サプライチェーン・ルポルタージュ
第3回「チョコレートがあなたに届くまで」

チョコレートがあなたに届くまで

チョコレートをめぐる課題、伊藤忠商事の役割

カカオは日本から離れた赤道付近の地域で栽培されるため、天候不順による収穫や品質の不均衡、カカオの病気や害虫被害など熱帯農業特有の問題、ときに生産者の社会的地位の問題を孕みます。
伊藤忠商事では、安定品質、また消費者に安心のカカオ豆を供給できるよう長年にわたりカカオ生産国に直接赴き、日本市場に向けたカカオ豆づくりを現地のサプライヤーとともに進めています。
またカカオ栽培のサステイナビリティを保護する一環として、エクアドルではKAOKA基金への資金援助を通じ、現地の伝統品種を栽培する農家の活動と、彼らの社会生活の向上をサポートしています。

KAOKA基金とUNOCACEの取組

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カカオ生産農家。組合の合同技術トレーニングのため、各生産地域より集合。
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カカオの接ぎ木と訓練を受けた農家
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鎧塚俊彦シェフの作品

チョコレートの原料となるカカオ豆。その多くは熱帯でカカオ栽培を営む小農家によって支えられています。香り豊かなカカオを生産するエクアドルも同様に沢山の小農家によって支えられていましたが、第一次世界大戦後に輸出手段を失い、生産のバランスが次第に崩れ、カカオの病気の蔓延、産業の荒廃を招きました。さらに国際カカオ相場も安定を欠き、情況は次第に厳しい方向へと移っていきました。
こういった背景から生産者を支援し、品質の向上を図るためカカオ生産者協同組合(UNOCACE)が1999年に設立しました。

フランスで有機チョコレートを製造するKAOKA社は、売上金の一部をカカオの生産活動に還元する取組を行っており、エクアドルにおいては2002年より彼らの基金を通じてUNOCACEへの支援が開始されました。
活動の中心となるのは、小農家の生産技術や社会生活をサポートしながら国内の伝統的なカカオを再育成し、その付加価値を農家に還元する働きです。
この活動はKAOKA社の製品でスイーツを創作する鎧塚俊彦シェフ(Toshi Yoroizuka)も支援を行っており、伊藤忠グループも基金への寄付や製品の販売を通じて支援をしています。

STEP01「栽培・収穫する」

はじまりは熱帯フルーツ

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カカオの花。非常に小さく1本の木に沢山咲くが、結実するのはその一部
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はじまりは熱帯フルーツカカオの実。チョコレートの原料となる種は、白い果肉に包まれているが段々茶色に変わる。

熱帯植物であるカカオは赤道を挟み南北緯20℃の範囲で主に育ちます。一般的にはシェードツリーと呼ばれる背の高い陰木をカカオの木の間に植え、その葉枝がつくり出す陰で熱帯の太陽光を適度に遮りながら栽培します。種から苗木を育て、その後健康な苗木を大地へと移しますが、苗木の状態のときに"接ぎ木"が行われることも多く、例えばエクアドルの農業組合などでは伝統的なカカオでも病気に強いものを根幹にして、香りの良い実を付けるカカオの枝を継いでいくことで、良質で安定したカカオ栽培に取組んでいます。

カカオの木には数えきれないくらい沢山の小さな花が咲きますが、結実するのはわずか3%以下。小さな虫が受粉の仲介役となり、受粉から約半年でようやく収穫できる実へと育ちます。栽培開始から結実までの期間は約3~6年、生産性の高い交配種のカカオであれば、2年以内に結実するものもあります。カカオは熱帯のフルーツなのでその果肉を食することもできます。伝統的なエクアドルのカカオの中には花のような甘い香りの果肉もあり、交配種のカカオの中にはレモンやライムのような爽やかな香りの果肉もあります。

このカカオの実の中でチョコレートの原料となるのは果肉に包まれている「種」。収穫したカカオの実はできるだけ早く割って中の果肉と種を取り出し、次の醗酵作業へと進めます。カカオの実の収穫も、中の果肉を取り出す作業も、すべて農家が手作業で行います。

STEP02「醗酵・乾燥」

「種」から「カカオ豆」へ

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醗酵開始直後のカカオの果肉と種。
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バナナの葉を表面に被せる醗酵途中。段々茶色に変わる。

