都心部で存在感を強める郊外型ビジネスの新戦略
CASE❶ イケア・ジャパン株式会社
都市生活者の暮らしに寄り添い便利で手軽なブランド体験を提供する
主要都市のロードサイドを中心に大型家具量販店を展開してきたイケアが、2020年に東京の原宿と渋谷にシティショップ(都心型店舗)をオープンした。世界的に都市部への人口流入が進む中、都心部への出店に力を入れているイケア・ジャパン株式会社に、日本におけるシティショップ出店の狙いやコロナ禍によるライフスタイルの変化への対応などについて取材した。
世界規模で進む都市部への出店
イケアは、2006年にIKEA船橋をオープンして以来、郊外のロードサイドを中心に大型店舗を展開してきました。一方で近年は世界的な動きとして、都市部に暮らす人々の家での暮らし方が変わってきています。高い生活費を払い、限られた居住空間に暮らす人たちは年々増えており、その多くは車を持たず、引っ越しを頻繁に繰り返しながら忙しいライフスタイルを送っています。また、人々の購買行動やニーズも変化してきており、利便性が高いオンラインや、家の近所でお買い物をされる傾向が強まっています。
「より快適な毎日を、より多くの方々に」をビジョンに掲げるイケアでは、都市部に暮らす人々にさらに寄り添い、より快適な暮らしづくりをサポートするために、世界規模で都市部への出店を進めています。家がこれまで以上に大切になっている中で、日本においてもシティショップを展開していくことになり、2020年6月にIKEA原宿を開業し、さらに11月には世界初の7階建て店舗として、IKEA渋谷をオープンしました。
等身大の暮らしを反映させた売場
IKEA渋谷では、都心に暮らす方々のさまざまなニーズに合わせて、限られたスペースでの一人暮らしや二人暮らし、お子様との暮らしなどのルームセットを用意し、フロアごとに豊富なソリューションを提案しています。シティショップのオープンにあたって、私たちは都心に暮らす方々の等身大の暮らしを反映するために約50軒のお宅に実際にお邪魔して、どんな暮らしのソリューションが求められているのかをリサーチしており、それをルームセットに落とし込んでいます。
さらに、IKEA渋谷では世界初となるベジドッグの専門ビストロを併用し、限定の新メニューを販売するなど、健康的でサステナブルな商品を手頃な価格でご提供しながら、幅広い層のお客様に「イケアならではの体験」をお楽しみいただける空間となっています。
時間やニーズに合わせた「イケア体験」を
従来の郊外型店舗は、遊園地に出かけるような感覚で遊びに行けるデスティネーションとして多くの皆様にご愛顧いただいており、1日かけてゆっくりと店内を回り、「イケア体験」をフルでお楽しみいただいています。IKEA渋谷においては、こうした郊外型店舗のミニチュア版のようなつくりにすることで、イケアの世界観をより明確に伝えることを意識しました。
同時に、シティショップにおいては、平日のランチタイムや仕事帰りなどのすきま時間にも気軽に立ち寄り、「イケア体験」を楽しんでいただける場所であることが大切だと考えています。それを実現するための便利なロケーションや、目的の売り場にすぐにアクセスできるフロア構成を心がけており、この春には、郊外からも乗り入れが良い新宿に新店舗をオープンする予定です。また、IKEAアプリを通じたオンラインショッピングの体験をより便利なものにしていくことで、お客様の時間やニーズに合わせて最も便利なイケアをご利用いただけるようにしていきたいと考えています。