多様性の時代へ ~ジェンダーレス市場の最新事情~
【COLUMN】株式会社LGBT総合研究所
多様化する生活者のニーズを捉え価値ある選択肢を提供する
多様化が進む社会において、性的指向や性同一性などさまざまな性のあり方に目を向け、生活者一人ひとりに寄り添うインクルーシブな企業活動が求められている。2016年に博報堂DYグループの事業会社として設立され、LGBT・性的少数者に関する調査や研修、マーケティング支援などを行う株式会社LGBT総合研究所に、広がりつつあるジェンダーレス市場の背景にある生活者の意識や企業に求められる姿勢などを聞いた。
東松秀典氏
株式会社LGBT総合研究所 取締役
「自分らしさ」を重視する現代の生活者
ジェンダーレスの機運が世界的に高まっている背景には、多様化する社会における価値観の変化があります。近年は若い世代を中心に、従来の「男性らしさ」、「女性らしさ」にとらわれず、「自分らしさ」を重視する生活者が増えており、その一つの要因としてインターネットやSNSの存在が挙げられます。例えば、以前は同じセクシュアリティの人とつながることが難しかった性的少数者の人も、今やインターネットやSNSを使うと、輝かしい活躍をされている当事者の情報を簡単に取得できるようになりました。このロールモデルの存在が、「自分らしく生きたい」と考える人たちの心の支えになっている側面がありますし、消費行動においても、流行や性差にとらわれず、自分の感性に訴えかける商品・サービスへ積極的に投資をする傾向が強まっています。こうした動きを受けて、ジェンダーレスを意識した商品開発やマーケティング、売り場づくりも世界的に進められているのです。
日本企業のジェンダー意識の現状と課題
日本企業においてもジェンダーへの意識は高まっていますが、男性は外で働き、女性は家を守るという価値観が根強く残っていることも事実です。現場担当者からLGBTやジェンダーレスのマーケティングに関する相談をいただいたものの、決裁者との合意形成が図れずに取り組みが止まってしまうケースもあり、ジェンダー意識の世代間ギャップといかに向き合うかがこれからの課題だと感じています。
近年は、従業員に対して、LGBT・性的少数者やジェンダーに関する研修を実施したり、ダイバーシティ推進のための部署を新設するなど、日本の企業もさまざまな施策を行っています。しかし、顧客に対する取り組みは徐々に広がりつつある段階です。そのため、今、企業に何よりも求められているのは、多様化する生活者のニーズを察知し、価値のある選択肢を提供していくことだと考えています。
企業に求められるのは「個」に寄り添う姿勢
ジェンダーレスの潮流を市場として捉えると、市場自体が顕在化しているとは言い難いのですが、正しく向き合っていくことでビジネスのチャンスは広がります。しかし、発信する内容に誤解や偏見があったり、取り組みの意図が正しく伝えられていないようなケースも少なくありません。だからこそ、ジェンダー平等、ジェンダーレスの価値観を持つ生活者と商品・サービスを共創し、共感の輪を広げていくインクルーシブな姿勢が重要になると考えています。
多様化が進む社会の中で、今後もジェンダーレスに限らず、時代の潮流を反映した新たな市場が多く生まれてきます。これらの市場に向き合う上で共通して求められるのは、「個」に寄り添うという前提のもと、生活者が求めているものを理解し、そこに対してどんな価値を提供していくのかという意志を、企業として明確に示していくことではないでしょうか。
