地方発! “あえて”の魅力

CASE❸ 「THE HINOKI」

あらゆる負荷を下げ地域を循環させるミニマルな服づくり

ファッションブランド「COSMIC WONDER(コズミックワンダー)」でパタンナーを務めていた檜 宗憲氏と檜 絵里氏が、2015年に立ち上げたユニセックスブランド「THE HINOKI(ザ・ヒノキ)」。オーガニックコットン、リネン、ウールなどの天然素材を用い、地域のつくり手や職人とも連携しながら、鳥取県の自然豊かな環境の中でものづくりを行い、全国にファンを増やしている。同ブランドの代表 檜 宗憲氏に話を聞いた。

「THE HINOKI」代表 檜 宗憲氏

檜 宗憲

「THE HINOKI」代表

ローカルに根ざした生産活動

私は、「COSMIC WONDER」で7年ほど働いた後、30歳を目前に独立し、パートナーの出身地である鳥取で自分たちのブランドをスタートさせました。当時から地方で仕事をしている人たちは多くいましたし、インターネットや物流の環境も整っていたため、地方を拠点にすることへの不安はありませんでした。

鳥取という場所に強いこだわりがあったわけではありませんが、当初からローカルの人たちと服づくりをしたいという思いがあり、現在仕事をしている縫製工場などは大半が県内ですし、鳥取の窯元による陶器のボタンを使うなど、地域のつくり手とも積極的に連携しています。自分たちの目が届く範囲でものづくりをしていると、さまざまな場面で直接的な対応ができますし、生産活動をミニマルにしていくことで無駄な廃棄や人的エネルギーの削減などあらゆる負荷を下げることができ、それらをプロダクトの適正な価値に反映できていることも強みになっています。

オーガニックの本質を伝える

「THE HINOKI」では、「有機的な衣服とそれに基づく表現活動」をブランドの指針に掲げ、自然のサイクルに従って栽培・収穫されたオーガニックコットンやリネンなどの天然素材を用いています。また、ベンガラ染めや環境に負荷の少ないボタニカルダイを採用するなど、環境に配慮したものづくりを心がけてきました。

前職では早い段階からオーガニックコットンなどを使っていたこともあり、こうした意識は以前から自分たちには浸透していましたが、ここ数年、誰もがオーガニック素材でつくられた服を簡単に手に取れるようになっているからこそ、時代に応じた発信の仕方が必要だと感じています。オーガニックやサステナビリティという言葉が独り歩きしないように、使用している素材の成り立ちや生産工程に対する認識を深め、その本質をしっかりお客様に伝えていきたいと考えています。

オンラインを通じた発信の強化

現在は年に2回、東京で展示会を行っており、シーズンごとに卸先の店頭でのポップアップイベントも開催しています。設立当初に比べると型数や生産数に加え、協力いただける工場も増えており、まだまだ微力ではありますが、携わっていただいている方々に少しずつ還元していきたいと考えています。

ミニマルな体制で服づくりをしていることから、コロナ禍においても生産面に大きな影響はありませんでしたが、今後、お客様との直接的なつながりを持つ場として、以前より計画していたECの環境整備に力を入れたいと考えています。今後は画面を通して質感やデザインの良さを感じていただけるように、クオリティのさらなる向上が必要だと感じています。また、クリエイターと協働し、シーズンビジュアルや映像でブランドの世界観を打ち出し、ECサイトやSNSなどを通じて国内外にアピールしていきたいと考えています。

シーズンビジュアル
シーズンビジュアルは、毎回写真家とともに独特の世界観を表現。縫製工場をはじめ、地域のつながりの中でものづくりを進めている。
「THE HINOKI」のInstagram
Instagramでも、ブランドの世界観が伝わるビジュアルが紹介されている。