変わる「時間」の概念 新たな体験価値の提供へ
CASE① 株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
コロナ禍で生活様式が大きく変わり、オンライン化が浸透する中、限られた時間を有効活用するサービスやアプリなどが若い世代を中心に広がっている。生活者における「時間」の概念も変わりつつある昨今、「時短」や「スキマ時間」などをキーワードに、新たな切り口のサービスや事業を展開する企業を取材した。
インターネット世代の感覚に寄り添う6秒CMという新たなアプローチ
マーケティング領域における総合的なソリューションを提供する株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ(ADK MS)が、6秒CMをテーマにした地上波番組『3人の鬼才・六秒世界』(2021年3月20日放送)を企画・制作した。6秒CMの制作舞台裏に密着した本編に加え、CM枠もすべて6秒という挑戦的な番組を制作した同社に、本企画の背景やデジタル広告の領域で注目される6秒CMの可能性などを聞いた。
6秒CMのみで構成された地上波番組
「顧客を資本と考える顧客体験創造会社」を事業ビジョンに掲げるADKグループでは、多様化する消費者一人ひとりに合わせた魅力的な体験をあらゆる接点で提供し、消費者をファンへと育成させることで、クライアントのビジネスの成長に貢献していくことを目指しています。今年3月にはADK MS内にデジタル&データドリブン系ソリューションを専門領域とする新しい事業ブランド「ADK CONNECT」を立ち上げ、その活動の一環として6秒CMをテーマにした地上波番組を制作しました。
番組では3人のクリエイターがクライアントを訪問し、6秒CMを制作するまでの過程を追いかけました。テレビCMでは15秒、30秒が基本フォーマットとなっていて、異なる尺には対応できないという放送局も少なくないのですが、本企画によって、デジタル広告で浸透しつつある6秒CMならではの価値を見出したいという強い思いがありました。番組を通じて、3人のクリエイターそれぞれのアプローチによって6秒CMの新たな魅力や可能性をお伝えできたと感じています。
スキップを前提にしたデジタル広告
主にオンライン動画サービスで使われている6秒CMは、視聴者がCMをスキップすることを前提につくられたフォーマットです。特にインターネット文化に慣れ親しんだ若者世代にとって、15秒や30秒という既存のテレビ広告の尺は長く感じられるでしょうし、今回の企画のようにテレビにおいても6秒CMを展開していくことで、若い世代にとっても親しみやすいものになるのではないかと期待しています。
企業側にとっても、例えば「週末のセールのお知らせ」といったコンテンツを金曜日に繰り返して流すなど、短尺を生かしたクリエイティブ手法によって、一つのメッセージを印象的に伝えられるという利点もあります。こうした6秒CMならではの特徴を企業や放送局、視聴者に啓蒙しながら、既存のテレビCM枠にとらわれない環境をつくっていくことが今後の課題だと考えています。
「時短」だけがすべてではない
特に若い世代は、CMをスキップするだけでなく、ドラマやアニメなどのコンテンツを倍速で再生することも多いといわれ、その背景には、周囲の話題に追いつくために効率的に情報を得たいという心理があります。一方で、一人で没頭したいコンテンツに関しては倍速にこだわらないですし、15秒を超えるデジタル広告でもスキップされないものもあります。
メッセージを届ける側として大切なことは、彼らが心地良いと感じられる温度感や、誰かに伝えたくなるようなコンテンツを意識して、情報を発信していくことです。6秒CMはそのための有効な選択肢の一つになり得ますし、メディアを超えた連携や視聴者参加型の企画などが展開しやすいフォーマットでもあります。8月には『3人の鬼才・六秒世界』の第2弾放送が決まっていますが、今後も地上波における6秒CMの有効性を検証し、その可能性を継続的に模索していくつもりです。