令和時代のコラボレーション最前線
CASE❶ 全日本空輸株式会社 / 株式会社ハセガワエスティ
苦境に立つ両社の強みを掛け合わせピンチをチャンスに変えたコラボレーション
2021年5、6月の計7日間にわたって、ANA国際線で使用されているボーイング777を貸し切り、機内で行う結婚セレモニー「THE WEDDING with ANA〜機内ウェディング〜」が実施された。コロナ禍によって苦境に立たされている航空業界、ブライダル業界の2社によるコラボレーションによって、計7組のカップルに唯一無二の体験を提供した本プロジェクトの担当者を取材した。

芳賀一樹氏
全日本空輸株式会社 CX推進室 レベニューマネジメント部

阿久津五代子氏
株式会社ハセガワエスティ 代表取締役社長

芳賀一樹氏
全日本空輸株式会社 CX推進室 レベニューマネジメント部

阿久津五代子氏
株式会社ハセガワエスティ 代表取締役社長 課長
きっかけはANAの社内公募企画
「THE WEDDING with ANA」は、駐機機体の活用をテーマに実施された全日本空輸株式会社(ANA)の社内公募企画がきっかけで生まれた。「コロナ禍によってブライダル業界が打撃を受けていたこと、結婚式の延期や中止を余儀なくされたカップルが多かったことなどが企画立案の背景にありました」とANAの芳賀一樹氏は振り返る。この事業案が社内で採択されたことを受け、羽田空港で結婚式のプロデュースなどを行ってきた株式会社ハセガワエスティが加わることとなった。同社代表取締役社長の阿久津五代子氏は、「時間や予算、安全面などさまざまな観点から実現可能な方法について両社で議論し、空港や機内でしかできない演出などを考えながら、概要を固めていきました」と説明する。
そして、ANA側が関係各所への許可申請や、機長、CA、運営スタッフらのアサイン、各メディアへの広報などを担当し、ハセガワエスティ側が演出をはじめとした式の準備、新郎新婦との新規接客やプロデュース、参加者とのコミュニケーションなどを担う形でプロジェクトを進めることになった。
異例の短期間で進められた準備
結婚式の日取りは半年ほど前に決めるのが通例だが、今回は航空機の使用期間が決まっていたことから、募集開始が実施日の1カ月半ほど前となった。「集客面の不安は拭い切れず、実施のための準備も時間との戦いでした」と芳賀氏。それを乗り越えることができたのは、両社に「結婚式を諦めていたカップルの方々を勇気づけたい」、「今しかできない特別な体験を提供したい」という強い思いがあったからこそだという。両社の担当者が昼夜を問わず準備を進め、結果的に多くのメディアで取り上げられることとなり、SNS上での反響も大きく、予想を超える応募が集まった。「早々にANAマイレージクラブ会員のお客様からのお申し込みもあるなど、ANAの会員の皆様との強い絆や熱量を感じました」と阿久津氏。
最終的には、挙式の予定日がすべて緊急事態宣言の期間と重なってしまい、難しい判断が迫られたが、「両社で情報を随時共有し、お客様のご意向も伺った上で、細心の注意を払い、無事に7組すべての挙式を行うことができました」と両氏。
両社をつないだ共通の企業風土
さまざまな面でハードルが高い取り組みだったが、「お客様から喜びや応援の声をいただけたことは何よりもうれしかったですし、厳しい状況にある業界の企業同士が強みを生かし合うことで、ピンチをチャンスに変えることができることも実感しました」と両氏。その中で、両社が大切にしたのは、「相手をリスペクトすること」、「相手の利益を考えること」だった。「両社に『ホスピタリティ』という共通の企業風土があったことも、プロジェクトを進める上で大きかったように思います」と阿久津氏。
今回の取り組みは、あらゆる常識を揺るがしたコロナ禍に希望を見出し、異なる業界の企業がタッグを組むことで固定観念を覆すことができた有意義な企画になった。芳賀氏は「今後も社会の状況を見ながら、異業種とのコラボレーションを通じてさまざまな企画を実現していきたい」と抱負を語る。


