災害大国ニッポンの防災ビジネス

CASE❷ 杉田エース株式会社

「ローリングストック」を提唱するいつでも食べられる保存食ブランド

「備蓄食から、おいしく食べる長期保存食へ。」をコンセプトに、杉田エース株式会社が2014年に立ち上げた長期保存食ブランド「イザメシ(IZAMESHI)」。豊富なラインナップと美味しさ、スタイリッシュなパッケージデザインなどを通して、日常的に消費しながら備蓄する「ローリングストック」を提案する同ブランドについて取材した。

杉田エース株式会社 営業企画グループ 加藤伶佳氏

加藤伶佳

杉田エース株式会社 営業企画グループ

災害時にも家庭の味を提供したい

建築金物の専門商社である杉田エースが「イザメシ」を立ち上げたきっかけは、東日本大震災でした。以前から当社では、ビニールシートやロープなどを取り扱っていたのですが、震災後にこれらの需要が急増したときに、各メーカーの在庫がなくなり、ホームセンターなどに防災商品を供給できなくなったことにもどかしさを感じていました。また、仙台にあった流通センターが被災したこともあり、避難所にお邪魔する機会もあったのですが、食事面での供給不足や、食べられるものが限られている状況を目の当たりにしました。こうした経験を通して、私たち自身が、災害時などにも家庭の味を提供できる保存食メーカーとなることを決意し、およそ1年半の開発期間を経て、ハンバーグや肉じゃがなど家庭の味を再現したメニューを豊富に取り揃えた長期保存食ブランド「イザメシ」が生まれました。

備蓄食のイメージを覆す多彩な商品群

備蓄食や非常食にあまり良いイメージを持たれていない方も少なくないことから、これらの言葉は使わず、「おいしく食べる長期保存食」をコンセプトに掲げてきました。「イザメシ」という商品名が、災害時だけではなく、突然の来客や病気など日常における「いざ」も意味しているように、私たちは日常的に消費しながら災害時に備える「ローリングストック」を推奨しており、パッケージにおいても、商品の美味しさが伝わるようなデザインにこだわっています。

現在は、化学調味料を使わず、素材本来の味にこだわった本格シリーズ「イザメシ・デリ」や、水・手間・時間が不要で開けてすぐ食べられる「イザメシ・カン」などへと商品ラインナップが広がっています。また、さまざまな用途やシーンを想定したセット商品を用意したところ、オフィス用の備蓄やギフトとしてのニーズも高まっています。

長期保存食との接点をつくるカフェ

2019年12月には、新宿マルイ本館にショップ&カフェ「イザメシテーブル(IZAMESHI Table)」をオープンさせました。「イザメシ」の商品をベースに、多彩なアレンジを加えたメニューを通して、「ローリングストック」の提案を推進することを目指しており、実際にご来店いただいたことで長期保存食へのイメージが変わり、お土産として商品を購入されるお客様もいらっしゃいます。現在、「イザメシ」の主なお客様は40~50代なのですが、この「イザメシテーブル」やSNSなどを通じて、20~30代の若い世代にも積極的に発信していきたいと考えています。

今後も「イザメシ」では商品ラインナップを拡充していくとともに、少しずつ化学調味料不使用の商品比率を高めていくことを検討しています。また、「イザメシテーブル」のような場を増やしていくことも視野に入れており、より多くのお客様に長期保存食や「ローリングストック」の考え方を身近に感じていただける機会をつくっていきたいと考えています。

「ローリングストック」
「イザメシ」は豊富なラインナップで、消費しながら災害時に備える「ローリングストック」の提案をしている。
多彩なメニュー
日常の食卓でも惣菜として利用できる多彩なメニューが揃う。長期保存食のイメージが変わったと好評だ。
ショップ&カフェ「イザメシテーブル」
新宿マルイ本館のショップ&カフェ「イザメシテーブル」。多彩なアレンジメニューは若い世代にも人気だ。