Managemant Eye

独自の「ポジション」と明確な「ビジョン」

「サステナブルな経営と起業家育成にも取り組む」

株式会社メディアドゥ代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣氏
株式会社メディアドゥ代表取締役社長 CEO
藤田恭嗣

リレー形式のこの企画、今回は、株式会社アイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長 兼CEOからのご紹介です。

吉松さんとは、世界中に14,500人の会員を擁する世界的な起業家組織、「EO(Entrepreneurs' Organization)」のブランチで出会いました。以来、月に1回はお目にかかっていろいろな話をしています。頭脳明晰で周囲に流されることのない吉松さんは、同世代の経営者として、お互いに刺激し合う存在です。

「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」をビジョンに掲げ、ビジネスを展開されていますね。

1994年、大学在籍中に創業して以来、システム開発や着うた配信サービスの提供などを経て、電子書籍流通における出版と販売をつなぐ取次という当社独自の「ポジション」を築いたことで、現在に至っています。

会社が成長し、社員数が100人を超えた段階で、組織を束ねるには「何を実現するためにメディアドゥがあるのか」をビジョンとして明確にすることが必要だと感じました。ビジョンは会社の骨子であり、経営者の哲学が反映されたものでなくてはなりません。改めて著作権法を読んでみると、第一章総則の第一条に「著作物は文化の発展に寄与する」、「著作物の利用と保護の調和」と明記されており、これが当社の原点だと感じました。つまり当社の存在意義は、作家やアーティストの創作意欲を掻き立て続け、生み出される作品をより多くのユーザーが楽しめる仕組みをつくることにあると。そして誰もがイメージしやすい言葉で表現したのが、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」というビジョンであり、「著作物の健全なる創造サイクルの実現」というミッションなのです。

社員のモチベーションを上げる施策にはどんなものがあるのでしょう。

当社は、一貫して社員を能力主義で評価しています。スキルはもちろん、能力を存分に発揮しているか、人に頼られているか、人を大切にできているかなど、現場やマネージャーからの評判も加えて総合的に判断します。

また、新人の内定者研修では、私の故郷である徳島県那賀町木頭地区へ2泊3日で訪れ、当社の歴史、アイデンティティ、今後の戦略について、自ら1日に7〜8時間かけて伝えます。ご縁があって入社したのですから、私自身や会社についてのすべてを開示し、私の想いや哲学を理解してもらうことで、社員も納得して働くことができると考えているからです。

サステナブルな経営についてもお聞かせください。

SDGsに代表されるように、サステナビリティは今や経営の重要な指標の一つです。社会の持続可能性には経営者の果たす役割も大きく、先述したEOで最も規模の大きいブランチ「EO Tokyo」で会長を務めた際に、SDGsやESG経営についての理解を深めました。

もちろん、当社の使命を果たすことでサステナブルな経営を実現することは当然のこと。加えて、SDGsでは「誰一人取り残さない」ということも謳っており、それには地域の活性化が不可欠です。しかしながら、「地域創生」は決して簡単ではありません。そこで、今年2月に立ち上げたのが、一般社団法人徳島イノベーションベース(TIB)です。TIBはEOと連携し、徳島県内で起業家精神を持つ人を先輩起業家が育成・支援するというもの。行政、金融機関、メディア、大学などを巻き込みながら、EOが持つメソッドを地域にインストールし、起業の芽を潰さずに育てることで、起業家が活躍できる風土を各地につくりたい。それが私の願いです。7月には、岩手イノベーションベース(IIB)もスタートしました。この活動が、当社の社員にとって「サステナブルな社会とは何か」を考えるきっかけになることも、願っています。

「flier(フライヤー)」
グループ会社の「flier(フライヤー)」は、今読むべき書籍を要約形式で提供し、多くの人が書籍に触れる機会をつくっている。
徳島イノベーションベース
徳島イノベーションベースは月例会を開催。毎回EOの先輩起業家による講演などを行い、好評を博している。