災害大国ニッポンの防災ビジネス
CASE❸ 株式会社ファンクション
女性のニーズにきめ細かに応える非常時用備蓄下着セット
災害などの緊急時に、避難所などでも洗濯や乾燥、着替えができる女性用下着のセット商品として、2014年に製品化された株式会社ファンクションの「レスキューランドリー」シリーズ。災害時に直面する女性ならではの悩みに目を向け、そのニーズにきめ細かに応える下着セットの展開で各方面から注目を集めている同社に、開発の経緯や取り組みについて伺った。

本間麻衣氏
株式会社ファンクション 代表取締役
社会貢献を目指して事業を転換
もともと私は、当時小学5年生だった娘から、ブラジャーが欲しいと言われたことをきっかけに、子どもから大人までに対応するシックな下着ブランドを立ち上げることを目的に起業しました。およそ1年間展開したそのブランドは、海外の百貨店との取り引きが決まるなど順調だったのですが、社会貢献とビジネスを両立させたいという思いが強くなり、事業を転換することにしました。そして、災害時に避難所などで洗濯ができず、女性が下着を替えられないという課題があることを知り、それを解決する商品の開発に着手しました。当初は下着の缶詰をつくろうと考えたのですが、それでは避難所にゴミが増えてしまうことにもなるため、バッグが簡易洗濯機となり、少量の水と洗剤で洗え、何度も繰り返し使うことができる天然素材の下着セットという企画に切り替えて、2014年に「レスキューランジェリー」のファーストモデルが完成しました。
随所に見られる女性目線による配慮
現在、下着とセットの「レスキューランジェリー」だけでなく、「レスキューランドリー」シリーズとしてバッグや洗剤のみでも販売しています。ファーストモデル発表後に訪れた仙台で伺った商品レビューなどを参考に、バッグにマチをつくり立体的に仕上げることで、洗濯した下着を人目にふれずに乾燥できる現在の形になりました。また、セットの布ナプキンもあえてホックをつけず、乾燥時にもハンカチに見えるように配慮し、怪我をしたときなどに当て布としても利用できるデザインになっています。
昨今の防災意識の高まりとともに、徐々に認知度は高まっていますが、避難所生活を経験された方や防災意識が高い方などからは高く評価していただいている一方で、水や毛布、食料などに比べ、洗濯や下着は表に見えにくい課題であるため、その必要性を想像しにくいところがあることも事実です。だからこそ、被災地への無償提供や防災イベントなどを通して、商品の使い方や必要性を地道に訴えていくことが大切だと思っています。
国外需要の掘り起こしも視野に取り組む
すでにアウトドアショップでの取り扱いも決まっており、今後はより幅広いニーズに応えられるように、ブランドやメーカーとのコラボレーションも見据えながら、素材やカラーなどのバリエーションを広げていきたいと思っています。また、なかなか下着が洗えない環境にある途上国や難民キャンプ、あるいは女性の下着を屋外に干しにくいイスラム圏の国々など海外での需要も見込んでおり、災害時以外の利用を拡大させていくことが今後のビジネスのカギになるはずです。
現在は、竹からつくった繊維を用いた生理用ナプキンの開発にも取り組んでいます。今後も社名の由来にもなっている女性が一つの機能(ファンクション)として活躍できる世の中を実現できるような商品の提案を続けていきたいと考えています。


