Managemant Eye
スピード感を持って「Sustainability First」へ
「誰よりも早く失敗することがベンチャーの使命」

出雲 充氏
毎回、リレー形式で経営者の方にご登場いただいていますが、今回は伊藤忠商事株式会社の代表取締役社長COO 鈴木善久からのバトンとなりました。
2020年6月より、一般社団法人 日本経済団体連合会で審議員会副議長を務めることになりました。その最初の大仕事である夏季フォーラムで、隣の席にいらしたのが鈴木社長でした。不安でいっぱいだった私に、折に触れて声をかけ、サポートしてくださいました。それ以来、会合の度に楽しくお話させていただいています。かつて、2015年度の企業広報経営者賞(経済広報センター)の受賞時には、岡藤正広現会長CEOにもお会いしました。当社の状況もよく把握されていて、「伊藤忠商事は本物を見捨てない会社だから、頑張れ」と励ましていただき大変感動しました。
伊藤忠商事とは、事業においても運命的な出合いをされていますね。
当社は、藻の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)を主に活用し、食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究などを行っているバイオテクノロジー企業です。2005年に創業し、出資者や提携先探しに苦戦する中、2008年に501社目で出合い、初出資してくださったのが伊藤忠商事でした。以来、共同で、ユーグレナを活用した食品開発、ユーグレナの海外培養実証事業などに取り組むほか、横浜市内のファミリーマートの一部店舗で、使用済みの食用油を当社が製造するバイオ燃料の原料の一部として再利用するという取り組みも始めています。
ベンチャー企業はさまざまなパートナーがいてこそ、リスクを取ってチャレンジできます。誰よりも早く失敗することがベンチャーの使命であり、言い換えれば、それが早い段階での小さな成功「アーリー・スモール・サクセス」へとつながって互いの成長を促すのです。スピードとチャレンジだけは、伊藤忠商事に負けないようにしたいですね(笑)。
2020年、会社のCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新されましたが、その狙いは。
学生時代にバングラデシュで栄養失調に苦しむ子どもたちを見て以来、栄養の勉強を始め、多くの栄養素を持つユーグレナに出合いました。このユーグレナを主力に何を実現するのかを考え、15年間、「人と地球を健康にする」を経営理念に掲げてきました。そして今、社会全体がサステナビリティに向かっている中、スピード感を持って当社自身がサステナブルな会社になることが重要です。そこで、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を新たにユーグレナ・フィロソフィーとして掲げたのです。
さまざまな取り組みを行われていますが、中でもユニークなのが18歳以下のCFOプロジェクトです。
2025年以降、社会の構造自体は変わらぬまま、大きな変革が静かに訪れるはずです。2025年の15歳から64歳までの生産年齢人口は、1981年以降生まれの世代が中心になります。すると、これまで団塊世代が支えてきた消費市場は一変し、提供される商品やサービスがまったく異なるものになるはずです。そんな未来に起こる変革の時代に、私たち企業はどう生き残っていくのか。現在の事業や課題について、未来を生きる当事者に点検してもらうのが、18歳以下の「最高未来責任者(Chief Future Officer)」プロジェクトです。彼らに議論してもらうことで、私たちにも多くの発見や気づきがあります。それらを生かしながら、サステナブルな会社として、元気で楽しい未来をつくる一助になりたいと考えています。

