急伸するメンズビューティ市場

【COLUMN】株式会社電通テック

「身だしなみ」から「ファッション」へ時代とともに変わる男性の美容意識

株式会社電通テックの開発型組織+tech labo(プラステックラボ)では、Z世代男子の美容コミュニティ「Boys Beauty」を立ち上げ、企業のニーズに即したソリューションの提供にも取り組んでいる。ユーザーとメーカー双方と接点を持ち、メンズビューティ業界に精通する堀 かおり氏に、近年の市場動向や今後の可能性などをうかがった。

株式会社電通テック +tech labo 堀 かおり氏

堀 かおり

株式会社電通テック +tech labo

メンズコスメ市場が広がった要因

私たちが「Boys Beauty」を立ち上げた2018年頃からメンズコスメ市場はゆるやかに拡大を続けていますが、その背景にはいくつかの要因があり、まず挙げられるのはK-POPブームです。韓国アイドルたちの存在によって韓国コスメが認知されたことはもちろんですが、美しく儚げな男性アイドルたちの人気が性別問わず高まる中、なりたい男性像が変化し、メイクに興味を持つ若い男性が増えています。

2つ目の要因として、コロナ禍によってマスクによる肌荒れが起きたり、オンライン会議で自分の顔を目にする機会が増えたことなどによって、スキンケアへの意識が高まったことが挙げられます。そして3つ目は、同じくコロナ禍によってインバウンド需要がなくなったことを受け、後回しになりがちだったメンズコスメ市場に企業が注目し始めているという美容業界の動きがあります。

世代ごとに異なる美への意識

+tech laboが「Boys Beauty」を立ち上げた背景には、こうした市場の盛り上がりに加え、Z世代の美意識の高さがありました。20代後半以上の男性は、肌のコンプレックスを隠したり、清潔感を保つなど、ネガティブな要素をゼロに戻すための「身だしなみ」としてコスメを使うケースが大半ですが、Z世代の男性は、ファッションやヘアアレンジの延長で自分をより良く見せたり、理想像に近づくためにポジティブに美容を楽しんでいることが特徴です。

また、カラーバリエーションやコストパフォーマンスなどが重視されがちな女性コスメに対して、男性は自分を一歩引き上げたり、自信を持つためにコスメを使うケースが多いといえます。そのため、「生活に加えることで意識が変わる」というメッセージの打ち出しや、部屋にあるだけで気分が高まるようなスタイリッシュなパッケージデザインなども重要な訴求ポイントになっています。

今後のキーワードは「ジェンダーレス」

昨今は「ジェンダーレス」の考え方が徐々に浸透し、若い世代ほど「男は男らしく」といわれることに違和感を抱きやすいというデータも出ている中、メンズコスメ市場においても当然「ジェンダーレス」は今後のキーワードになります。男女には肌質の違いがあるため、機能面からメンズ専用コスメを選ぶニーズがなくなることはありませんが、人口減少が進む中、メーカー側にとってもターゲットを細かくセグメント化することは非効率的ですし、ジェンダーレスコスメの開発はさらに進むとみています。

また、最近ではファッションやインテリアなどと同様に、どんなコスメを使うのかということが個人の趣向やライフスタイルを体現する要素になりつつあります。今後は美容業界のみならず、ファッションやライフスタイルなどの領域からメンズコスメ市場に進出してくる企業も増えるでしょうし、美容に接点がなかった男性たちの入口として機能する重要な存在になるのではないかと考えています。

「Boys Beauty」サイト
2020年より「Boys Beauty」の1万人のフォロワー(2021年4月現在)を活用したタイアッププロモーションや商品開発などの法人向けサービスの提供を開始した。
「Boys Beauty」イベント
「Boys Beauty」では、メンズコスメの情報交換会や体験型リアルイベントも主催している。