Managemant Eye

変わらぬビジョン「生活者中心の市場創造」

「強みを生かしてコロナ禍を乗り越えたい」

株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO 吉松徹郎氏
株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO
吉松徹郎

リレー形式のこの企画、前回の株式会社再春館製薬所の西川正明代表取締役社長からのご紹介となりました。

西川さんとは、20年以上も前に、お互いがまだ20代の頃に出会いました。なぜか再春館製薬所の社員旅行に参加させていただいたこともあります。具体的なビジネスの話というより、同世代の気心を知る者同士、業界や社会の行方を語り合うことが多いですね。今もそうした機会を楽しみにしています。

1999年の起業当時、「データをビジネスにする」という発想はかなり斬新だったのではないでしょうか。

当社は化粧品に関する業界横断型の消費者情報データベースを構築し、企業のマーケティング活動支援や自社事業に生かすことを志してスタートしました。当時は、1995年に「Windows95」が登場し、1999年には携帯電話でメールや情報検索ができる「iモード」が世に送り出された時代。「これからは明らかに時代が変わる」と確信し、「ユーザーの声が世の中を変えていく」という発想で、インターネットのコスメ情報ポータルサイト「@cosme(アットコスメ)」をオープンしました。まだクチコミサイトというものが世になかった頃なので、ビジネスを理解してもらうこと自体が難しかったですね。

創業時から「生活者中心の市場創造」というビジョンを掲げていますね。

化粧品業界に限らず、これまではメーカーが「売りたいモノ」をつくってきました。私たちが目指しているのは、「生活者がほしいモノ」は何かを見極め、そこを起点にした生活者重視のプラットフォームをつくること。言い換えれば、データは業界全体で共有し、市場競争は個々で行うというものです。データ収集で肝要なのは、商品とユーザーのIDを紐付けることで、それによりプロダクトごとに検討から購買へ、あるいは購買から再検討へといったユーザーの行動をデータベース化することができます。データの中立性も大切で、「クチコミ=レビュー」による集合知は、公平性と確度の高さも保つことができます。

企業の成長に伴って、社員のモチベーションを高めるためにどんなことをされていますか。

お陰様でこの20年で、創業時3人だった社員が1,000人を超えるまでになりました。社員数が増えるに従い、マネジメントルールは変えてきましたが、ビジョンだけは今も変わりません。

コロナ禍では、働き方も含め、さまざまなことが一変しました。リモートワークが当たり前になった今、社内向けのコミュニケーション手段としてYouTubeを利用した発信を一層活発にするようになりました。また、「働くこととは」、「会社の存在意義とは何か」を自分に改めて問いかけるようにもなりました。

たとえば最近、人が最もモチベーションもパフォーマンスも高いのは、ボランティアや副業など、いわゆる「仕事」ではない仕事なんじゃないかと思うんです。それが毎月決まった「給与」をもらうようになると、なぜか途端に義務になり、モチベーションが低下してしまう。副業をしたい人、安定を求める人など、個々人が求める働き方がより多様化していくことが予想される中、私自身も既成概念をリセットして、より柔軟に対応していきたいと考えています。

当社の事業も、戦略的に進めてきた海外進出などを中心に戦略の見直しを迫られています。とはいえ、美容に関わるすべてのモノ・コト・ヒト・場所をつなぐプラットフォームを構築するという当社の目指すところは変わりません。強みを生かし、未来予測が困難な中でいかに成長を促し、リーダーシップを発揮していくのか。

課題はたくさんありますが、それらを乗り越えるための私自身の仕事に、今、とてもわくわくしています。

日本最大のコスメ・美容の総合サイト「@cosme」
「@cosme」は、国内外3万以上のブランド、30万点以上ものコスメの商品データベースと、クチコミ検索機能や新商品情報などを備えた日本最大のコスメ・美容の総合サイトだ。
株式会社アイスタイル社長による社員へのメッセージをYouTubeで配信
コロナ禍により、社員へのメッセージは社長自身の動画を撮影し、YouTubeにより社内限定で発信している。