消費者の共感を得るエリア開発最前線

CASE❸ 平和不動産株式会社

街の資産と事業者の個性を掛け合わせ「証券の街」に新たな賑わいを創出

東京、大阪、名古屋の証券取引所ビルのオーナー企業として1947年に設立された平和不動産株式会社。2014年より創業の地である日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトを推進し、地域の賑わいづくりの一環として、2020年2月に小規模複合施設「K5(ケーファイブ)」をオープンした。その後も界隈に特色ある飲食店を次々と誘致し、兜町、茅場町を若者たちで賑わうエリアに一変させた同社の担当者に伺った。

平和不動産株式会社 開発推進部 課長代理 伊勢谷俊光<氏/ビルディング事業部 課長代理 山根拓馬氏

平和不動産株式会社

開発推進部 課長代理
伊勢谷俊光
ビルディング事業部 課長代理
山根拓馬

兜町らしさを再構築する

当社創業の地であり、東京証券取引所を中心とする証券の街としての歴史を持つ兜町は、株券売買立会場が閉場した1999年以降、証券会社が減少し、街の賑わいが失われていきました。こうした状況を受け、当社は2014年より、「人が集い、投資と成長が生まれる街づくり」をコンセプトに掲げ、日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトを推進してきました。

このリーディングプロジェクトとして、オフィス、店舗、金融関連施設が集積する高層ビル「KABUTO ONE(カブトワン)」の建設を進めています。

また、2021年夏の同ビルオープンに向けて、地域の賑わいや回遊性を再創出するために、歴史的な建造物や旧証券店舗1階部分の利活用にも取り組んでいます。兜町が本来持つポテンシャルに、飲食コンテンツなど街の新たな機能を融和させることで、「兜町らしさ」を再構築することがプロジェクト全体の目標です。

新たな流れを「点」から「面」へ

賑わいづくりの起点となったのが、1923年竣工の歴史的建造物が持つ重厚で荘厳な雰囲気を生かしながら改修した「K5」です。建物が駅から離れているため、目的地型の施設にする必要があったこと、また、来街者が長く滞在し、街を回遊するための拠点をつくりたかったことから、飲食と宿泊の機能を持たせることを前提にさまざまな事業者と対話を重ね、ホテル、レストラン、バーなどが集積した小規模複合施設として、2020年2月に開業することができました。

さらに、「K5」によって生まれた新しい人の流れを「面」に広げていくために、ベーカリーやレストラン、ビールスタンドなど5つの独立系飲食店舗を近隣に誘致し、同年夏より順次開業しました。一連の取り組みの結果、スーツ姿のビジネスパーソンばかりだった街に20~30代の若者たちの姿が急増し、コロナ収束後は外国からのお客様にも足を運んでいただけるのではないかと期待しています。

「競合」ではなく「協業」ができる関係に

日本初の銀行や証券取引所が生まれた兜町は、多くのベンチャー企業が集う「コト始めの街」でした。こうした歴史的背景を踏まえ、再活性化プロジェクトでは若い人たちの成長支援を一つのテーマに掲げており、地域の賑わいづくりにおいても、新しい取り組みを通じて街を盛り上げてくれるプレイヤーを呼び込むことを意識してきました。

また、ここにしかない体験を提供する特徴的な店舗の連携によって、人や文化をつなげたいという想いから、周囲の店舗との「競合」ではなく、「協業」のマインドを持ったテナントを誘致することを何よりも重視しました。その結果、店舗間でのコラボレーションが自然発生し、さまざまなテーマでつながるコミュニティが育まれるようになりました。

今後は、各店舗を運営する人たちの個性と、この街が持つ歴史的資産の魅力を掛け合わせていく取り組みを飲食コンテンツ以外にも広げながら、この街の魅力をさらに高めていきたいと考えています。

日本橋兜町・茅場町再開発の第1弾プロジェクト「KABUTO ONE」
日本橋兜町・茅場町再開発の第1弾プロジェクト「KABUTO ONE」は、国家戦略特区のプロジェクトとして認定されている。(外観イメージ)
大正時代のビルを大規模リノベーションした「K5」
大正12年竣工の地下1階、地上4階建てのビルを大規模リノベーションした「K5」。
「都市における自然との共存」がテーマの「HOTEL K5」
「K5」2F〜4Fには「都市における自然との共存」がテーマの「HOTEL K5」が入る。
店舗オーナー
新しい飲食コンテンツを担う5つの多様な店舗のオーナーたち。