カカオの実から取り出された果肉と種は、数日間醗酵させます。酵母や酢酸菌など微生物の活動によるさまざまな化学反応が醗酵中に起こり、これによりチョコレートの香りの"もと"や、味の基礎部分がつくられます。種を包んでいた白い果肉は醗酵中に次第に減って、最後には茶色くなった種の部分だけが残ります。

品質管理の行き届いている農業組合や輸出企業では、組合農家、契約農家、自社農園など各地で熟したカカオの実を収穫後すぐに割り、果肉と種を取り出しその日のうちに醗酵施設で安定した集約醗酵を行います。組合などに加盟していない農家では、個々に醗酵・乾燥を行ってから仲買に販売することが一般的で、同じ国の中でも収穫から醗酵まではさまざまな経路に分かれます。

醗酵後のカカオの種(カカオ豆)は水分を含んでいるため、7~8%の水分量まで乾燥させます。乾燥には天日乾燥やガス熱などを利用した機械乾燥など幾つか方法がありますが、湿度が高く雨季のある熱帯での乾燥のため農業組合や輸出企業のように集約して加工するところでは、天日と機械乾燥を使い分けることがあります。

STEP03「品質検査・調整」

カカオ豆の内部を入念にチェック

輸出前のカカオ豆は香りや味わい、水分値などの品質検査を経て出荷されます。水分が高い場合、出荷前にもう一度水分調整をします。カカオ豆を割ってカビや害虫の検査も同様に行われます。

さまざまな地域で生産されたカカオ豆は集約して日本に輸出されますが、輸出前にはそれらの生産経路の確認なども行われます。

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各農家で収穫した果肉と種を醗酵施設へ搬送。山道などはロバが運搬する。
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輸出前のカカオ豆

日本に輸出

STEP04「チョコレートの原料加工」

カカオ豆からチョコレートへ

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日本に輸入されたチョコレートは残留農薬など検疫を経てチョコレート工場へ。まずクリーニング工程により小石やカカオの枝などの夾雑物を除き、ロースターで焙煎します。焙煎はカカオ豆ブレンドと同様、チョコレートの品質を決める大きな要素です。焙煎した豆は砕いて皮を取り除き、グラインダーで磨砕しペースト状のカカオマスになります。
こうしてできたカカオマスに砂糖、ココアバター、ミルクチョコレートの場合は粉乳を加えて生地をつくります。精巧につくられた金属製ロールリファイナーでカカオや砂糖などの粒子を細かく挽き、なめらかな口ざわりのフレーク状にします。次にこのフレーク状の原料をコンチェという機械で長時間練り上げ、チョコレート生地が完成します。
このようにつくられたチョコレート生地は温度調整(テンパリング)後、容器に入れ冷却して固められたり、またはタンクローリーで融けたまま製菓メーカーに運ばれます。
製菓メーカーではさまざまな菓子類などに加工され、小売を通じて消費者のもとに届きます。

STEP05「製菓メーカー・専門店」

製菓メーカー:身近なチョコレート菓子へ

原料のチョコレート生地は、製菓メーカー各社でチョコレート菓子などに加工されます。カカオ豆を自社で焙煎してチョコレートを作る企業もあります。

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専門店:プロフェッショナルチョコレートへ

エクアドルの伝統カカオのように、香りや味に特徴のあるカカオ豆の一部は専門店向けのチョコレートへと加工されます。各店のシェフは、その特徴を生かしたチョコレートスイーツを創作します。

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視察を終えて

cafe‐CACAO代表 カカオハンター小方真弓さん

cafe‐CACAO代表
カカオハンター®
小方真弓さん

誰もが知っている甘くておいしいチョコレート。ところがその原料である"カカオ豆"になると、どんなところで、どのように栽培されているのか、あまり知られていないのが現状です。多くが赤道付近の国々の、都市部を離れた農村地帯で栽培されていますが、今回視察を行ったエクアドルのように地球の裏側で生産されるカカオ豆を、いかに安全に、安心とともに日本の市場に届けるかには、生産者や輸出企業の努力と、彼らとの信頼・協力関係がなくてはできないことであると感じます。
カカオサプライチェーンで大切なことは、カカオ生産者とチョコレート消費者の遠く離れた距離を伊藤忠商事が架け橋となり、チョコレートになるまでの道のりをひとつずつ結んでいくことだと思います。