2021年、新たなチャレンジへ

INTERVIEW ❷

デジタル化のさらなる推進と「両利き」経営を

伊藤忠商事株式会社 ブランドマーケティング第一部門長 武内秀人

武内秀人

伊藤忠商事株式会社 ブランドマーケティング第一部門長

リテール現場の景色が一変

ジョイックスコーポレーションから4年ぶりに帰任した2020年の4月、商況はコロナ禍で様変わりしていました。アパレル業界では、都心の好立地に店舗を持つ企業や店舗数が多い企業ほど苦境に立たされ、従来の強みが弱みになるというまさにゲームチェンジの状態でした。

一方で、EC化が一気に進み、ジョイックスのEC売上も4〜5月は前年比60〜70%増で推移しました。業界全体でも、すでにEC化を進めていたかどうかが業績にも大きく影響しました。また、リアル店舗でも密になりにくいアウトレットや郊外百貨店が健闘し、ラグジュアリーやアウトドアブランドが比較的堅調だったことも特徴的だったと思います。

守りと攻めの「両利き」を意識

ジョイックスコーポレーションの「ポール・スミス」
ジョイックスコーポレーションが手掛ける「ポール・スミス」は2020年に50周年を迎えた。

2021年は、ECはもちろん、オンライン接客やデータマーケティングといったDXの推進が欠かせず、加速するデジタル化に遅れをとってはなりません。中でも重要視されているのがOMO(オンラインとオフラインの融合)で、購買に至らないケースも含めたカスタマージャーニー(顧客の行動履歴)の取得が求められています。データの取得はオンラインでは容易ですが、リアル店舗では難しいため、例えばリアル店舗をショールーム化してECにつなぐことでデータの集積地にするといった試みも進められています。

また、ライセンスビジネスの根幹をなすのが、アパレルや鞄、傘、ハンカチなどの服飾雑貨を取り扱うサブライセンス先の各社です。高度なものづくり力を誇る日本のファッション文化の一翼を担っていただいていますが、百貨店の売り場が縮小傾向にある今、大変苦労されています。当社が主導権を持って、そうしたお取引先様のために新しい販路の開拓やDX化をサポートしていきたいですね。

ブランドビジネスでは、「ポール・スミス」や「コンバース」のような既存ブランドをより強く育てる「深耕型」と、コロネットのように目利き力を磨き、新規ブランドを次々と獲得する「狩猟型」があります。かつては「狩猟型」にスポットが当たりがちでしたが、強いブランドをより強くしていく「深耕型」も極めて重要です。言い換えれば、守りと攻めの「両利き」の経営を意識すること。それが、ブランドビジネスのさらなる成長にもつながると考えています。