新40代メンズ市場の今を視る

—座談会—

[出席者]
*社名50音順
大塚製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業部 コスメディクス事業部門 統括部長伊藤徹也氏
株式会社タニタ食堂 取締役 営業本部長浅尾祐輔氏
株式会社ユナイテッドアローズ 取締役 常務執行役員 第一事業本部 本部長松崎善則氏
[司 会]伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長小原直花氏

ポストバブルの団塊ジュニア世代も40代後半を迎え、アラフィフ目前。20代にセレクトショップやアウトドアブームを牽引し、自分らしいライフスタイルへのこだわりを持つ新40代。「地味で堅実」という世代特徴を持ちながらも、バブル世代に憧れている一面もあり、年齢よりも若々しくあり続けたいと願う一方で、どこか未成熟さも感じている彼らは「従来の40代」とは異なる像を目指しているともいわれている。未婚男性もこの年代から増え、自分ための消費を行いやすい経済状況にある人も少なくない。今号では40代前後の男性とも深い関わりを持つビジネスを展開する各社担当者の座談会を通して、新40代メンズ市場攻略のヒントを探る。

新40代男性の「美容と健康」「食」「ファッション」

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長 小原直花氏(以下、小原):私が所属する伊藤忠ファッションシステム(ifs)のナレッジ開発室は、生活者の価値観を世代ごとに調査もしているのですが、現在の40代は等身大や自分らしさを大切にし、好きなものを掘り下げていく傾向が強い世代です。本日は、この新40代男性の消費をいかに捉え、ビジネスを展開されているのかについて皆さんにお話しいただければと思っています。まずは自己紹介を兼ねて、各社の事業についてご紹介をお願いします。

大塚製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業部 コスメディクス事業部門 統括部長 伊藤徹也氏(以下、伊藤):大塚製薬は、医療用医薬品の開発を行う医療関連事業と、日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を両輪とする企業です。現在私が所属するニュートラシューティカルズ事業部では、身体の内部からだけではなく外部から、つまり皮膚も日々の健康維持・増進に欠かせないものと考え、1990年にはスキンケア専門の研究所を立ち上げました。そして、コスメディクス事業部門は、化粧品と医薬品を掛け合わせた独自の「健粧品(コスメディクス)」という概念のもと、男性用の「ウル・オス」女性用の「インナーシグナル」という2つのスキンケアブランドを展開しています。

株式会社タニタ食堂 取締役 営業本部長 浅尾祐輔氏(以下、浅尾):株式会社タニタの子会社として2014年に設立されたタニタ食堂では、現在「タニタ食堂」と「タニタカフェ」の2つのブランドを展開しています。主に健康意識が高い方が利用する「タニタ食堂」では、低カロリーで栄養価が高い一汁三菜の定食を提供しています。一方の「タニタカフェ」では、おいしさや楽しさを重視したヘルシーメニューを提供しており、幅広い層に健康的な食の体験ができる機会を提供しています。私自身は5年前に入社し、2年前からはカフェ事業を担当しています。最近では直営店の新たな展開に力を入れています。

株式会社ユナイテッドアローズ 取締役 常務執行役員 第一事業本部 本部長 松崎善則氏(以下、松崎):ユナイテッドアローズは、昨年創業30周年を迎えたセレクトショップです。我々は、ファッション感度や趣向の違いによって事業体を分けており、私が担当する第一事業本部では、ファッション感度が高く、強いこだわりを持っているお客様をターゲットにしています。第二事業本部では、ファッション以外のライフスタイル全般に対してバランスよく消費されるお客様をターゲットとし、グループ会社の株式会社コーエンでは、郊外型のショッピングモールなどを中心に出店するブランドが属し、我々が「ニュートレンド」と呼ぶマーケットをターゲットに、さまざまなブランドを展開しています。

小原:新40代男性市場に向けた取り組みについてもお聞かせいただけますか。

伊藤:先ほどご紹介した「ウル・オス」は、40代から50代の男性をメインターゲットにしたスキンケアブランドです。日本人男性でスキンケアを習慣にしている方は全体の2割程度に過ぎないのですが、男性も40代に差し掛かると肌の調子が悪くなっていくことを実感する方が多くなります。「ウル・オス」では、男性専用に開発したスキンケア製品を提供することで、ミドルエイジ層における男性の肌の健康をサポートすることをミッションにしています。

浅尾:「タニタ食堂」は40~60代の女性、「タニタカフェ」は20~30代の女性がメインターゲットになるのですが、2018年にオープンした「タニタカフェ有楽町店」では、予想以上に男性お一人でご来店されるケースが見受けられました。そのため、これからオープンする店舗では男性のお客様でも入りやすい内装にしたり、オフィス環境でも召し上がれるお弁当やコーヒーの提供の仕方を検討したりするなど、男性でも利用しやすい環境づくりに力を入れています。

松崎:先にお話ししたように、我々は世代で事業を分けているわけではないのですが、ミドルエイジ層の男性のお客様においては、私たちが扱っているインポートを中心としたスキンケア商品の売り上げが、少しずつですが増えてきています。また、我々はランニングウェアのレーベルも展開しているのですが、スポーツブランドとは一線を画したファッション性の高いウェアを着て走りたいというニーズも40代の男性には多いように感じています。

「新40代メンズ市場の今を視る」出席者近影
左から伊藤徹也氏、浅尾祐輔氏、松崎善則氏、小原直花氏
世代とファッション