2020年、さらなる飛躍の年に

—座談会—

伊藤忠商事株式会社 繊維カンパニー

諸藤雅浩常務執行役員 繊維カンパニープレジデント
清水源也常務執行役員 繊維カンパニー エグゼクティブ バイス プレジデント(兼)ファッションアパレル部門長
三浦省司執行役員 ブランドマーケティング第一部門長
福嶋義弘執行役員 ブランドマーケティング第二部門長

多彩な取り組みで成果を上げた2019年

注目トピックスでひも解く2019年の新たな動き

諸藤雅浩

諸藤雅浩

常務執行役員 繊維カンパニープレジデント

若手とベテランの力を融合しチームとしての総合力を磨くことが大事(諸藤)

常務執行役員 繊維カンパニープレジデント 諸藤雅浩(以下、諸藤): 新年あけましておめでとうございます。2019年の世界経済は、米中通商協議やイギリスのEU離脱問題などの影響もあり、先行き不透明な状況が続きました。日本においては消費マインドの低下が指摘される一方で、皇位継承関連行事やラグビーワールドカップ日本大会など、明るい話題も多くありました。

初めに、特に印象に残ったトピックスから2019年を振り返りたいと思います。私自身は、ラグビーワールドカップ日本代表の活躍が大変印象的でした。チームのスローガン「One Team」に象徴されるように、企業においても若手とベテランの力を融合させ、チームとしての総合力を磨くことが大事だと思いました。

常務執行役員 繊維カンパニー エグゼクティブ バイス プレジデント(兼)ファッションアパレル部門長 清水源也(以下、清水): 「ワークマン」の丈夫で高機能な作業着がタウンユースとしても注目され、「ワークマン女子」も話題になりました。例えば、調理場用の滑りにくい靴がマタニティシューズとしてSNSで拡散するなど、機能製品の新しい用途を消費者自身が見つけるという消費スタイルも生まれています。

執行役員 ブランドマーケティング第一部門長 三浦省司(以下、三浦): 高カロリー、高脂質の悪魔的なおいしさを謳った“おにぎり”も話題になりました。昨今のヘルシー志向とは真逆の商品が、断トツ人気の「ツナマヨ」を逆転した。世の中に効率化や健康志向が増える中、それらへ走りすぎると商品の面白みに欠ける可能性があります。消費を喚起する商品という意味でヒントになりそうです。

執行役員 ブランドマーケティング第二部門長 福嶋義弘(以下、福嶋): フードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」が日本上陸3年を経て登録店舗数が1万超へと拡大しました。働き手は働きたい時に働くことができ、企業側は配達人材が固定費にならず、お客様も希望した場所に食事やドリンクが運ばれてくる。まさに「三方よし」のビジネスモデルとして参考にすべき点も多いと思います。特に小規模店舗がデリバリーに参入できるようにした功績は大きいでしょう。

中国の優良企業との協業と事業会社の堅実な成長

諸藤: では、2019年の繊維カンパニーについて、まず、既存事業のさらなるブラッシュアップと海外収益拡大から各部門の取り組みをお話しください。

清水: ファッションアパレル部門では、まず株式会社デサントとの取り組みが挙げられます。TOBを実施し、小関新社長を筆頭とする新たな経営体制がスタートしました。各プロジェクトの見直しを進め、中期経営計画の下で経営の安定化と新たな成長戦略を推進中です。株式会社エドウインは、積極的なプロモーションなどを通してブランド価値の向上を図り卸一辺倒からの脱却を進めています。服飾資材などを扱う株式会社三景、インナーの株式会社ロイネ、ユニフォームの株式会社ユニコも堅調に推移しました。海外では、伊藤忠繊維貿易(中国)(ITS)がスポーツ関連で中国の内販拡大を推し進め、特に「デサント」ブランドのパートナー安踏体育用品との取り組みが深耕中です。また、アジアを統括する伊藤忠テキスタイルプロミネントアジア(IPA)は、ベトナムにASEAN R&Dセンターを新設し、ASEAN地域における素材開発を強化しています。さらに、競争力のある素材起点、ブランドを絡めた製品ビジネスが伸張しており、いずれも我々が持っている生産基盤を合致させイニシアチブが取れるビジネスに成長しています。

部門を牽引する好調の主力ブランド

三浦: ブランドマーケティング第一部門では、事業会社の株式会社ジョイックスコーポレーション(以下、ジョイックス)のECが堅調に伸び、主力ブランドの「ポール・スミス」は、大阪に念願の旗艦店を出店しました。2020年に、ポール・スミス氏が英国ノッティンガムに1号店をオープンしてから50周年、ジョイックスも同じく設立50周年を迎えます。オムニチャネル化を一層進め、いい50周年にしたいと思います。「コンバース」はシーズン企画が非常に好調です。お客様が自身でカスタマイズできる「ホワイトアトリエ」という小売事業も順調で、2020年春には3号店を出店する予定です。高級インポートを扱うコロネット株式会社は、イタリアのラグジュアリーブランド「ムーレー」が好調です。海外では、ダウンジャケットの製造・販売を手がける波司登が、ジャンポール・ゴルチエという著名デザイナーとのダブルネームでのコラボを実現しました。また、ベトナムのビナテックス社とタッグを組んで生産ラインを確保するなど、部門や地域を超えた取り組みも進めています。

福嶋: ブランドマーケティング第二部門は、主要事業会社である株式会社レリアンが、ECでは毎年2桁以上の伸びを示しています。「レスポートサック」はここ1年のさまざまな施策が奏功し、特に企画面の充実により売り上げも伸びています。また「フィラ」も好調で、特に「ディスラプター」というダッドスニーカーが爆発的に売れ、全体を牽引しています。ライフスタイルブランドの「ローラ アシュレイ」では、ワールドグループとの協業を開始しました。衛材関連では、中国、ロシアに加え、ブラジル向けがある程度の規模に伸張しており、さらなる成長を期待しています。

JALグループの新制服
JALグループが2020年4月から着用する新制服。客室乗務員と地上接客スタッフの制服をユニコが手がけた。
ジョイックス
ジョイックスは「ポール・スミス」大阪店を心斎橋にオープン。大阪エリア初のメンズフラッグシップショップとなる。
「ローラ アシュレイ」の公式店舗
イギリスのライフスタイルブランド「ローラ アシュレイ」の公式店舗、日本公式ECサイトの展開に関するサブライセンス契約を締結した。