若い消費者の心をくすぐる「韓流」の秘密

― 座談会 ―

幅広い層への共感とスピード感が成功を支えるブランド戦略

株式会社ZOZOテクノロジーズWEAR プロダクトマネージャー 齋藤春奈氏

齋藤春奈

株式会社ZOZOテクノロジーズWEAR プロダクトマネージャー

エンターテインメント同様に世界に発信するという意識を常に持っていますね (齋藤)

小原:私たちは、20代前半の生活者を「インスタ世代」と呼んでいるのですが、あらゆる要素がビジュアルに置き換わりつつある現在の情報環境が、韓国のファッションやビューティの人気を後押ししているのですね。

齋藤:そう思います。また、韓国ブランドが若い世代に受け入れられているもう一つの理由として、商品の価格帯も挙げられます。ECサイトなどで購入できる韓国ブランドのアイテムは、若い世代でも手に入れやすい手頃な価格帯のものが多く、さらにデザイン性が高いところが人気を集めている大きな理由だと思います。

原田:コスメに関しても、いわゆるプチプラといわれる1,000~2,000円台の商品を主力とするブランドが若者を中心に人気を集めています。一方で、40~50代前後の女性たちが品質面で満足できる高価格帯の商品も少なからず存在します。もともと韓国は、医師や医療機関が開発や監修に携わっているドクターズコスメの分野が強く、成分や効能に魅力がある商品が次々と出てきます。加齢によって肌の悩みが大きくなる世代のニーズを満たす商品は、今後さらに増えてくるように思います。

齋藤:10~20代の若い世代ではなかなか手が届かない価格帯のアパレルブランドもあります。先にもお話ししたように、日本の若い世代には韓国のアパレルブランドがまだあまり知られていないのですが、最近は、「ADER ERROR(アーダーエラー)」というデザイナーズブランドがパリの「MAISON KITSUNE(メゾンキツネ)」と、「GENTLE MONSTER(ジェントルモンスター)」という韓国の人気アイウェアブランドが「Alexander Wang(アレキサンダーワン)」との限定商品をリリースするなど、欧米の有名デザイナーズブランドとのコラボレーションが増えています。こうした取り組みをきっかけに、ファッション感度が高い人たちの間でも韓国ブランドの認知度が少しずつ高まってきていると感じます。

小原:韓国のブランドの多くは、誰に向けてどんなアプローチをしていくのかという戦略も綿密に設計されているように感じますね。

齋藤:韓国のブランドやショップのSNSの投稿などを見ていると、ファッション以外のアート領域にも目を向けるなど、幅広い層に情報を届け、共感を得ようとしている姿勢が見て取れます。また、K-POPなど韓国のエンターテインメントは、国内だけにとどまらず、世界に向けて発信していくという意識を常に持っていますが、こうした戦略はファッションやビューティの分野においても共通しているように感じます。

原田:最近では「リップティント」、「クッションファンデ」、「シカクリーム」などに顕著ですが、韓国が発信元となり、欧米や海外のブランドがそれに追随するという例が少なくありません。以前に、日本のコスメブランドが2~3年ほど研究開発を行ってから商品をリリースすることが多いのに対して、韓国ブランドは早い段階で商品を市場に出す、テストマーケティングに力を入れているという話を聞いたことがあります。もちろん、失敗して撤退するケースなども少なくないと思いますが、このスピード感というものが世界の市場を牽引する一つの要素になっているように感じます。

「WEAR」には「韓国ファッション」のタグが付いているコーディネートもアップされている
「WEAR」には「韓国ファッション」のタグが付いているコーディネートもアップされており、男女を問わず、参考にしているユーザーが多い。