Managemant Eye

「ありたい姿」を追求して永く生き続ける会社に

「商いを生む現場の声を拾い、生かしていきたい」

株式会社 再春館製薬所 代表取締役社長 西川正明氏
株式会社 再春館製薬所 代表取締役社長
西川正明

今回は、佐竹食品株式会社・株式会社U&Sの梅原一嘉代表取締役社長から、バトンが渡されました。

梅原さんとは、ある経営者の集まりでご一緒しています。この集まりはとてもオープンで、経営者同士が悩み事を相談し合うこともできるので、梅原さんとも忌憚のない意見を交換したり、刺激やヒントをいただいたりしながら充実した時間を共有しています。

御社は通信販売の草分け的存在で、2004年の社長就任前に「ありたい姿」という理念を掲げられました。

弊社は1974年に発売した化粧品「ドモホルンリンクル」と漢方薬を自社工場で製造し、通信販売により直接お客様にお届けしています。現会長の母から、経営を受け継いだのがちょうど30歳のとき。就任はその2年前に決まっていたため、どんな会社にしていくべきかを社員の意見を聞きながら必死で考えました。その際、「本当に大事にするべきことは何か」を全社で一致させることが必要だと強く感じ、それが「ありたい姿」という理念になったのです。「決して大きな会社になりたいのではない。お客様に喜んでいただくこと。それにより得られる売上を“喜び”とする社員とともに成長を続け、永く生き残り続ける会社にしたい。その目標に向かって心を合わせて進んでいこう」というもので、その想いは今も変わっていません。

コールセンターで電話応対する方を「お客様プリーザー」と呼んでいますね。

弊社は名称や言葉をとても大事にしています。例えば、工場について言えば、お客様に安心して商品をお使いいただくためにより丁寧に、必要なことには惜しみなく手をかけ、心を込める大事な部門ですので、化学的な工場を想起させないよう「薬彩工園」と呼び、会社見学では、会社のありのままの姿を見ていただきたくて、お客様に見学していただく通路を「ありのままの道」と名付けました。これは名称に込められた想いを大切にしたいからで、いわゆるオペレーターも単にお客様のご注文をお受けするだけではない、その役割を適切に表現したいと考え、社内で名称を募集しました。その中から、現場の最前線で「お客様に喜んでいただく」という意味で「お客様プリーザー」と呼ぶことにしたのです。

「お客様満足室」や「お客様感動推進事業部」という独自の部署もあります。

私が入社した1993年に、弊社は当時時点での過去最高の売上を記録したにもかかわらず、お客様からクレームや返品が大量に寄せられるという苦い経験をしました。これを機に、こちらから営業のお電話を差し上げるよりも、いただいたお電話に丁寧に応対することに重点を置くことにシフトし、同時に「お客様満足室」も設置。お客様からのお叱りのお声を徹底的に洗い出し、それに対してしっかりと教育を行うといった「TM(テレマーケティング)改革」を始めたのです。今でも、すべての社員が「お客様満足室の一員である」ということを常々話しています。

また、常にお客様第一の会社であり続けるには、お客様と直接つながって商いを生んでいる現場の社員が、経営や管理部門に対等にものが言えることが必要です。常にそうあり続けたいという想いからつくったのが「お客様感動推進事業部」という組織です。この名称も、実際にお客様業務に携わっている現場の女性社員の発案から生まれました。ここを核として現場からの発想で物事が動き始めています。例えばお客様に向けたキャンペーンを打つ際も、上からの指示ではなく、「どうすればお客様に感動していただけるか」について現場で話し合って決めるようになりました。これにより、一人ひとりの「お客様プリーザー」が多くの裁量権を持ち、自分自身で判断することで成長していく、といった流れもできつつあります。

私たちは、単にお客様に商品をお届けして代金をいただくことが商いだとは考えていません。その先にある「これがしたい」「こうでありたい」といったお客様の願いにお応えし続け、その結果として代金を頂戴するのだと考えています。だからこそ、お客様一人ひとりに寄り添い、さまざまなお声を頂戴する丁寧な対応が大切です。一人ひとりに寄り添った商品とサービスを大切にする弊社は、言い換えれば「大きな個人商店」。これからも「ありたい姿」を追求しながら、お客様の喜びで成長し続ける会社を目指していきたいと思います。

熊本本社「再春館ヒルトップ」

熊本にある本社「再春館ヒルトップ」の社内。広大な空間に500名以上の「お客様プリーザー」が並び、西川社長もここで仕事をする。