2020年、さらなる飛躍の年に

—座談会—

リーテイルサポートの強化を加速する2020年

AIによる自動採寸技術とラストワンマイル

諸藤: 2019年度下期から「商いの次世代化」の3本目の柱として、「リーテイルサポート機能の提供」を新たに掲げました。これに関連する取り組みについても紹介してください。

清水: ファッションアパレル部門では、昨年秋にAI採寸技術「ワン・メジャー」を展開する中国のTOZI社と資本・業務提携しました。アパレル業界では、在庫問題の解決も大変重要ですが、同時に、市場における消費者の利便性を上げることも忘れてはなりません。そのため、自動採寸技術の導入は不可欠になっていくと見ています。そして、単に技術を活用するだけでなく、当部門の生産プラットフォームと連動させていくことができれば、新発想のバリューチェーンの構築につながるのではないかと考えています。また、RFIDでは、三景と共同で在庫管理から店頭までのトータルソリューションの提供を進めており、リーテイルサポート機能の一つとしても注力していきます。

三浦省司

三浦省司

執行役員 ブランドマーケティング第一部門長

業務効率に加えラストワンマイルにもビジネスチャンスを見出していく(三浦)

三浦: 在庫の一元管理ができるRFIDは、次世代アパレルプラットフォームには欠かせないシステムです。そのため、先述したジョイックスでのRFIDによる在庫一元化システムの実証実験を進め、稼働状況を見ながら、他の事業会社やアパレル、小売業のお客様にもプラットフォームとして提供していきたいと考えています。RFIDの導入は、在庫管理に有効なだけでなく、店頭オペレーションが効率化され、販売効率も上がるはずです。それともう一つ、商品を購入したお客様に届ける最終的な一手、「ラストワンマイル」という課題も見逃せません。いかに販売が効率化できたとしても、最終的にお客様に届けるところが欠けていては、真のサービスにはなりません。すでに、ECサイトで購入した商品を実店舗や宅配ボックスなど、自宅以外の場所で受け取る「クリック&コレクト」というソリューションも出てきています。我々もそうしたソリューションを提供する企業と手を組んで、例えば、自動スマートロッカーを公共施設に設置して商品をお届けするなど、新たなビジネスチャンスを模索していきたいと考えています。

ブランドビジネスのデジタル化で貢献

福嶋: 当部門では、昨年、世界最大規模のB2Bマーケットプレイス「ジョア」を運営する米JOOR社に出資しました。「ジョア」は、それまで手作業だったファッションブランドの受発注をオンラインでできることから、飛躍的に業務効率化を図ることができます。将来的にはトレンド分析やレコメンド機能も備え、ブランドと小売間のコミュニケーションツールにもなるという発展性のあるプラットフォームです。すでに全世界で約8,600ブランドが登録しており、流通総額は約1兆4,000億円です。ブランドの日本へのインポート、または日本からのエクスポートを視野に入れ、我々が一番得意とする分野をデジタル化していくことが、リーテイルサポートの一つのキーになると考えています。これをぜひ、我々のお客様にも提案し、業務の効率化に貢献したいと思います。また、AIベンチャーとの連携で、アパレルの需要予測や在庫配分の精度を上げるAI開発を進めており、レリアンで実証実験中です。レリアンのECは、オムニチャネル化によって順調に拡大しています。これは実店舗の上質な顧客層と長年培ってきた顧客へのアプローチ術の結果だと思います。現在、商品の店間移動に多くのマンパワーと時間を費やして高いプロパー消化率を誇っていますが、AIの活用によってさらなる消化率の向上や労力の削減を見込んでおり、確証が得られ次第、他の事業会社にも広げています。

ワン・メジャー
中国のTOZI社によるAI採寸技術「ワン・メジャー」は、リーテイルサポート機能強化の一つとして期待されている。
B2Bマーケットプレイス「ジョア」
ファッションブランドの受発注をオンラインでできる世界最大規模のB2Bマーケットプレイス「ジョア」。