小売業・サービス業に見る省人化最前線

CASE❶ 株式会社QBIT Robotics

ロボットならではの強みを生かし新たなコミュニケーションを創出する

最先端のロボットが働く「変なホテル」を手がけたメンバーによって2018年に設立され、現在は「&robot café system(アンドロボット カフェシステム)」を軸に、飲食・サービス業の現場への協働型ロボット導入を推進している株式会社QBIT Robotics(キュービットロボティクス)。人とロボットが共存・協働する未来を見据え、ロボット市場の拡大に尽力する同社の代表に取材した。

株式会社QBIT Robotics代表取締役社長 兼 CEO中野浩也氏

中野浩也

株式会社QBIT Robotics
代表取締役社長 兼 CEO

現場の生産性を高める協働型ロボット

当社は、工場などで使われている作業用ロボットにコミュニケーション機能を加え、飲食・サービス業の現場に活用する協働型ロボットの企画・構想から設計、加工、組み立て、運用支援までを一貫して手がけるロボティクス・サービス・プロバイダーです。飲食・サービス業において、人手不足や人件費高騰が課題となっている中で、私たちはロボットを活用して現場の生産性を高めることを目指し、「店員」として働くロボットの基盤を開発しました。

パッケージ商材としては、UCCグループの協力を得て、ロボット専門の技術者を必要としない、省スペース型店舗のロボットカフェシステム「&robot café system」を製品化しました。カウンター筐体とプロ仕様のカフェマシン、学習機能を持つAIと連携するアームロボット、その他の必要機器で構成され、搬入から数時間でロボットカフェが設営できます。本パッケージは現在、長崎県の「ハウステンボス」や兵庫県の「エビスタ西宮」(期間限定)などで導入されています。

省人化にとどまらないロボットの役割

弊社から提供するロボットサービスの根幹を担うのが、ロボットの動作、発話を司る「おもてなしコントローラー」です。カメラとの連携によって来店者の性別や年齢、表情を推定し、それに合わせた動作や発話で接客・集客を行い、来店者の反応や売り上げなどのフィードバックから最適なコミュニケーションを学習していきます。特定の作業に徹する機械に比べ、こうしたコミュニケーションが取れることがロボットの大きな特徴で、「エビスタ西宮」などの導入店舗や、先日「ロボットパスタショップ」を出店したJR大宮駅構内のイベント会場などでも、幅広い年齢層のお客様にお楽しみいただいています。

  一人ひとりの来店者にパーソナライズした対応ができることもロボットの強みで、将来的には、お客様の嗜好や健康状態などに合わせてレシピや味を変えることも検討しています。またアンケートなどのツールを使わず、カメラによりお客様の「素直な」反応を収集できるため、スーパーの試食販売など、マーケティングや販売促進ツールとしても有効です。今後も省力化に限らず、さまざまな用途で活用できるよう開発を進めていきたいと考えています。

人とロボットが協働する未来

国内ロボット産業の未来予測において、2025年頃からサービスロボットが普及し、2035年頃には作業用ロボットの数を上回るという試算も出ており、最近は、飲食・サービス業においてもロボット導入に興味を示す企業は増えています。とはいえ、ロボットへの過剰な期待を持たれていたり、ロボットが活躍しやすい環境構築への理解が足りなかったりするため、ご相談いただいた企業様へは、丁寧にご案内しつつ、全体最適におけるロボット導入を提案しています。

私たちは、ロボットは人の仕事を奪うものではなく、あくまでも人と共存し、サポートしてくれる存在だと考えています。近年は、サービス業用に特化したアームロボットの開発が世界的に進んでおり、低価格のロボットが発売されています。これによって導入コストが劇的に下がれば、サービスロボットの普及は大幅に進むはずです。今後は、人とロボットがともに働ける安全な環境を担保する仕組みづくりなども見据えながら、さまざまな企業とともに市場の探索・拡大を図っていきたいと考えています。

接客や集客を行うロボット
接客や集客を行うロボット。お客様に合わせ、セリフや動作を変えて、もてなす。
ゼロ軒めロボ酒場
1月にオープンしたばかりの「ゼロ軒めロボ酒場」では、ロボットがビールやカクテルなどのドリンクを提供する。