若い消費者の心をくすぐる「韓流」の秘密

― 座談会 ―

今後も期待が高まる韓流人気の行方と日本ブランドへのヒント

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長 小原直花氏

小原直花

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長

若者にとって自らを投影でき刺激も得られる韓国コンテンツの広がりが今後も楽しみです (小原)

小原:フリマアプリ系の調査結果では、ファッションを参考にしている国として、10代女性の約80%が韓国を挙げています。さらに皆さんのお話を伺って、韓国発のファッションやコスメが、すでに若い世代の選択肢として定着しているということを強く感じました。今後の韓流ブームの展望や、韓国発のファッションやコスメに期待したいことなどについてもお聞かせください。

齋藤:私自身がそうだったように、韓国ファッションやコスメが人気を集めた背景には、K-POPアイドルたちの魅力的な着こなしやメイクがあります。日韓合同のNizi Projectなど、アイドル業界にも韓国の影響が広がっている中で、今後韓国のカルチャーはますます大衆化していくはずです。これらには一過性のブームに終わらず、これからも追い続けたいと思える対象であって欲しいですし、韓国コスメに関しても品質や効能などの面で優位性を保ち続けられるのであれば、私も一消費者として引き続き使っていきたいと思っています。

西原:今後も、さまざまな韓国コスメが続々と日本に入ってくるはずです。これらのブランドが私たちに何を提供してくれるのかということが焦点になりますが、やはり韓国ブランドの強みは新規性だと思います。日本にはない視点や習慣から生まれる新しい商品にこれからも期待したいですね。

小原:韓国ブランドが日本の市場を席巻している今、日本人としては国内のブランドにもがんばってもらいたいという想いもあります。日本の企業やブランドが参考にできそうな点、あるいは競争力を高めるために強化していくべき点などについてはいかがでしょうか。

齋藤:先にもお話ししたように、手軽に買える価格帯や魅力的なビジュアル、そして同じアジア人としての真似のしやすさなどが韓国ブランドの強みになっています。また、さまざまなテイストがある韓国ファッションですが、ジェンダーレスのアイテムが多いということが一つの共通項となっていることにも注目するべきです。若い世代ほどブランドの世界観やコンセプトに共感して消費をする傾向が強いといわれる中、彼らの志向やライフスタイルに寄り添ったものづくりをするということが、日本のブランドにも求められてくるのではないでしょうか。

原田:近年は、SDGsの達成ということが世界中の国や企業、そしてブランドに共通する大きなテーマとなっています。しかし、ヨーロッパの倫理観とは異なる思考を持つ日本人にとって、SDGsの達成そのものが消費の動機にはなりにくいと感じています。韓国では、スマホ程度の大きさのパウチに入った口紅やアイシャドウなど、無駄な消費をしないという観点を押し出す商品が増えていて、こうしたところに日本のブランドが参考にできる部分があると感じています。消費者へのメリットを提供することが、サステナブルな未来にもつながるようなものづくりをしていく。そうしたアプローチが、今後は重要になってくるのではないかと思います。

西原:正直、新しさという点で勝負をしようとすると、今後も日本のブランドは劣勢かもしれません。一方、韓国ブランドの近年の動きを見ていると、日本のコスメブランドと消費者の間にあるような信頼関係を築くところまでは至っていないように感じますし、これからも日本のブランドはこの部分を強みとして持ち続けていくべきだと思っています。コロナ禍において対面接客が難しくなっている昨今ですが、対面、非対面にかかわらず、顧客との一対一のコミュニケーションを大切にしながら、いかに信頼関係をつくり上げていくのか、それがこれからのカギになるのではないでしょうか。

小原:私の世代にとってファッションやビューティにおける憧れの対象は、エレガンスを基調としたヨーロッパのスタイルでした。そこから時代は変わり、現代の若い人たちにとっては、同じアジアの国である韓国のファッションやビューティが、自らを投影でき、同時に刺激を得られる対象となっているということがわかり、今後の韓流コンテンツの広がりがますます楽しみになりました。本日はありがとうございました。

スポーツブランド「FILA(フィラ)」
スポーツブランド「FILA(フィラ)」は、2019年10月より、グローバルアンバサダーにBTSを起用し、10~20代の女性層を取り込むなど好調だ。同ブランドは、伊藤忠商事が日本市場で展開し、ifsがシーズンディレクションなどを手掛けている。