多様性の時代へ ~ジェンダーレス市場の最新事情~
CASE❷ 株式会社ミキモト
パールの固定観念を払拭するトップジュエラーの新たな挑戦
2020年、「ミキモトパール」として世界中の女性たちを魅了してきた株式会社ミキモトが、同じく日本が誇るファッションブランド「コム デ ギャルソン」とコラボレートし、「男性がパールをつける」という新たな価値観を提案した。この革新的な取り組みは瞬く間に反響を巻き起こし、パールのネックレスを身につけた男性を街中で見かける機会も増えつつある。性別・年齢を問わずパールの魅力を広く発信している同社を取材した。

川那部志保氏
株式会社ミキモト 広報宣伝部 広報宣伝課
2大ブランドのコラボレーション
天然での産出が稀なパールは、富や名誉の象徴として時代や性別を超えて高貴な方たちを魅了してきた歴史があります。1893年に当社創業者の御木本幸吉が世界で初めて養殖に成功したことで、パールは手が届きやすいものとなり、それ以来、ミキモトでは「世界中の女性を真珠で飾りたい」という創業者の思いを引き継いできました。その過程の中で、いつしか日本においてパールのジュエリーは、女性が冠婚葬祭などの場で身につけるものだという固定観念が定着し、そこに少なからず課題意識を持つようになりました。
こうした中で2020年にスタートしたのが、「ミキモト コム デ ギャルソン」でした。
男性がパールをつける文化が定着
「ミキモト コム デ ギャルソン」はすでに2回のコレクションを発表していますが、どの商品もパールそのものの強さと美しさを強調したものです。当社の高い技術に支えられる伝統的な「ミキモトパール」の美しさと、「コム デ ギャルソン」ならではの強さや反骨精神が融合したジュエリーは、男性著名人の方々がSNSに投稿された写真などが大きな反響を呼び、感度の高い男性のお客様など新しい層との接点をつくることができました。
今回のコラボレーションは、「コム デ ギャルソン」と「ミキモト」という2つのブランドにしか実現し得なかったものだと思いますし、発売開始以降、パールのネックレスを着用されている若い男性の姿が街中でも見られるようになり、新たな文化が定着しつつあると感じています。この取り組みを通じて大きな気づきを得た私たちは、今後もジェンダーに関わらずパールをお楽しみいただけるさまざまな商品を展開していくつもりです。
性別・年齢を超えて「本物」を伝える
「ミキモト」の最新グローバル広告においても、ブランドとして初めて男性モデルがパールを身につけ、マスキュリンにスタイリングした女性モデルが黒いパールを着用しており、性別を問わず自由にパールを身につけていただきたいというブランドのメッセージを伝えています。
最近は、SNSでもパールを着用した男性のビジュアルを投稿すると非常に反応が良く、パールに興味を持たれる男性が増えていると肌で感じています。一方で、ヨーロッパのようにTシャツやデニムなどカジュアルな服装にパールを合わせる文化が定着していない日本では、若い女性がパールを手に取りにくい環境があります。こうした中で、「ミキモト」らしい品性や端正さというブランドの核はぶらさずに、性別や年齢を超えて幅広いお客様に「本物」を知っていただく多様な機会をつくっていきたいと考えています。

