令和時代のコラボレーション最前線
【COLUMN】株式会社レコオーランド
デザイナーの感性でブランドに変化をファッション業界のコラボレーション最新動向
現代アートやポップカルチャーなどへの接近、異なるスタイルを持つブランド同士の協業など、ファッション業界においていまやコラボレーションは常套手段となり、その形も多様化の一途をたどっている。近年では、ライバル関係にあると思われるブランド同士の協業などにも注目が集まる中、業界におけるコラボレーションの系譜や近年の潮流について、FASHIONSNAP.COM ファッションディレクターの小湊千恵美氏に聞いた。

小湊千恵美氏
株式会社レコオーランド FASHIONSNAP.COM ファッションディレクター
2000年代に加速したコラボレーション
ファッション業界にコラボレーションが広がる契機となったのは、「LOUIS VUITTON」とアーティストの村上隆氏が2003年に行ったコラボレーションでした。ポップカルチャーの要素が強いアーティストとのコラボレーションは斬新でしたし、アート的な価値を高めるという点でラグジュアリーブランドとの相性も良かったのだと思います。その後、機能性を追求するラグジュアリーブランドとスポーツメーカーの協業が目立つようになり、「モード×ストリート」の潮流が強まる中で、ラグジュアリーブランドとストリートブランドのコラボレーションなども生まれました。
近年では、アニメやゲームなどポップカルチャーとのコラボレーションも盛んです。この背景には、幼少期からこれらの文化に触れてきた若い世代の台頭があり、ファッションにとどまらないクリエイティブディレクターやデザイナーの感性を生かすことで、ブランドに変化を起こそうとする流れが強まっています。
ブランドの「ストーリー」を掛け合わせる
ラグジュアリーブランドが歴史や技術など自分たちのバックグラウンドを大切にする傾向が強まる中で、ブランドやデザイナーが持つ「ストーリー」を掛け合わせていくようなコラボレーションも増えています。中でも大きな話題となったのは、「GUCCI」と「BALENCIAGA」の協業です。同じグループ傘下とはいえ、ライバル関係にある両社が「ハッキング」という言葉を用いて行った協業では、奪いたくなるような魅力を持つ相手ブランドへの畏敬の念が表現されており、お互いのデザイナーが楽しみながら取り組んでいる様子が伝わってきました。
こうしたデザイナー同士のコラボレーションには、「VALENTINO×UNDERCOVER」、「Dior×sacai」、「FENDI×ANREALAGE」など、日本人デザイナーが関わっているケースが少なくありません。また、最近では「UNIQLO」や「H&M」などのグローバルSPAが、「Mame Kurogouchi」や「TOGA」など日本の女性デザイナーを起用するケースも見られ、これらは多様なルーツを持つデザイナーが世界のメインストリームにタッチし、一定の評価を得ていることの現れではないかと思います。
コミュニティから生まれる協業の形
日本のブランドが関わるコラボレーションが増えている要因として、もう一つ見逃せないのは、デザイナーやクリエイター同士の交流を中心にコミュニティが育まれていたかつての「裏原宿カルチャー」の影響です。事実、「Dior」、「LOUIS VUITTON」のメンズ アーティスティック・ディレクターをそれぞれ務めているキム・ジョーンズ氏やヴァージル・アブロー氏は、「裏原宿カルチャー」を中心とした1990年代の東京の文化に憧れを抱いており、彼らと友人関係にある日本人デザイナーとコラボレーションをすることも少なくありません。これらはまさに、ブランドやデザイナーが持つ「ストーリー」の掛け算だといえます。そして、ファンコミュニティの力が反映される協業にはやはり強さがあり、これは近年広がりつつある「ファッション×音楽」のコラボレーションなどにも共通することではないでしょうか。



