2020年、さらなる飛躍の年に

—座談会—

2019年は次世代ビジネスが進展

サステナブルの潮流に乗ったバリューチェーンの再構築

諸藤: 次に、各部門の「商いの次世代化」の進展についてお話しください。ファッションアパレル部門では、原料起点のバリューチェーンの構築、サステナブルな原料がキーワードになると思います。

清水源也

清水源也

常務執行役員 繊維カンパニー エグゼクティブ バイス プレジデント
(兼)ファッションアパレル部門長

マーケットインの発想による差別化原料とサステナブル原料を武器に展開する(清水)

清水: バリューチェーンの再構築については、マーケットインの発想による差別化原料、サステナブル原料を武器に、独自のビジネスモデルを推進し、中国、アジア、欧米とさらにグローバルに展開していきたいと考えています。特にサステナブルの潮流は、世界的に加速していますので、環境配慮型素材の需要が急増している状況を踏まえ、新たな切り口で大手リテイラーとの取り組みをグローバルに実現するべく、昨年度にいくつかの投資も行いました。その一つがフィンランドのメッツァ・グループとの合弁工場です。木材を原料とした環境配慮型のセルロース繊維の工場で、今春にも稼働予定です。また、スパンデックス「ライクラ」で知られる米ライクラ社へも出資し、さらに「レニュー」プロジェクトでは、再生ポリエステル素材の展開も開始しました。当部門の出資先の生産プラットフォームであるサンライズ・ベトナムやビナテックス社などを最大限に活用し、製品として国内外に販売していきます。特に「レニュー」はサーキュラーエコノミーとして注目されており、大きなビジネスチャンスになると確信しています。

ECと実店舗の融合進むオムニチャネル化

清水: ブランドビジネスでは、「新たな流通チャネルへの参入」というテーマに取り組んできました。

三浦: 最もEC化が進んでいるジョイックスでは、全社の売り上げに占めるECの比率が2018年度は13.8%でしたが、2019年度上期に15.4%へと伸長しました。オムニチャネル化を進めるにあたり、問題となるのはECと実店舗の在庫配分ですが、現在、在庫の一元化、最適化を目指し、三景の非接触ICタグ・RFIDを活用したシステムの実証実験を進めており、早ければ2020年の春夏物から導入したいと考えています。「コンバース」についても、ECが前年比で159%に急拡大していますので、課題である在庫不足による販売機会ロスの削減を目指し、大手ECモールへの公式店の出店準備と、適正在庫算出のためのシステム開発を進めています。また、クラウドファンディングの株式会社キャンプファイヤーにも出資しました。掲載件数2万件超は国内最大規模で、消費者ともダイレクトにつながっていますので、プロモーション、新商品の需要予測、さらにはテストマーケティングなどに活用できると期待しています。

諸藤: ECと実店舗の融合という点では、米Fyusion社が持つ360度画像の撮影技術の導入も進めています。

福嶋: Fyusion社の技術は商品を3D画像で見せることができるため、EC販売強化のツールとして役立てたいと考えています。ファッションに留まらず、中古車、インテリア、フードなど多種多様な業種にアプローチ中です。また、会員制のフラッシュセールサイト「ミレポルテ」も、ブランドイメージを損なわずに在庫を売り切る仕掛けの一つとして注目されています。この「ミレポルテ」との協業によるシーアイ・ショッピング・サービス株式会社のオムニチャネル化も、かなりの効果が出てきていますので、今後もぜひ追求し、太い幹に育てていきたいと考えています。

レニュープロジェクト
サーキュラーエコノミーを目指す「レニュー」プロジェクトが「プルミエール・ビジョン」に初出展し、好評を博した。
キャンプファイヤー
昨年出資したクラウドファンディングの「キャンプファイヤー」。事業会社のエドウインなどへと活用が広がっている。