小売業・サービス業に見る省人化最前線

CASE❸ 株式会社ファミリーマート

業務効率化と体験価値向上を両立させる次世代コンビニエンスストアの形

コンビニエンスストア各社がセルフレジの導入などによる省人化、業務効率化を図る中、株式会社ファミリーマートは、パナソニック株式会社およびパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社などとともに実証実験店舗「ファミリーマート佐江戸店」を2019年4月にオープンさせた。IoT技術を駆使した多彩なソリューションを通して次世代のコンビニのあり方を探る同社を取材した。

株式会社ファミリーマート 営業本部 営業推進部 店舗改革推進グループ マネジャー 田村剛氏

田村 剛

株式会社ファミリーマート 営業本部 営業推進部 店舗改革推進グループ マネジャー

パナソニックとの実証実験店舗

現在、ファミリーマートは全国に約16,500店舗を展開していますが、その大半を占めるフランチャイズ店は、深刻な人手不足に悩まされているのが現状です。従業員が集まりにくいことに加え、オーナーの高齢化も進む中、店舗運営の省力化、業務効率化は喫緊の課題となっています。こうした状況下、ファミリーマートでは、バーコード決済サービスによるキャッシュレス化やセルフレジの導入など、コンビニエンスストアの業務の35%を占めるレジ作業を中心に、従業員の負担を軽減する取り組みを推進してきました。

同時に、2019年4月には、パナソニックなどとの共同実証実験として、同社らが開発した技術を駆使し、業務効率化や顧客満足度向上を目指す次世代型コンビニエンスストア「ファミリーマート佐江戸店」をオープンさせました。

IoTを活用した多様なソリューション

「ファミリーマート佐江戸店」では、店内に設置された80以上のカメラやセンサーによって、来店者の動きや商品の売れ行きなどのデータを収集し、さまざまなソリューションを通して業務効率化を図っています。省人化の観点では、物体検知による商品の読み込みや、顔認証技術による入店管理や決済システムに加え、カメラやセンサーで店内の状況を常時把握し、欠品情報や混雑状況などを小型ウェアラブル端末で従業員に通知する業務アシストシステムや、商品の価格表示や店内POPなどに柔軟に対応する電子棚札などを導入しています。

また、商圏拡張や販売促進、個店最適化などを図るため、店外から商品の注文から決済までが行えるスマートフォンアプリによるモバイルオーダーや、来店者の行動データをさまざまなデジタルデータと組み合わせ、店舗レイアウトや商品展開を最適化するIoTデータマーケティングなども導入しています。

実用化に向けて高まる期待

これまでの実証実験を通して、特にモバイルオーダーや顔認証システムには大きな効果や可能性を感じています。モバイルオーダーに関しては、現在のプロトタイプを他店舗でも運用可能なシステムに改良していきたいですし、顔認証システムは今後、入店管理や決済だけでなく、年齢確認が必要なたばこやお酒の販売にも活用できるのではないかと期待しており、これらが実現することで従業員の業務効率やお客様の利便性は大幅に向上するはずです。さらに、IoTデータマーケティングを活用した売り場の改善など、その他のソリューションに関してもさまざまな可能性を感じており、今後もパナソニックとともに検証を続けながら、現状の課題をしっかりと認識し、実用化につなげていきたいと考えています。

地域密着型店舗を掲げている私たちは、店舗の完全無人化を目指しているわけではありません。これからも、常に接客を第一に考え、誰にとってのソリューションなのかということを意識しながら、お客様の利便性や体験価値の向上に努めるとともに、従業員やオーナーの負担をできる限り減らすことで、少しでも楽しく、働き甲斐のある店舗づくりに注力していきたいと考えています。

高度な顔認証システムおよび物体検知
顔認証やレジでの商品読み込みなど、高度な顔認証システムおよび物体検知により、従業員の省力化に加えて新しい買い物体験を実現。
欠品情報や混雑状況などが表示されるウェアラブル端末
欠品情報や混雑状況などが表示されるウェアラブル端末の装着で、適時に店舗内状況を把握。