、本人の意思に反して強制的に行われるあらゆる労働のことです。例えば、借金の返済のために離職の自由が制限されていたり、または契約で職場を離れる自由が制限されている場合などは強制労働に該当します。勤務シフトはどのようか、休憩時間はあるか、食事をとることができているか、従業員にヒアリングしたり、顔色を観察することからわかる場合もあります。劣悪なケースでは、社員寮が工場敷地内にあって敷地外へ出ることが制限されるなど、生活そのものが拘束されていることもあります。地方や他国から働きに来ている従業員はいるか、確認することも有効です。パスポートや身分証明書、労働許可書などの原本を雇用者が預かることは、強制労働を招く行為として禁止されなければいけません。

参考

新興国のみでなく日本の工場でも強制労働がないか、確認が必要です。近年、日本の「外国人技能実習制度」が一部海外から批判が集まっているため、国内でも外国からの従業員がいるか、労働時間、賃金面で問題ないか等、確認してください。

2015年度サプライヤーCSR実態調査

2015年度は、海外店のサプライヤー6社、グループ会社6社のサプライヤー37社を含む計269社の調査を行い、その結果からは直ちに対応を要する深刻な問題は見つかりませんでした。調査時には懸念事項としてあがった問題点も、取引先による迅速な改善措置や対策等を確認しており、今後も取引先に対して、当社の考え方に対する理解を求め、コミュニケーションを継続していきます。担当した現場の社員からは「毎年実施している本調査を通じ、サプライチェーン・マネジメントが浸透しつつある」といった感想もきかれました。

2015年度実績 対象基準 調査対象
会社数
調査項目
繊維
  • ・高リスク国
  • ・一定金額以上
  • ・一定商品群取扱い
51社

・全カンパニー共通の主な設問

  1. 組織統治:CSR責任体制・内部通報制度の整備
  2. 人権:事業上の人権侵害のリスク評価・児童労働/強制労働/ハラスメント/差別の廃止・適正な賃金支払
  3. 労働慣行:労働時間管理・安全衛生管理・従業員の健康
  4. 環境:廃棄物/排水処理・危険物の取り扱い・気候変動/生物多様性への取り組み
  5. 公正な事業慣行:腐敗防止・情報管理・知的財産権の侵害防止
  6. 消費者課題:品質管理・トレーサビリティ
  7. コミュニティへの参画及び発展:消費者および近隣住民との対話

・分野別設問

  • 繊維カンパニー:化学物質管理・知的所有権保護
  • 食料カンパニー:食品安全・生産地管理
  • 生活資材部門(紙・チップ/木材):森林保全・第三者認証の有無
機械

13社

金属

18社

エネルギー・化学品

30社

食料

75社

住生活・情報

82社

合計

269社

 

重要サプライヤーに対しては、必要に応じて広報部CSR・地球環境室が外部専門家と共に訪問調査も実施しています。
2015年度は、ミャンマーにあるドレスシャツの縫製業を営む子会社TI GARMENT COMPANY LIMITEDにおいて、ILO憲章、主要グローバルアパレルブランド基準、ミャンマー国内法・条例に基づき労働安全・労務管理・人権・環境面の訪問調査を行いました。

訪問調査レポート ミャンマーの縫製工場実態調査

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2016年2月29日、外部専門家と共に、当社子会社である縫製工場TI GARMENT COMPANY LIMITEDを訪問調査しました。ヤンゴン市中心部より車で40分弱のミンガラドン工業団地にある本工場では、ドレスシャツの製造を従業員1,150名の1シフト体制で行っています。午前中は、社長、経理部長との面談と人権・労務管理に関して書類チェックを行い、午後は工場長も立ち会いのもと工場内の生産ライン、避難経路、ミシン針交換所、食堂等を確認して回りました。外部専門家からは、従業員採用時の公的IDによる年齢確認や、適正な労働時間・給与管理が行われており、書類も良く整理されているとの評価を得ました。また、国際基準を満たすという観点から、避難経路図の多言語表示や月に一度の消火器の自主点検実施など、労働安全衛生面でいくつかの指摘を受け、速やかに対策を講じました。引き続き現地では、品質管理と生産効率の向上を目指し、労働安全や環境にも配慮した管理体制の強化に取り組んでいきます。

食品加工工場の定期訪問調査

食料カンパニーでは、食品安全・コンプライアンス管理室主導で、輸入食品については2011年度より海外サプライヤーの食品加工工場の定期的な訪問調査を実施しています。2015年度は、海外サプライヤー148社(延べ153回)を訪問し、食料取引における安全確保の為の未然防止策を展開しています。2015年1月からは、北京に中国食品安全管理チームを開設し、中国サプライヤーの監査を行うことが出来る体制を整えました。2015年度は、47社(延べ89社)の定期監査・フォローアップ監査を実施しております。

関連内容はこちら

グループ会社実態調査

グループ会社における環境汚染等の未然防止を目的として、CSR・地球環境室が第三者の立場で、外部専門家も起用し、現地訪問調査を継続的に行っています。

詳細はこちら

2015年度実績 対象地域 訪問調査
実施社数
調査項目

食品カンパニーの食品衛生監査 ※
(直接輸入仕入れ先)

海外

148

食品衛生・食品防御

グループ会社実態調査(兼)
サプライヤー実態調査

海外

3

土壌汚染・排水&排気管理・廃棄物処理・労働安全・労務管理・人権

国内

8

土壌汚染・排水&排気管理・廃棄物処理・労働安全・品質管理

  • 海外サプライヤーのうち2社は、サプライヤーCSR実態調査先と重複。