都心部で存在感を強める郊外型ビジネスの新戦略

CASE❷ くら寿司株式会社

コロナ収束後の社会を見据え都心部への出店を加速させる新戦略

現在の回転寿司店の基盤となっているさまざまなシステムを業界に先駆けて開発・導入し、安全・安心とエンターテインメント性を両立させた食体験を提供することで、郊外を中心に店舗を拡大してきたくら寿司株式会社。2021年1月には都心型店舗1号店となる渋谷駅前店、西新宿店を同時オープンし、このコロナ禍に都心部進出を加速させている同社が描く戦略について取材した。

くら寿司株式会社 広報宣伝IR本部 広報部 辻 明宏氏

辻 明宏

くら寿司株式会社 広報宣伝IR本部 広報部

コロナ禍に踏み切った都心部進出

くら寿司は、化学調味料、人工甘味料、合成着色料、人工保存料を一切使用しない「無添」や、100円均一価格にこだわり、安全・安心とエンターテインメント性を重視した食体験をお客様に提供してきました。主に郊外エリアでの出店を進め、現在、国内外に542店舗を展開しています。以前から都心エリアにおけるニーズもあったものの、都心に多いビルイン物件に「皿カウンター水回収システム」などくら寿司独自の設備を設置するには一定の広さを確保する必要があり、100円という価格を維持しながら、お客様の安心感や満足感、利便性を損ねずに利益を上げていくことは容易ではありませんでした。

しかし、コロナ禍によって条件の良い物件が出始めたことを受け、都心型店舗の商品価格を100円から110円に引き上げる経営判断を行い、2021年1月にオープンした渋谷駅前店、西新宿店を皮切りに、本格的に都心部での出店を進めていくことになりました。

完全非接触型の都心型店舗

「鮮度くん」と呼ばれる寿司カバーや、IT技術を活用した品質管理や予約システムなどを早くから導入していたため、業界に先駆けて感染症対策を強化することができました。2020年11月には、従業員が入店から出店まで一切接触しない完全非接触型店舗の1号店となる東村山店のオープンに至り、このような新しい生活様式に対応した店舗が準備できていたことも都心部進出の布石になりました。

都心型店舗では、仕事帰りのビジネスパーソンのお客様を想定し、アルコールの拡充や大人向けメニューのレギュラー販売をしています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出によってアルコールの提供が難しくなった際でも、ランチセットの提供時間延長やテイクアウト対応なども行っており、都心部で働く方々を中心に好評をいただいています。今後も状況に臨機応変に対応しながら、新しい層のお客様にご利用いただけるようにしていきたいと考えています。

コロナ後を見据えた出店計画

都心型店舗はすでに武蔵小杉、小岩、赤羽などにもオープンしており、車をお持ちにならず、郊外店にお越しいただくことが難しかったお客様から、ご期待の声を多数いただいています。また、今後は仕事帰りなどに都心型店舗をご体験いただき、ご自宅の近くにある郊外型店舗にも足を運んでいただくという流れをつくっていければと考えています。さらに、コロナ収束後の都心型店舗においては、国内外から訪れる観光のお客様に対して広告塔の役割を果たしてくれることにも期待しています。

私たちは2021年12月までに国内全店舗を完全非接触型に変えていく計画を進めており、感染症対策に万全を期すことで、安全に、安心してご利用いただける環境づくりに努めていきます。そして、アフターコロナの時代においては店舗における特別な食体験をお届けしていくことに加え、ニーズが倍増しているテイクアウトや、コロナ禍に取り組み始めたデリバリー、ドライブスルーなども充実させていくことで、都心・郊外問わずお客様の選択肢を増やしていきたいと考えています。

公式アプリ「スマホdeくら」
来店予約用として提供されていた公式アプリ「スマホdeくら」に、席の予約やメニューの注文、持ち帰り予約ができる機能が加わり、より便利になっている。
「おうちでくら寿司セット」
「おうちでくら」は、家庭でも手軽に味わえるテイウアウトメニューが揃う。写真はテイクアウトの「おうちでくら寿司セット」。アプリ、電話、店頭と、注文方法も多彩。
抗菌寿司カバー「鮮度くん」
抗菌寿司カバー「鮮度くん」は、皿の手前を上に上げるだけで簡単に皿が取り出せるため、キャップにふれずに寿司を出し入れできる衛生上安心なアイテムだ。
「KURA ROYAL(クラロワイヤル)」
ワンランク上のおいしさを追求したスイーツ「KURA ROYAL(クラロワイヤル)」を全国のくら寿司で展開。(写真は渋谷・新宿限定メニュー)