懐かしくて新しい!? 新「レトロ」ブームの舞台裏

CASE❸ 株式会社バンダイ

一貫したユーザー体験を提供し幅広い世代からの支持を獲得

「携帯型育成玩具」というコンセプトのもと、1996年にリリースされ、社会現象を巻き起こした株式会社バンダイの「たまごっち」。その後も通信機能の搭載、液晶画面のカラー化など、時代とともに進化しながらおよそ25年にわたって人気商品であり続けている。初期から変わらぬ卵型の形状やドット絵風の表現など、今なお残る「レトロ」な要素がファンを惹きつけている同商品の企画担当者を取材した。

株式会社バンダイ ネットワークトイ企画部 安田江利果氏

安田江利果

株式会社バンダイ ネットワークトイ企画部

世代を超えて共有されるイメージ

1996年当時、時代を牽引する存在だった女子高生をターゲットに、キーチェーン型のデジタルペット育成ゲームとして開発された「たまごっち」は、国内はもとより、1997年からは欧米やアジア各国でも販売され、世界的な大ヒット商品となりました。2004年からはメインターゲットを小学生に変え、赤外線通信機能を搭載した新商品によって2度目のブームとなり、2008年からは液晶画面がカラー化され、現在に至っています。

「たまごっち」は、時代に応じてコンテンツや通信手段を進化させてきた一方で、デジタルペットの育成というコンセプトや、卵型に3つボタンという形状は、販売当初から変えていません。そのため、初期のファンから現在の小学生までが商品に対するイメージや楽しみ方に共通の認識を持っていることが「たまごっち」の強みであり、近年は親子2世代でお楽しみいただくケースも増えています。

大人の懐古心を刺激した復刻版

20周年を記念して2017年にリリースした初代「たまごっち」の復刻版には、当時のファンを中心に大きな反響があり、性別を問わず幅広い層にその存在を再認識していただく機会となりました。この他にも、通常の「たまごっち」よりも小ぶりで、初代を彷彿とさせる白黒ドットが特徴的な「たまごっちnano」シリーズが、懐古心をくすぐる商品として20~30代のお客様を中心に支持されています。

カラー版の「たまごっち」においても、フルカラーではありつつも、ドット絵でのキャラクター表現は変えておらず、大人世代のファンを中心に、懐かしさや変わらぬ魅力を感じていただけるポイントとなっています。同時に、こうした「レトロ」な表現を「カワイイ」と捉える若い世代も増えているように感じています。

手間をかけるという体験価値

今、「レトロ」に注目が集まっている背景には、大人世代のノスタルジーに加えて、テクノロジーの進化とともに目まぐるしく時代が変わっていく中で、流されることなく「立ち止まりたい」という若い世代の感覚があるのではないでしょうか。例えば、アナログレコードやフィルムカメラなどに関心を示す若者が多いのも、あえて手間をかける行為に価値や愛着を感じているからだと思いますし、それは手間をかけてデジタルペットを育てるという初期から変わらない「たまごっち」の楽しみ方に通じるものでもあります。

来年が25周年となる「たまごっち」では、こうした「レトロ」というキーワードを一つの切り口として意識するとともに、女子高生を中心に多くのユーザーを抱えている「LINEで発見!! たまごっち」や「鬼滅の刃」、「エヴァンゲリオン」をはじめとする人気作品とのコラボレーションを通じて中高生など新たなファン層を開拓しながら、最先端のデジタルペットのあり方を世に提示していきたいと考えています。

初代の復刻モデル「祝20しゅーねん! たまごっち」
生誕20周年を記念して初代の復刻モデル「祝20しゅーねん! たまごっち」が販売され、話題を呼んだ。
「たまごっち みーつ」のTVCM
「たまごっち みーつ」のTVCMでは、親子で楽しむシーンも紹介。子どもも大人も楽しめる液晶玩具となっている。
ドットで表現されたキャラクター
ドットで表現されたキャラクターたちが、懐かしさを感じさせる。
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