小売業・サービス業に見る省人化最前線
【COLUMN】 株式会社パラディラボ
セルフサービスフレンチで新たな顧客体験の場を創る
昨今、人手不足などの解決策として、飲食店にもセルフサービスの導入が進んでいる。最近ではAIの活用による無人化サービスや、ファストフード店同様のセルフサービスなど、新しいサービスも登場しているが、券売機によるセルフサービスにより、本格フレンチを提供している「トキオプラージュ ルナティック」の店長にその狙いや手応えについて伺った。

阿部利幹氏
株式会社パラディラボ セルフサービスフレンチ トキオプラージュ ルナティック 店長
「フランス料理を日常に」がコンセプト
「トキオプラージュ ルナティック」は、もともとはイタリアンレストランでした。2009年より2階に姉妹店の「ゲッコ」をオープンし、海鮮とお肉のバーベキューをセルフサービス形式で提供したところ好評だったことから、イタリアンレストランもセルフサービス形式にしてはとのアイデアが生まれました。シェフがフレンチ出身だったこともあり、もっと気軽に本格フレンチを楽しんでいただくことはできないかと考え、「フランス料理を日常に」をコンセプトに、2013年、券売機システムを導入したセルフサービスフレンチ「トキオプラージュ ルナティック」として再スタートを切りました。
人件費を削減し料理の品質を確保
券売機システムを採用したのは、人件費など店舗運営コストを削減しつつ、料理の品質を確保し、本格フレンチを手頃な価格で提供することが目的です。
セルフサービスの流れは、お客様が券売機で料理のチケットを購入すると自動的にオーダーが厨房に転送され、料理ができると厨房スタッフが番号を読み上げて、お客様が料理を取りに行くというもの。昨今はショッピングセンターなどのフードコートでも同様のシステムがあることや、事前にセルフサービスであることを知って来店される方も多く、「本格フレンチなのに券売機」が面白いと、リピートされるお客様も増えています。
新たな「食」の体験の場として
ハードルが高いイメージの本格フレンチですが、手頃な価格にしたことで、想定以上にお客様層の幅が広がりました。若い女性や赤ちゃん連れの主婦層、シニア層も多く、高校生がお小遣いを貯めて友人の誕生会を開いたり、小学生や幼稚園児のファーストフレンチの場として活用されたり、新しい「食」の体験の場にもなっています。お客様ご自身が、普段着で賑やかにフレンチを楽しむ当店と、洗練されたサービスを受けながら美食を味わう高級フレンチレストランとを、上手に使い分けていらっしゃるのではないでしょうか。
飲食業界の人手不足問題は、今後ますます深刻化していくことが予想され、食事のスタイルも「中食」や「お一人様」、みんなで食べる「みん食」など多様化しています。当店は一例にすぎませんが、人手不足という課題を新たな顧客体験に変えることで、「外食は楽しい」と感じていただければ、外食産業の裾野も広がるのではないでしょうか。今後もお客様が美味しい食事をさまざまな形で楽しめるサービスが続々と出てくることを期待しています。


