多様性の時代へ ~ジェンダーレス市場の最新事情~
取材先(社名50音順) | |||
株式会社エキップ athletia AD/PR マネジャー | 衣川沙織氏 | ||
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株式会社ミキモト 広報宣伝部 広報宣伝課 | 川那部志保氏 | ||
株式会社良品計画 衣服・雑貨部 アパレルMD担当 MUJI Labo マネージャー | 山内良介氏 | ||
[COLUMN] | |||
株式会社LGBT総合研究所 取締役 | 東松秀典氏 |
[INTERVIEW] | |
株式会社明石スクールユニフォームカンパニー 常務取締役 営業本部長 | 柴田快三氏 |
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菅公学生服株式会社 取締役 カンコー学生工学研究所 本部長 | 曽山紀浩氏 |
株式会社トンボ 取締役 営業統括本部 副本部長 | 恵谷栄一氏 |
取材先(社名50音順) | |
株式会社エキップ athletia AD/PR マネジャー | 衣川沙織氏 |
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株式会社ミキモト 広報宣伝部 広報宣伝課 | 川那部志保氏 |
株式会社良品計画 衣服・雑貨部 アパレルMD担当 MUJI Labo マネージャー | 山内良介氏 |
[COLUMN] | |
株式会社LGBT総合研究所 取締役 | 東松秀典氏 |
[INTERVIEW] | |
株式会社明石スクールユニフォームカンパニー 常務取締役 営業本部長 | 柴田快三氏 |
菅公学生服株式会社 取締役 カンコー学生工学研究所 本部長 | 曽山紀浩氏 |
株式会社トンボ 取締役 営業統括本部 副本部長 | 恵谷栄一氏 |
先日閉幕した東京五輪は、LGBTQアスリートの出場が史上最多となり、男女混合種目も前回のリオ五輪から倍増するなど、世界的に高まるジェンダー平等への意識が可視化された大会となった。「ジェンダー平等の実現」はSDGsの達成目標の一つにも設定されており、企業活動にも大きな影響を及ぼすものとなっている。ジェンダーにとらわれず、自分らしさを表現しようとする価値観が若い世代を中心に広がる中、本号では、ユーザーの性別を限定しないブランドや商品を展開する企業への取材を通じて、多様性の時代において存在感を強めているジェンダーレス市場の最新事情に迫る。
「自分らしさ」を求める価値観やライフスタイル
ジェンダーレス市場の背後にある価値観
「自分らしさ」が重視される多様性の時代において、衣料品や化粧品、宝飾品などの領域を中心に、ジェンダーレス市場が拡大している。各社がジェンダーレスを意識した商品を展開する中、とりわけ注目を集めた取り組みの一つが、日本が世界に誇るジュエリーブランド「ミキモト」と、「コム デ ギャルソン」のコラボレーションだ。男性がパールをつけるという新たな価値観を市場に広めるきっかけとなった取り組みについて、株式会社ミキモト 広報宣伝部の川那部志保氏は、「男性の美意識が高まる中でパールのネックレスの認識が変わった印象があるが、『コム デ ギャルソン』とのコラボレーションが大きなきっかけとなり、クラシックな『ミキモト』のパールの受け取られ方が変わった」と振り返る。ファッション界の常識を覆してきたブランドとのコラボレーションが新たな顧客獲得にもつながったミキモトは、今後も性別・世代を超えて幅広い層にパールの魅力を発信していく構えだ。
男性の美意識の高まりとともにジェンダーレスコスメ市場も隆盛しているが、中でも全体のおよそ3割を男性客が占めるなど、性別を問わず広く支持されているのが、スキンケア&ライフスタイルブランドの「athletia(アスレティア)」だ。化粧品ブランド「RMK(アールエムケー)」「SUQQU(スック)」の展開でも知られる株式会社エキップでathletia AD/PR マネジャーを務める衣川沙織氏が、「お客様は、成分表記などをよく確かめてから買われる方が多く、自分が使うものに対して非常に意識的だと感じる。特に最近、伸長率の高い顧客層である30代以下のお客様は、消費行動を通じて自分の価値観やライフスタイルを表現しようとする姿勢が見られる」と語るように、拡大するジェンダーレス市場の背景には、高まる男性の美意識のみならず、自らの価値観やライフスタイルを表現できるブランドを選びたいという消費者心理も大きく影響しているようだ。
多様化する市場といかに向き合うのか
生活者の価値観が大きく変化する中、企業側には多様化する消費者に寄り添う姿勢がより一層求められている。「無印良品」が限定店舗とECサイトにおいて展開する「MUJI Labo(ムジラボ)」は、2019年に性別、年齢、体型を問わない服づくりを掲げ、男女の垣根をなくした。株式会社良品計画の衣服・雑貨部 アパレルMD担当 MUJI Laboマネージャーの山内良介氏は、「近年はファッショントレンドとしてのジェンダーレスも広がっているが、当社が大切にしているのは、より多くの人の役に立つものをつくること。必要なものを必要なだけつくるというコンセプトにより、性別のみならず、年齢や体型などの観点から汎用性のある服づくりを目指している」と語り、ジェンダーレスは、多くの人たちに必要とされるものをつくるというブランドの目的を実現する一つの手段に過ぎないことを強調する。
自然、環境、社会に配慮する「クリーンビューティ」の考え方を掲げる「athletia」も同様に、ジェンダーレスであることは、誰もが自分らしい生活が送れる社会を目指すブランドのビジョンを実現するための前提であるという姿勢を示す。エキップの衣川氏が、「地球や自然環境などについて考える上で性別は関係なく、『人』としてできることを意識している。ジェンダーに限らず、ブランドとしての取り組みを包み隠さずお示しした上で、お客様に選択していただくという姿勢が大事だと考えている」と語るように、市場を性別や世代でセグメントするのではなく、ブランドの姿勢やビジョンに共感する消費者を顧客として捉えていくような考え方が、これからのスタンダードになっていくのかもしれない。
企業の姿勢を明示し独自の価値を提供する
ジェンダーに関する企業の発信がSNSなどを中心に消費者の反発を招くケースも散見される中、ジェンダーに関する理解を深めることが急務であることは間違いない。同時に、企業やブランドとしてジェンダーレスの概念をいかに捉え、どのような価値を顧客に提供していくのかという意思を明確に示していくことも重要になるだろう。良品計画の山内氏は、「性差のない服から、男性らしさや女性らしさを意識した服までさまざまな選択肢があることが『多様性』だと捉えている。当社としては、多様化するニーズすべてに対応するのではなく、『無印良品』が大切にしてきた『これでいい』という価値観のもと、本当に必要なものだけをつくっていきたい」と語り、つくる洋服の品数を必要最低限に絞るという考え方を広めていこうとしている。
他方で、長い歴史や確固たる理念を持ち、既存の顧客と深い関係を結んでいる企業やブランドほど、新しい価値観を発信していくことに勇気が求められることもまた事実だろう。ミキモトの川那部氏が、「『ミキモト』のパールは親から子へと継承されるケースも多いが、商品が若い世代の価値観にそぐわなければそれ以上は広がらない。一方で、若い世代に浸透している“シェア”の文化は『ミキモト』を知ってもらうきっかけにもなる。歴史や技術など、クラシカルな部分は守りつつ、ジェンダーレスのジュエリーやスカーフのようなジュエリー以外の商品など、新しい商材に挑戦し続けることで認知を広げていきたい」と語るように、多様性の時代には、生活者の価値観の変化に寄り添いながら、自社のビジネスをアップデートする姿勢が求められている。


