令和時代のサービス最前線

—Part2—

CASE❷ 株式会社コークッキング

「食」の持続可能性を見据え、納得感のある「食」体験を提供する

2018年にスタートした「TABETE(タベテ)」は、飲食店や惣菜店などで発生した余剰と消費者をマッチングする国内最大級のフードシェアリングサービスだ。フードロスをはじめとした「食」の課題と向き合い、持続可能な未来を見据えたサービスを展開することで、生活者に納得感がある「食」の体験を提供している。同サービスを展開する株式会社コークッキング 代表取締役社長 川越一磨氏に取材した。

株式会社コークッキング 代表取締役社長 川越一磨氏

川越一磨

株式会社コークッキング 代表取締役社長

飲食店の余剰在庫をレスキューする

コークッキングは、クッキングをツールにさまざまな課題解決をしていくことを掲げ、企業向けの研修やワークショップなどの事業からスタートした企業です。私自身が飲食業界で働き、毎日のように食べ物を廃棄していた経験があったことから、フードロス問題に関する非営利の啓蒙活動にも取り組むようになり、その延長で「TABETE」を立ち上げることになりました。

「TABETE」は、飲食店から出品された、閉店時間や賞味期限などの理由で捨てざるを得ない食事を、店頭価格と同等かより安い価格でテイクアウトできるサービスです。現在、首都圏を中心に登録店舗数は1,000店舗、ユーザー数はおよそ28万人ですが、昨今のフードロス問題への注目の高まりを受け、全国の自治体と連携協定を結ぶケースも増えています。

コロナ禍により急拡大するニーズ

当初は、余り物であっても「安易な安売りはしたくない」という飲食店も少なくなかったのですが、最近は前向きにお話を聞いてくださるお店が多く、特に新型コロナウイルスの影響を受けて出品数は急増しました。また、特例的に対象商品やエリアなどを広げた、「お店もレスキュー!プロジェクト」を4月に開始したところ、1カ月で400件以上の問い合わせがありました。

一方、ユーザーの反応はサービス開始当初から良好で、フードロスに対する問題意識を持つ方たちを中心に共感をいただいています。廃棄されるはずだった食材を救いながら、お得に食事ができるという体験が広く受け入れられているのだと思いますし、コロナ禍で苦しむ近所のお店を応援するために利用いただくケースも増えており、これまで希薄だった飲食店を取り巻くコミュニティ意識が呼び覚まされているように感じています。

「食」の二次流通市場の確立を目指す

最近は、明確に食べたいものがない日に、コンビニやスーパーへ足を運ぶ前に「TABETE」をチェックするというユーザー行動も目立ち、食事における新しい選択肢になりつつあるように感じています。「食」の選択肢が年々多様化し、自分はなぜそれを食べるのか、何を美味しいと感じるのかということなど、「食」の消費におけるストーリーや納得感がますます重要になる中で、当社としても一食一食を大切にするという消費行動を広めていきたいと考えています。

フードロスの問題に関しても、生活者が起こせるアクションがたくさんある中で、「TABETE」の利用者の拡大により、より多くの人にメッセージとして届けていくことが我々のミッションです。また、「JR東日本スタートアッププログラム2019」の一環として取り組んでいる、JR東京駅のエキナカ全体のフードロス削減を目指す「レスキューデリ」の実証実験のように、さまざまな施設とも連携しながら、ゆくゆくはサプライチェーン全体のフードロス削減に取り組み、食品の二次流通市場を確立していきたいと考えています。

「TABETE」のスマートフォン専用アプリ
スマートフォンに専用アプリをインストールすれば、手軽に「TABETE」のサービスを利用することができる。
JR東日本スタートアップ株式会社が株式会社鉄道会館、コークッキングと協業してフードロス削減の実証実験を実施
JR東日本スタートアップ株式会社は、フードロス削減を目指して株式会社鉄道会館、コークッキングと協業し、実証実験を実施した。