都心部で存在感を強める郊外型ビジネスの新戦略
CASE❸ 株式会社シャトレーゼ
素材へのこだわりを進化させ「デイリープレミアム」という新たなニーズを獲得
1954年に山梨県甲府市で創業し、現在は国内外に600を超える店舗網を持つ株式会社シャトレーゼ。独自のサプライチェーンシステムのもと、独立型のロードサイド店舗を全国に広げてきた同社は、2019年に都市型プレミアムブランド「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を立ち上げ、東京・大阪を中心に15店舗を展開している。同ブランドの戦略や都心型ビジネスの手応えなどを聞いた。

株式会社シャトレーゼ
広報室 室長 中島史郎氏
商品企画開発部 部長 白須 暁氏
製販一体型のビジネスモデル
現在、「シャトレーゼ」では日本全国に560店舗、海外に90店舗を展開し、洋菓子、和菓子、生菓子、焼菓子、アイスクリーム、パンなど400種類を超える商品を販売しています。当社最大の特徴は、契約農家や牧場から新鮮な素材を仕入れ、名水で知られる山梨・白州をはじめ自社工場で製造した製品を、全国の店舗に直送する「ファームファクトリーシステム」にあります。製販一体のビジネスモデルによって品質、価格ともに優れた製品をお客様に提供することが可能になっています。
「シャトレーゼ」は、小さなお子様を持つファミリー層を中心に支持を広げてきましたが、近年は認知度の高まりとともにニーズが多様化し、老若男女、幅広いお客様に多彩なカテゴリーの中から商品をお選びいただいています。そして、2019年からは都心部での認知向上を掲げ、都市型プレミアムブランド「YATSUDOKI」を立ち上げ、同年9月にオープンした銀座店を皮切りに現在は15店舗を展開しています。
希少素材を用いたプレミアムブランド
売り場面積が限られる都市部に出店している「YATSUDOKI」では、取り扱う商品の数を大幅に絞っています。その多くはオリジナルの商品となっており、「シャトレーゼ」では使うことが難しかった希少性が高い素材を用いている点が大きな特徴です。また、できたてをお召し上がりいただけるように各店舗に工房を設けており、焼き立てのアップルパイなどが大変好評です。新鮮な素材を用い、なるべく早くお客様にお届けするというシャトレーゼのこだわりを進化させた「YATSUDOKI」は、都心部の競合店以上の商品価値をご提供できていると自負しています。
「YATSUDOKI」では当初、30代後半から40代の女性のお客様をメインターゲットに据えていましたが、銀座店などでは男性のお客様のご利用も多くなっています。また、贈答品や手土産など従来のシャトレーゼではカバーできていなかったニーズにも対応できています。
コロナ禍がもたらした環境の変化
新型コロナウイルスの影響で外出機会が減り、在宅時間が増えたことで、ご自宅で高価格帯のスイーツを召し上がる方たちが増えました。こうした変化のもと、希少な素材を用いながらコストパフォーマンスにも優れた「YATSUDOKI」の商品群が、デイリープレミアムなスイーツとしてお客様に受け入れられています。また、全国に展開する従来型の「シャトレーゼ」においても、学校の休校などによるお子様の安全・安心なデイリースイーツ需要の高まりや、自家用車で安全にお買い物ができる独立型のロードサイド店という立地などが追い風となり、売上も好調となっています。
コロナ禍によって都心部のオフィスワーカーが減少し、飲食店の利用頻度も少なくなっている中で、現在「YATSUDOKI」は吉祥寺や阿佐ヶ谷、石神井公園など住宅エリアを中心に出店を進めています。また、コロナ禍で大きな物件にも空きが出てきていることを受け、「シャトレーゼ」の都市部出店も予定しており、今後は2つのブランドをニーズに応じて使い分けていただけるようにしていきたいと考えています。




