サプライチェーン・ルポルタージュ
第7回「バナナが食卓に届くまで」

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概要

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取扱商品ごとのサプライチェーン全体像を報告する「サプライチェーン・ハイライト」。今年度は誰にも親しみがあるフルーツ、また伊藤忠商事の事業会社であるDoleの主力商品である「バナナ」を取り上げました。バナナは、苗から育て、店頭に並ぶまで、2年近くにわたり大勢の人々が関わって、お客様の手に届けられています。今回は、日本で食べられているバナナの約9割の生産地であるフィリピンのミンダナオ島を訪問し、普段よく食べているバナナがどのよう作られ、運ばれてくるのか、その過程で人や環境にどのような配慮がなされているのか等を紹介します。

  • 紹介されている農園: Calinan地区Tawantawan農園
  • 取材時期:2015年3月

Dole事業について

世界中の青果売場で必ず目にするバナナは、栄養価の高さと安定した価格から根強い人気を得ており、日本でも2004年より生鮮果実の中でNO.1の消費量となっています。年間100万トンを超える輸入量のうち、フィリピン産が9割強を占め、その約3割のトップシェアを握ってきたのが、Dole Food Company Inc.(米国Dole社)です。伊藤忠商事は、2013年4月、世界最大の青果物メジャーである米国Dole社のアジア青果物事業とグローバル加工食品事業を買収しました。

STEP01「植え付けから育苗まで」

株分けから育苗まで

バナナは木ではなく草

バナナは大きいもので10メートルにもなる植物で、その大きさから「バナナの木」と呼ばれますが、正確には草の仲間です。私たちが普段食べているバナナは種を作らない品種で、株分けによって苗が作られます。Doleでは、数ある畑の中から選んだ優良なバナナの茎から株(成長点)を採取し、専用施設の清潔な環境で培養することで健康な苗を育てています。約10ヶ月かけて一本の親株から実に千本以上の植付可能な苗が出来ます。

Panabo地区の育苗場

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親株の成長点
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培養組織を分割
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フラスコ内で7ヶ月育成
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1苗ずつ鉢に植えて2ヶ月

STEP02「植え付け、育成から収穫」

一房にバナナが200本!

農園では1株ずつ手作業で苗の植え付けをします。太陽の光を浴びてスクスク育ち、一株にバナナ約200本がつく大房(Stem)が成長し、約1年後に収穫されます(※本数、期間は品種・標高等により異なります)。栽培期間中は害虫から守るために袋がけをしたり、擦り傷を防ぐために一房一房に緩衝材を入れたりという手入れが全て手作業で行われています。収穫時には根元から横に子株が育ってきて、数世代に渡って収穫ができます。

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病害虫・鳥の被害防止、保温の袋がけ
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ゾウムシを捕獲する粘着テープ
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スリ傷防止の為のシート
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大房 (Stem)
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栄養を果実に集中させるために先端の花苞をカットします。その際先端の果実一本だけを残します。切り口から菌の感染があった時にこの一本が残り約200本の為の犠牲になるのです。

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収穫後はしばらく株を切り落とさず残しておきます。親株に蓄えられた養分が脇に生える子株に吸収され、次世代の成長に引き継がれていきます。

STEP03「洗浄・仕分け・パッキング」

産地まで特定できるトレーサビリティを確保

収穫されたバナナは農園に隣接したパッキングプラントで洗浄・選別された後、販売規格に合わせてカット、袋詰め、箱詰めされます。その際、収穫した農園、箱詰めした施設、日時などが特定できるようBox Codeという番号が一箱一箱に押印されます。これにより販売先で品質等の問題が発生した場合にも産地まで即座に遡ることが出来るトレーサビリティが確保されています。

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STEP04「集荷から船積み・出港」

1か月に1億本以上が日本へ

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箱詰めされたバナナは、Davaoの港で船積みされ、約5日かけて日本へ運ばれます。日本にはフィリピンから毎週2回船で輸送されます。1回の船の中にDoleのバナナは17~18万ケース積載されます。1ケース約80本のため、1回約1400万本、1ヵ月で1億1500万本と日本の人口に近い本数のバナナをDole1社で輸入していることになります。

