ファッションと出会う新しい機会を創出する
CASE❸ スタイラー株式会社
デジタルテクノロジーが更新するフェイス・トゥ・フェイスの購買体験
スタイラー株式会社が運営する「FACY(フェイシー)」は、ユーザーが欲しいアイテムのイメージを投稿することで、各ショップの店員からニーズに沿った商品が提案され、アプリ上で質問、取り置き、購入などができるマーケットプレイスだ。オンライン・オフラインを問わず、最適な購買体験を届ける「ニューリテール・プラットフォーム」を掲げる同社の代表取締役CEO 小関 翼氏に話を聞いた。
店頭での購買体験をデジタル化
我々が運営する「FACY」は、ユーザーとショップ店員をオンラインでつなぐアプリです。「FACY」が取り扱うアパレルをはじめ、衣食住に関わる商材は選択肢が膨大で、個々人によって正解も異なるため、能動的な意思決定の連続であるECとは相性が悪く、アパレル業界のEC比率は1~2割にとどまっています。ライフスタイル領域においては、ニーズに合わせて選択肢が絞り込まれていた方が消費者は選びやすくなりますし、アパレル業界でそれを担ってきたのはメディアや店頭の接客などでした。
こうしたフェイス・トゥ・フェイスの購買体験をデジタル化している「FACY」には、現在およそ900店舗が登録しています。また、アプリへの投稿に見られるユーザーのニーズに合わせた記事を配信するメディアも運営しており、月間およそ150万人のユーザーがアプリを通じてコミュニケーションやショッピングを行っています。
コロナ禍で見えてきた店舗の課題
実店舗の売上比が高いアパレル業界は、新型コロナウイルスによる外出自粛で大きな影響を受けました。店舗の閉鎖を余儀なくされた多くのブランドやショップは、在庫をECに集約する形となりましたが、それだけで実店舗での売上を賄うことは不可能だったはずです。オフラインの流通がストップしたときに、いかに在庫を消化するのかということは重要な課題であり、そこでポイントになるのが店舗のデジタル化です。
コロナ禍においては、店舗を流通やコミュニケーションの拠点と位置づけ、店頭スタッフらがオンラインを通じて販売を継続できる体制の構築を検討するアパレル企業が増え、我々も「FACY」経由で購入された商品の送料や手数料をゼロにする施策を行いました。
進み始めたオンライン・オフラインの融合
今回のコロナ禍によって、オンラインとオフラインの間には境界があり、どちらかが他方をすべて代替することはできないことが明確になったと感じています。これは買い物にもいえることで、小売業におけるデジタルトランスフォーメーションを推進し、オンライン・オフラインが融合した体験を提供していくOMO(Online Merges with Offline)やニューリテールの流れは加速するはずです。
今後は、消費者の来店前からオンライン上でコミュニケーションを取ることが必須となり、それが来店時の売上単価にも影響を与えることになるのではないでしょうか。街中における消費者の買い回り行動にも変化が生まれることが予想される中、「FACY」では、特定のポイントから半径3km圏内の店舗やアイテムの情報にすぐにアプローチでき、自分のニーズに合ったアイテムを探せる機能を追加する予定です。半径3km圏内でベストな買い物体験を提供するアプリに生まれ変わる「FACY」では、今後コスメや家具、ビューティーサロンなど、より幅広い商材を扱っていきたいと考えています。