地方発! “あえて”の魅力

CASE❹ 株式会社セキサカ

地域の中と外をつなぎものづくりの町に刺激を与えるセレクトショップ

ものづくりの町として知られる福井県鯖江市で代々漆器業を営み、2015年には国内外のデザイン性の高い雑貨、器、洋服、家具などを販売するセレクトショップ「ataW(アタウ)」をオープンした株式会社セキサカ。近年この地で急増している移住者や観光客も多く足を運ぶ同店の運営に加え、オリジナルプロダクト「SEKISAKA(セキサカ)」を展開するなど、家業の改革を推進する代表の関坂達弘氏を取材した。

株式会社セキサカ 代表 関坂達弘氏

関坂達弘

株式会社セキサカ 代表

デザインとものづくりをつなぐ場所

セキサカの前身、関坂与平漆器店は、1701年に木製漆器製造で創業し、祖父の代に業務用向けプラスチック製食器の企画・製造に事業の軸をシフトしました。私自身は18歳で福井を離れ、オランダでデザインを学んだ後、およそ16年ぶりに実家に戻ったのですが、人口4,000人ほどの小さな町に移住者が急増しており、漆器や眼鏡、刃物、和紙などの産業に着目した若い世代の人たちがこれらを新たな視点で紹介したり、自らが職人として働くようなケースが見られるようになっていました。

地元の状況が大きく変わり始めていることに刺激を受け、自分が学んできたデザインと地域のものづくりの技術、あるいは地域の外と中の人をつなぐということを意識し、両親が営んでいた小売店をリニューアルしたのが「ataW」です。また、外部のデザイナーと協働して商品開発を行うオリジナルプロダクト「SEKISAKA」も展開するようになりました。

観光活性化で県外の来店者が増加

「ataW」では、有名な作家や売れ筋の商品を扱うのではなく、面白いコンセプトやアイデア、実験的な表現を通して、新たな視点や考え方を与えてくれるようなプロダクトを中心にセレクトしています。その背景には、デザインを学んできた自分自身が刺激を得られることに加え、ユニークなプロダクトやそのつくり手が地元の職人さんたちの技術と出会うことによって何かが生まれるのではないかという期待もありました。地域の中と外がつながるハブのような場所になることを意識し、作家の展覧会なども定期的に開催してきました。

開店当初は、移住してきた同世代の人たちが足を運んでくれるような場所にしたいと考えていたのですが、この5年ほどで工房見学やものづくり体験など観光目的でこの地域を訪れる人たちも増えており、現在はお客様の約3割が県外の方になっています。

コロナ禍で生きた独自の審美眼

これまでの売上構成比は実店舗とECがおよそ2:1でしたが、新型コロナウイルスの影響で、現在は両者が半々くらいになっています。「ataW」で扱っている商品の中には、他のECサイトでは買えないようなものも少なからずあったのですが、それがコロナ禍ではプラスに働き、実店舗の休業期間を除けば、お店全体の売上が大きく下がることはありませんでした。実店舗で購入してほしいという思いももちろんありますが、昨今の状況を受け、今後はEC需要をより広げていきたいと考えています。

もともと「ataW」では、地域発のプロダクトも一定数セレクトしていたのですが、近所にこれらを中心に扱うお店ができたこともあり、地域性はあまり意識しないようになりました。現在では外部のデザイナーと職人をマッチングさせることが我々の役割だと考えており、定期的に開催している展覧会「ataWlone(アタウローネ)」や、「SEKISAKA」ブランドの商品拡充などにより力を入れていくつもりです。

セレクトショップ「ataW」
セレクトショップ「ataW」では、定期的に作家の展覧会も開かれ、開放的な空間に作品が気持ちよく並ぶ。
オリジナルプロダクト「SEKISAKA」
外部のデザイナーと協働したオリジナルプロダクト「SEKISAKA」も展開している。