STEP05「追熟加工、出荷」

日本に着いた時は緑色

日本に到着した時のバナナは緑色をしていてまだ食べられる状態になっていません。これを温度管理された室(ムロ)と呼ばれる部屋で追熟(食べごろまで熟させること)を行います。追熟のきっかけを作るエチレンガスや温度・湿度・二酸化炭素濃度などを慎重にコントロールしながら5~7日間かけて黄色くて柔らかく甘い、皆様のよく知る美味しいバナナに仕上げていきます。

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STEP06「店頭から食卓へ」

消費者ニーズの反映

小売店の受発注システム等とも連携した最新の物流システムで検品・保管・仕分け・配送が行われ、全国のお店で販売されて皆さまのご家庭に届きます。日本の消費者による高い味・品質への要求に対応し、標高の高い土地で栽培されるより糖度の高いバナナの生産を進めています。生産地と消費地の間で人の交流も頻繁に行い、マーケットに合わせた生産活動に努めています。

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環境への配慮、従業員への配慮

環境への配慮

農園等における水質汚染等の環境リスクに対応するため、Dole社では薬品類の使用管理や点検を行い、一部認証申請中の新規園地を除く、本社・自社管理農園全てで環境認証ISO14001を取得して定期的に第三者のチェックを受けています。また、2008年より社員により地域の自然樹木を植える活動を始め、2014年迄に各地の農園の近隣で数千人の社員・ボランティアにより100万本の植林を達成しました。 

従業員への配慮

Dole社のフィリピン直営農場では、約9千名の従業員が働いており、マネージャークラスは約1150名(男女比約7:3)おり、性別・年齢に関わらずたくさんの従業員が地域の主幹産業としてやりがいを持って働いています。人権や労働面での配慮を十分に行うことが課題となりますが、Dole社はこの点でも、作業時に防護服の着用を義務付けるなど、従業員の安全や健康に配慮しています。またILO基準を遵守し、就労環境評価の国際規格であるSA8000を取得して第三者のチェックを定期的に受けています。

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Ms.Marianne

(Dole Philippines Inc. Human Resources Director)

Doleでは常により良い商品の提供を追及する為に従業員の教育と現場からの提案に力を入れています。Dole University Master Training Planと呼ばれる教育システムでは会社の考え方や具体的な作業や管理のスキル等31のプログラムを用意し、作業員、現場監督、マネージャーそれぞれの役割に合わせた教育訓練を行っています。Dole Kaizen Programでは農園の現場作業員中心に組織された少人数のチームによる改善提案が定期的に行われます。過去、作業ツールの開発や原料の無駄を最小化するための温度調節の仕組みなど、全体的な作業効率化につながる良い提案がいくつも生まれています。

地域社会との共生

農園や工場などで多くの人を雇用し、地域の行政や取引企業など多くの関係者と事業活動を行っている中で地域社会との共生は非常に重要な要素です。農園周辺では生活水タンクの提供や約50ヶ所の小学校に椅子や教科書などの教材提供などを行っています。

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教材を寄付した小学校の教室
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地域の住民に同型の貯水タンクを2014年迄に173台(1台あたり約60軒に供給)寄付

まとめ

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紹介者:高岡 美佳
(たかおか みか)

立教大学経営学部教授
東京大学大学院で伊藤元重教授のもとで学び、博士課程を修了するとともに博士号を取得。大阪市立大学助教授などを経て2009年より現職。専門分野は消費者行動論、流通システム論など。

バナナのサプライチェーンを辿ってみると、消費者の食卓に並ぶまでの間に、多くのプロセスを経て大勢の人々が関わっていることがわかります。つまり、食品安全、環境保全、労働衛生、人権などの点で行き届いた管理が必要となるわけです。
Dole社は、価格面や品質面で市場競争力を保つために、サプライチェーンの経済性・効率性を追求し、マーケットリサーチを通じて高付加価値製品を開発する一方で、安全、環境、人権への配慮もしっかりと行っています。このような社会的責任(CSR)意識の高さを評価したいと思います。
最も印象に残ったのは、現地の従業員がやりがいをもって働いている点と女性マネジャーが活躍している点です。雇用創出は企業の重要な使命の一つですが、単に仕事を確保するだけではなく、活き活きと働ける環境を整えることこそが重要だからです。Dole社のさらなる取り組みの強化を期待したいと思います。