災害大国ニッポンの防災ビジネス

CASE❹ 株式会社LA・PITA

徹底したユーザー視点で本当に役立つ防災セットを提供

防災グッズのトップメーカーとして、個人ユーザーから法人まで幅広い層に支持されている株式会社LA・PITA(ラピタ)。避難所の課題やユーザーの声を商品開発に反映させ、既存の防災グッズにはないデザイン性と機能性を両立させることで国内トップレベルのシェアを獲得している同社に、開発の舞台裏や今後の展望などを聞いた。

株式会社LA・PITA 代表取締役社長 澤 直樹氏

澤 直樹

株式会社LA・PITA 代表取締役社長

被災地で感じた防災セットの課題

創業のきっかけは、当時会社員だった私が、東日本大震災の直後に転勤となった仙台で参加したボランティアでした。現地で被災者の方たちと接する中で、防災セットを備えていたにもかかわらず、押し入れなどから取り出せなかったというお話を聞くうちに防災用品の改善の必要性を強く感じ、起業を決意しました。

ノウハウもネットワークも資金もないベンチャーの苦しみを味わいながら、およそ2年かけて当社初の商品「ものすごい防災セット」シリーズをリリースしました。避難所で伺った被災者の声をベースに開発した「防災用エアーマット」や着替えなどに使える「目かくしポンチョ」をはじめ、既存の防災用品にはなかった内容が功を奏し、リリース後まもなく品切れになるほどの反響がありました。その後も、災害時にすぐに持ち出せるように、リビングや玄関などに日頃から置いておけるデザイン性の高さにこだわった防災セット「ラピタ(LA・PITA)」シリーズをリリースするなどラインナップを広げていきました。

企業からの多様なニーズにも対応

当初から企業のお客様のご要望も多かったため、ほどなく法人営業部を立ち上げました。企業においては備蓄スペースの確保が大きな課題となっていることから、椅子掛け用防災セット「izacoco(イザココ)」シリーズなどを展開しており、フリーデスク制を導入されている企業様などにも好評です。

ロゴ入りからオリジナルのデザインまで、ご要望に合わせたOEM生産も行っています。中には、プロ野球球団のロゴ入り防災セット、各戸に防災倉庫が設置されたマンション向けのオリジナル商品、防災グッズの定期点検がパックになった警備会社向けの企画など、防災を切り口にファンやユーザーとの関係性を深めたり、商品に付加価値を持たせたりすることを視野に入れた、企業様からのご提案なども少なくありません。

防災グッズを日常から使えるアイテムに

ここ数年、防災意識の高まりを肌で感じていますが、まだすべての家庭が防災グッズを備えているわけではありません。防災というのは保険と同じようなものだと思いますし、今後、より多くの方々に防災の備えをしていただくために事業を続けていくことが私たちの使命だと考えています。地震や台風など大きな災害が起きた直後に注文が殺到するというのが現状ですが、災害の有無にかかわらず安定的に売り上げをつくっていける企業となることが私たちのこれからの課題です。本来防災グッズは、災害が起きてから用意するものではないですし、今後は「日常で使える防災グッズ」がキーワードになると考え、防災機能を持ち、日頃から身につけられるようなアイテムなどの企画を進めています。

最終的な目標は、防災というキーワードが出たときにすぐに思い浮かべていただけるメーカーになることです。そのためにも、より魅力的でお求めやすい商品を開発していきたいと考えています。

「ものすごい防災セット」シリーズ
「ものすごい防災セット」シリーズは、背負う・持つ・転がすの3WAYバッグによって、状況に合わせた避難が可能だ。
椅子掛け用防災セット「izacoco」シリーズと「A4エマージェンシーケース」
椅子掛け用防災セット「izacoco」シリーズ(左)と、オフィスの書類棚などに収まる「A4エマージェンシーケース」(右)。