Managemant Eye
サステナブルな企業を目指して

小林文彦
伊藤忠商事株式会社は、2020年4月1日付けでグループ企業理念を「三方よし」に改訂した。また、コーポレートメッセージである「ひとりの商人、無数の使命」を改めてグループ企業行動指針として位置付けた。その真意について、コーポレートブランドを統括する小林文彦代表取締役 専務執行役員CAOに伺った。
企業理念改訂の経緯についてお聞かせください。
これまでの企業理念「豊かさを担う責任」もグループ内で浸透してはいたのですが、「5 Values」や「5 self-tests」など、それに付随した概念が複数存在し、やや複雑でわかりにくいものになっていました。昨今の急激な経営環境の変化に対応し、更なる成長を果たすためには、これらの理念体系を整理し、よりわかりやすい言葉でシンプルに力強く響くメッセージを発信することで、グループ全体の一体感を醸成することが重要であるとの考えに至ったものです。
新たな企業理念「三方よし」は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」として知られています。
この言葉は近江商人の研究において、当社の創業者である初代伊藤忠兵衛による座右の銘「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」という商いの精神を起源とするものとされています。これを伊藤忠商事グループの企業理念にすることは、正統な継承者としての使命であると考えました。また、この理念を実現するため、これまでコーポレートメッセージであった「ひとりの商人、無数の使命」をグループ行動指針に格上げしました。これは、社員一人ひとりがお客様の目線に立ち、自らの使命を自発的に考え行動に移すことで、それぞれの責任を全うできるというもので、伊藤忠らしい表現です。
なぜ、このタイミングでの改訂なのでしょうか。
昨今、経営指標として欠かせないのがSDGsで、これは世界的な潮流となっています。これから企業が成長するには、サステナビリティは必須条件です。企業は売り手と買い手に加えて「世間」にも貢献していかなくてはなりません。「三方よし」は現代のサステナビリティの源流に通じる概念であり、サステナブルな企業であることをグループ内外へ発信するという意味でも、今が最適なタイミングだと考えました。
「三方よし」は英文では「Sampo-yoshi」とローマ字表記されています。
これまで「三方よし」は「good for the seller, good for the buyer, good for society」などと英訳してきましたが、SDGsの文脈の中で「三方」には人権や環境を含む広くて深い意味が内包されます。そこで、あえて「Sampo-yoshi」と日本語のローマ字表記としました。これが、「MOTTAINAI」のような、日本発のSDGs理念を語る世界共通語になることを密かに願っています。
伊藤忠商事は、今年で創業162年目に入りました。長きにわたって当社の持続的成長の礎となってきた「三方よし」の理念を誇りとし、これからも企業価値向上と社会課題の解決を図り、世間とともに生きる持続可能な企業を目指していきたいと思います。
