VUCA時代を生き抜く老舗企業の戦略
CASE❶ 株式会社イトーキ
旺盛な「開拓精神」を抱きオフィスの働き方をアップデート
1890年の創業時より引き継がれてきた「開拓精神」によって、オフィスや設備機器などの分野に数々のイノベーションをもたらしてきた株式会社イトーキ。オフィス家具のパイオニアとして広く知られる同社は、近年、働き方の変革にも積極的に取り組んでおり、コロナ禍においても在宅ワーク用家具が注目を集めている。時代の変化に応じた新たな価値を提供し続けている同社を取材した。

藤本有希氏
株式会社イトーキ パーソナル環境事業統括部
創業以来変わらぬDNA
1890年に伊藤喜商店として創業した当社は、ゼムクリップやホチキスなど海外の先進的な商品の輸入販売に始まり、レジスターを日本向けにカスタマイズして1913年に発売した「ゼニアイキ」(金銭記録出納機)などを通じて自ら製造も行うようになりました。戦後にはオフィス用のスチールデスクの製造を開始し、1960年代には家庭用家具、1970年代以降は物流施設や公共施設などの設備機器にも事業を広げていきました。
1981年には、人間工学に基づいて開発された「バーテブラチェア」が大ヒットするなど、当社の製品は先進性のあるデザインと優れた機能によって常に高い評価を受けてきました。こうした歴史の背景にあるのは、創業者の伊藤喜十郎ゆずりの「開拓精神」であるといえます。時代の先を見据え、世の中にないものを生み出すことに挑戦するイノベーションの精神は、現在にも引き継がれています。
次世代のワークスタイルを提案
イトーキではオフィス家具の製造のみならず、時代に合わせたオフィスのプランニング、働き方の提案も行ってきました。近年では、総合的なワークスタイル戦略「ABW(Activity Based Working)」に基づき、個々のワーカーのアクティビティにふさわしい場を用意していくことを提案しています。2018年に開設した新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK(ゾーク)」は、ワーカーの「10のアクティビティ」に対応した空間機能を備え、社員自ら新しい働き方の実証実験を行うワーキングショールームとなっています。
コロナ禍によって働き方にも変化が起きている中で、オフィスのあり方に関するご相談を受ける機会が増えています。当社も、社員一人ひとりが実践を通して次世代のワークスタイルを模索している段階ですが、そうした過程も自社メディアなどで発信しながら、変わりゆく働き方に応じたオフィスの提案、製品の提供を続けていきたいと考えています。
需要高まる在宅ワーク用製品
イトーキの主なお客様はオフィスを持つ企業ですが、会社に属するワーカーもオフィス以外で働く機会が増え、働くための場所や家具の使われ方、選ばれ方が変わりつつある今、今後はワーカー一人ひとりに向けた提案にも力を入れていくべきだと考えています。テレワークの普及を目的に、2017年より大学や自治体と進めてきた在宅ワーク用家具の開発もこうした取り組みの一つです。コロナ禍によってリモートワークの機会が飛躍的に増えたことを受け、現在ラインナップの拡充を急ピッチで進めているところです。
ワーカーたちの働く場が多様化している中で、今後は新しいオフィスの提案に加え、オフィスの外で使う製品も含めてボーダレスに開発を進めていくつもりです。今後も企業コンセプトである「明日の『働く』を、デザインする。」に即して、変化を恐れず、時代が求める働き方を叶えていきたいと考えています。


