若者世代を中心に広がる「オタク」消費の現在
[対談]長田麻衣氏 × 小原直花氏 Z世代に見る「ヲタ活」「推し活」の消費動向 ④
調べる「過程」を楽しむZ世代
小原:美容やファッション、スポーツなどで自分の「好き」や「こだわり」を軸に、「モノ」や「コト」、「人」との関わりを強めていく傾向は、若者に限らずあらゆる世代に広がっているようにも感じています。例えば、松山英樹さんのマスターズ優勝を受けて、ゴルフ関連のアイテムが売れたり、本格的なレッスンを始める人が増えたと聞きます。当の本人たちには、「ヲタ活」の意識はないと思いますが、ゴルフを軸に消費をしたり、ゴルフ仲間と食事をしたりしてつながりを育んでいくというのは、ある種オタク的なお金や時間の使い方とも言えそうです。
長田:ゴルフにフォーカスすることで新たなコミュニケーションの軸が生まれているというのは、若者が「推し」をコミュニケーションツールにして、自分が生きやすいコミュニティをつくっていく感覚に近いのかもしれません。
小原:一方で上の世代は「応援」というマインドが中心にあるわけではなく、あくまでも自分がゴルフをプレイすることが軸になっていて、その点はZ世代と異なるように感じます。
長田:紐づくものが「人」か「モノ」かという違いがあるのではないでしょうか。上の世代がゴルフそのものに魅力を感じて「モノ」に執着するのに対して、若い世代の「ヲタ活」はあくまでも「人」が中心。その人の行動を支えている背景のストーリーなどを非常に大切にしていて、「過程」を楽しんでいるところがあるのだと思います。
小原:そうしたストーリーを深掘りしていくためのツールは、やはりSNSが中心になるのでしょうか。
長田:SNSでさまざまな情報を得ていることは間違いありませんが、その中で「信頼できる情報はどれなのか」ということを吟味している印象です。その際にポイントになるのは、「信頼できる人の情報なのか」、「その投稿に熱量はあるのか」という点です。消費行動においても若い世代は失敗をしたくないという気持ちが強いので、情報収集にはとても時間をかけています。そのため、ブランドや商品のPR目的の投稿などはすぐに見抜かれてしまうところがありますが、仮にPRだったとしても、発信している人の思いが伝わればそれを消費することもある。やはり、誰がどのように伝えているのかというところが重要なのだと思います。
小原:以前に大学生の人たちにお話を聞いた時は、例えばコスメを買う場合にしてもSNSで色々な人の投稿を調べた上で、最終的にはメーカーのWebサイトで商品の内容についてよく確認してから買うという人が多かった記憶があります。また、こうした一連の情報収集自体がエンターテインメントやレジャーになっていると聞いたこともあります。
長田:そうですね。いまのコスメの話にしても、公式な情報を企業のサイトで確認することはもちろんですが、その企業がどんなスタンスで商品をつくっているのかという部分まで見ている人は多いと思います。また、コロナ禍の現在はなかなか都心に行きにくくなっていますが、コロナが収束したらまた買い物に出たいという若い人たちは非常に多く、その理由を聞くと、買い物のプロセス自体を楽しんでいることがよくわかります。SHIBUYA109でもそうですが、買い物に行くと自分が知らなかったいろいろなものを見たり、お店の人から話を聞くことができて、それ自体がエンターテインメントとして成立しているんですね。その背景には、一つに決めたくないという思考も働いているのだと思います。
小原:いろいろな可能性を探ってみたい、楽しみを増やしていきたいという感覚があるのでしょうか。
長田:これは、若い人たちがSNSのアカウントを複数使い分けていることにもつながる話だと思います。彼・彼女たちの中では、自分のことにせよ、他人のことにせよ、「あなたはこうだ」と決めつけるのではなく、いろいろな顔があることが当たり前だという考え方がスタンダードになっています。一つに決めることなく、いろいろなジャンルのものを取り入れていきたいという思いがあるからこそ、リアルな場で買い物をすることに価値を見出しているのだと思います。
小原:オンラインが日常化しているからこそオフラインの異日常化、価値の再構築が求められていきそうですね。そして、Z世代の肯定感を生む「ヲタ活」というポジティブ行為から広がる新たな世界が楽しみになってきました。本日はありがとうございました。
