「個」の時代に求められるマーケティング戦略とは
[出席者] *社名50音順 |
株式会社Kumarba 代表取締役社長 | 樋渡昇一郎氏 |
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ノイン株式会社 代表取締役 CEO | 渡部 賢氏 | |
株式会社ロコンド 代表取締役 CEO | 田中裕輔氏 | |
[司 会] | 伊藤忠商事株式会社 執行役員 ブランドマーケティング第二部門長 | 武内秀人 |
モノのコモディティ化が進み、消費者のニーズやコミュニケーションツールが多様化する時代において、一人ひとりの顧客に寄り添ったマーケティング戦略が求められている。こうした中、伊藤忠商事株式会社では2021年度に発表した中期経営計画の一つの柱として、「マーケットインによる事業変革」を掲げ、多様化する売り手・買い手の顕在・潜在ニーズを捉えた、川上から川下までのバリューチェーン変革による事業成長を目指している。本号では、マーケットインの発想から、顧客データを活用したサービスの提供やSNSマーケティングなどに取り組んでいる各社の座談会を通じて、繊維・ファッション業界が進むべきこれからの道筋を探る。
デジタルメディアやECサイトを主戦場に展開

伊藤忠商事株式会社 執行役員 ブランドマーケティング第二部門長 武内秀人(以下、武内):伊藤忠商事では、2021年度より中期経営計画を刷新し、基本方針の一つとして「マーケットインによる事業変革」を掲げています。そこで本日は、キャラクター、化粧品、ファッションという異なる領域で、マーケットイン発想のビジネスを展開されている皆様にお集まりいただきました。まずは、それぞれのキャリアと展開されている事業についてご紹介ください。
株式会社Kumarba 代表取締役社長 樋渡昇一郎氏(以下、樋渡):私は、2008年から9年間ほどテレビ番組の制作会社でディレクターの仕事を経験した後、ゲームを軸にしたIP(知的財産権)プロデュース事業を展開する株式会社アカツキに転職しました。アカツキには、マンガ、ゲーム、アーティストなどのIPをお借りして事業展開する部門と、オリジナルIPを創出する部門があり、私は後者で複数の事業を担当後、2019年にYouTubeでキッズ向けIPプロジェクト「クマーバチャンネル」をスタートさせました。その後、順調にチャンネル登録者数が増え、よりスピード感を持って事業領域を拡大すべく、2020年9月にアカツキの100%子会社として株式会社Kumarbaを立ち上げました。
ノイン株式会社 代表取締役 CEO 渡部 賢氏(以下、渡部):私は、後にLINEを展開するネイバージャパン株式会社に2008年に入社し、ウェブディレクターのキャリアをスタートしました。やがてLINEが生まれ、社会に浸透していく状況を目の当たりにする中で、「一つのプロダクトが世界を変えられる」ということを実感しました。その後、ゲーム事業などを展開するグリー株式会社に転職し、非ゲーム領域の新規事業開発の仕事を経験した後に独立しました。そして、さまざまな企業のプロデュース業務などを手がけた後、2016年にノイン株式会社を設立し、現在は化粧品に特化したECプラットフォーム「NOIN」を展開しています。
株式会社ロコンド 代表取締役 CEO 田中裕輔氏(以下、田中):私は、大卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社に就職し、在職中に留学したアメリカのシリコンバレーでさまざまな人たちと話をする中で起業に興味を持つようになりました。また、現地で靴のECサイト「Zappos(ザッポス)」の創業者であるトニー・シェイ氏の講演を聞き、その顧客至上主義の考え方に感銘を受け、帰国後は送料無料・返品無料という「Zappos」と同様のサービスを提供するECサイト「LOCONDO.jp」の立ち上げにインターンのような立場で関わりました。しかし、東日本大震災で事業は破綻寸前となり、立て直しのために自らが代表に就き、5年をかけて黒字化を果たしました。






