Managemant Eye

ゼロベースで存在意義を再定義する

「子どもの可能性をクリエイトし続けたい」

株式会社ファミリア 代表取締役社長 岡崎忠彦氏
株式会社ファミリア 代表取締役社長
岡崎忠彦

この企画はリレー形式で展開していますが、今回は株式会社ユーハイムの代表取締役社長 河本英雄氏からのバトンとなりました。

神戸を拠点としていることもあり、河本さんとは長いお付き合いがあります。当社が出版したアップルパイの絵本と、ユーハイムのアップルパイのセット販売など、お互いの持ち味を生かしたコラボレーション企画も継続的に行っていて、とてもいい関係を築いています。

グラフィックデザイナーからの転身。アパレル業界についてどのように感じられましたか。

当社は、1950年に祖母を含めた4人の「ママ友」が、「自分の子どもに着せるつもりで服をつくろう」という思いから始まりました。その後、百貨店の成長とともに事業を拡大しましたが、バブル経済崩壊後は苦戦を強いられました。僕は、留学先のアメリカでグラフィックデザイナーの道を歩んでいましたが、2003年に、当時社長だった父から「デザインを立て直してほしい」といわれ、本格的に手伝うようになったのです。身を投じてみると、アパレル業界の商習慣や仕組みには違和感を覚えることばかり。例えば、「セール」。ファミリーセールでブルーシート上にたくさんの自社製品が並べられて売りさばかれている光景を見て、驚きました。せっかく思いを込めてつくったものを、なぜ価値を下げてまで売るのか……と。また、社内では「予算比80%ですが、前年比95%なので大丈夫です」などと、「前年比」という言葉がよく使われていました。「ファミリアらしさ」という言葉もよく聞き、その「らしさ」も社員ごとに違ったりするわけです。つまり、それらは言い訳なんですね。企業も年を経ると、商習慣に疑問を抱かず、自分たちがフォーカスすべきものもぼやけてくることを実感しました。

2011年に社長に就任されました。「子どもの可能性をクリエイトする」という企業理念には、どんな思いがあるのでしょうか。

僕は経営の経験がないので、発想を変えて「雑誌の編集長」という視点からゼロベースで会社を再構築しようと考えました。そのためには、まずは原点回帰です。創業当時、当社は「ママ友」がつくった「ベンチャー企業」でした。現在の「ママ友」は、当時とは違ってSNSなどで自ら発信する力を持っており、そこをターゲットに課題を解決するというベンチャーマインドを生かすことに思い至りました。そして、全社で一つの方向性を共有する必要性を痛感し、生まれたのが「子どもの可能性をクリエイトする」という企業理念です。これは、これからのファミリアの存在意義でもあります。当初は、戸惑う社員に事例を示しつつ毎日理念を話し、同時にオフィスをオープンにしてコミュニケーションを取りやすい環境も整えました。すると、目に見えて社員の意識が変わっていったのです。

これからのファミリアをお聞かせください。

現在は子どもの「衣料」だけでなく、「食」や「教育」、「医療」といった分野にも領域を広げ、店舗も子どものワクワクを刺激する体験型に変えました。また、在庫は「アーカイブ」と呼び、セールをせず、オンライン上で「アーカイブマーケット」を開いています。商品の見せ方を編集し直すことで、商品の見え方も変わるのです。そして僕の願いは、日本のクリエイターとともに、メイドインジャパンのものづくりで川上から川下まで元気になること。そのためにも、僕たち一人ひとりが考える力を磨き、学びながら、子どもの可能性をクリエイトし続けていきたいと思います。

ファミリア神戸本店
ファミリア神戸本店では、「COLORFUL 子どもの個性を豊かにはぐくむ。」をコンセプトに、「食」、「教育」、「医療」に関する場も併設し、話題を呼んでいる。
SDGsの12の目標を自社商品やサービスに置き換える「編集」を施して表現
ファミリアでは、SDGsを「子どもの可能性をクリエイトする」という視点で捉え、12の目標を自社商品やサービスに置き換える「編集」を施して表現している。