若者世代を中心に広がる「オタク」消費の現在

[対談]

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略事業部 ソリューション戦略部 エキスパート 兼SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏 伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長 小原直花氏
[COLUMN]
株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部研究員 廣瀨 涼氏
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略事業部 ソリューション戦略部 エキスパート 兼SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏
伊藤忠ファッションシステム株式会社  ナレッジ開発室 室長 小原直花氏
[COLUMN]
株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部研究員 廣瀨 涼氏

近年、アイドルやアニメ、ゲームなどに熱狂的に愛情を注ぐ「推し活」をはじめ、自分の好きなことに没頭するオタク志向の若者が増えている。Z世代女性の多くが「○○ヲタ」であると自認し、「ヲタ活」の様子をSNSで発信するなど、かつての暗くてネガティブな「オタク」のイメージは大きく変わりつつある。コロナ禍のオンラインシフトで生まれた余暇時間によって、自分の「好き」や「こだわり」を掘り下げる消費行動が世代を問わず活発化しているともいわれる中、明るくポジティブに「ヲタ活」、「推し活」を楽しむ若者世代の消費行動から、これからのマーケティングのヒントを探る。

[対談]長田麻衣 × 小原直花 Z世代に見る「ヲタ活」「推し活」の消費動向 ①

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略事業部 ソリューション戦略部 エキスパート 兼SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏

長田麻衣

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略事業部 ソリューション戦略部 エキスパート 兼SHIBUYA109 lab. 所長

総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。現在は毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。

周りの人とつながることで「推し」への愛をより深めていく (長田)

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長 小原直花氏

小原直花

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長

1992年入社。「生活者目線で消費動向を捉える」を軸に、「世代」「ファッション」「生活者の気分」を切り口として価値観やライフスタイルを分析。リサーチテーマは「インスタ世代」「コロナ禍により変わること・変わらないこと」「この先シニアのライフスタイル」「サステナブルと生活者にとっての心地よい暮らしのイメージ」など。

情報収集過程自体がエンターテインメントやレジャーになっている (小原)

コロナ禍におけるZ世代の行動変容

伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 室長 小原直花氏(以下、小原):私が室長を務める伊藤忠ファッションシステムのナレッジ開発室では、生活者の価値観や消費行動の変化について、「世代」「気分」「見た目」という観点から調査・分析しています。上は70代、下は20代までをリサーチ対象としているのですが、本日は主にZ世代といわれる若者の消費行動についてお伺いできればと考えていますので、よろしくお願いいたします。

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント マーケティング戦略事業部 ソリューション戦略部 エキスパート兼SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏(以下、長田):私は、SHIBUYA109エンタテイメントのマーケティング戦略事業部に所属し、2018年には若者研究機関として「SHIBUYA109 lab.」を設立しました。ここでは、SHIBUYA109のターゲット層である「around20」、具体的には15歳から24歳までの男女の価値観や実態について日々さまざまな調査を続けています。

小原:昨今の新型コロナウイルスの影響によって、若者たちの意識や行動にはどのような変化が見られますか。

長田:やはり外出をする機会が減ったことが大きな影響を与えていますが、基本的には変化に対してポジティブに順応している人が多いように感じています。例えば、カフェや居酒屋などに行けなくなってしまった代わりに、「おうちカフェ」や「おうち居酒屋」などが流行しています。自炊をしたり、テイクアウトの料理を素敵なお皿に盛り付けるなどして、自宅でお店気分を味わうということをしている人が増えていますね。

小原:コロナ禍によって社会の状況が大きく変わったことに対して、上の世代になるほど「早く元の世界に戻りたい」と考える傾向が強く、一方で若い世代は今の状況を受け入れ、楽しもうとする柔軟性や順応力があると私たちも感じています。ちなみに、「おうちカフェ」や「おうち居酒屋」を楽しんでいる人たちは、その様子をSNSなどに投稿しているのですか。

長田:そうですね。外出がしにくい状況になったことで、屋外での写真をInstagramなどに投稿することにはだいぶ気を使っているようで、その分「おうちカフェ」などをしている様子を画角やフィルターなどにこだわって投稿しています。いかに可愛く見せるかということへの熱量は本当に凄いと感じますが、その背景には外出ができないからこそ、周囲の人たちとコミュニケーションを取りたいという強い思いがあるのだと思います。

小原:友人とのコミュニケーションの取り方も変わってきているのでしょうか。

長田:昨年はオンライン飲み会が流行りましたが、最近は本当に仲の良い友人とZoomやLINE、電話などを使って一対一で話をすることが多いようです。また、ゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』などもそうですが、ゲームやテレビなどのコンテンツをオンライン上で友人と共有しながら楽しむ傾向も見られます。コロナ禍で外出頻度が減っているからこそ、限られた時間に誰と会うか、どう過ごすかということを考えて行動するようになっており、本当に仲が良い人、大切にしたい人と一緒に過ごす時間を重視するようになっていると感じます。