ファッションと出会う新しい機会を創出する

CASE❹ 株式会社SPRING OF FASHION

試着に新たな体験価値を与え実店舗の活性化に貢献する

2019年11月にスタートした「KITEKU(キテク)」は、店舗で販売されている洋服を試着した状態で最大120分間まで外出でき、購入前の商品をSNSに投稿できるサービスだ。試着という実店舗でしかできない体験に新たな価値を与えるユニークなビジネスを展開する株式会社SPRING OF FASHIONの代表取締役 保坂忠伸氏に、サービスの立ち上げや事業にかける想いを聞いた。

株式会社SPRING OF FASHION 代表取締役 保坂忠伸氏

保坂忠伸

株式会社SPRING OF FASHION 代表取締役

試着の概念を覆すサービス

「KITEKU」は、以前に販売の仕事をしていた私自身の「店頭にある洋服は袖を通してもらわなければ意味がない」という経験から生まれたサービスです。本来、試着は購入を前提にした行為ですが、それを「洋服を着て写真を撮る」という体験に変えることで、お客様の試着のハードルが下がり、写真がSNSに投稿されることによって、マーケティングを強化したいという店舗側のニーズともマッチすると考えました。

「KITEKU」では、ウェブサイトを通じて提携ブランドの商品を選び、電話番号認証をした後に発行されるQRコードを店頭で提示するだけで、洋服を試着して外出することが可能になります。通常のレンタルサービスは、一次流通のビジネスを阻害するものと見られる向きもありますが、我々はあくまでも試着をきっかけとした実店舗の活性化を目的にしているため、レンタル時間は最大120分間に制限しています。

店舗とユーザーの双方にメリット

現在、20代女性を中心に2,000人ほどのユーザーが登録しており、Instagramの総フォロワー数は延べ100万人を突破しています。SNSに投稿されたコンテンツが拡散されると小さなインセンティブも得られますが、多くのユーザーのインサイトとしてあるのは、「Instagramに投稿するコンテンツの不足」で、人気ブランドの最新の洋服を着て撮影できるという点が高く評価されています。

「KITEKU」ユーザーのSNSへの投稿の総リーチ数から換算する広告の費用対効果は、月額利用料金のおよそ40倍になっています。また、商品をレンタルするために初めてその店舗を訪れるユーザーも多く、さらに試着したユーザーの約10%は購入に至るというデータも出ており、提携している店舗側にも多くのメリットが提供できています。

実店舗を情報発信の場に変える

私たちはサービス開始当初から、「実店舗のメディア化」をミッションに掲げ、お店を情報発信の場にするとともに、試着をすることで気分が高まるという店舗ならではの体験価値を最大化したいと考えてきました。新型コロナウイルスの影響によって、アパレル各社が実店舗の新しい活用法を考えていくことが余儀なくされている中で、私たちもそれをサポートしていくために、各店舗が「KITEKU」を3カ月間無料でトライアルできるキャンペーンを7月末まで受け付けています。

7月には、Instagramの投稿を通じて、ユーザーがソーシャル販売員のように各ブランドの洋服を販売し、報酬が得られる新しいECサイトのベータ版を開始予定です。創業当初から、我々は若手のファッションクリエーターらのエンパワーメントをテーマにさまざまな事業にトライしてきましたが、「KITEKU」においてもユーザーをエンパワーするとともに、ファッションならではの体験価値を提供していくことで、業界全体を活性化させたいと考えています。

ユーザーが店内の洋服を着て最大120分間外出できるサービス「KITEKU」
「KITEKU」は、ユーザーが無料で店内にある洋服を着て、最大120分間外出できるサービス。ユーザーはSNSの投稿を通じて着用した洋服を紹介でき、Instagramの投稿で「1いいね」につき「1円」を受け取ることも可能だ。