自然回帰のライフスタイルとワークスタイル
取材先 (社名50音順) |
株式会社アーバンリサーチ | 第二事業部 TINY GARDEN事業 ブランドディレクター | 中馬剛仁氏 |
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「TINY GARDEN 蓼科」店長、企画・地域コーディネーター | 粟野龍亮氏 | ||
株式会社アールシーコア | 社長室 広報企画 リーダー | 木村 伸氏 | |
[COLUMN] | 株式会社第一プログレス | 代表取締役社長 『TURNS』プロデューサー | 堀口正裕氏 |
取材先(社名50音順) | |
株式会社アーバンリサーチ 第二事業部 TINY GARDEN事業 ブランドディレクター | 中馬剛仁氏 |
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株式会社アーバンリサーチ 「TINY GARDEN 蓼科」店長、企画・地域コーディネーター | 粟野龍亮氏 |
株式会社アールシーコア 社長室 広報企画 リーダー | 木村 伸氏 |
[COLUMN] | |
株式会社第一プログレス 代表取締役社長 『TURNS』プロデューサー | 堀口正裕氏 |
コロナ禍によって生活者の価値観が大きく変化する中、さまざまな人やモノ、情報に囲まれた都市から離れ、豊かな自然の中で時を過ごすことへの関心が高まっている。キャンプやアウトドアなど自然を身近に感じられるレジャーの人気も高まる一方で、リモートワークの普及により、自然豊かな地域への移住やワーケーション、オフィス機能の移転などの動きも広がりをみせている。豊かな自然の中で過ごす時間は、個人の「ウェルビーイング」から組織の生産性の向上までさまざまな効果をもたらしてくれることも実証されている。本号では、自然と共生するライフスタイルやワークスタイルを提案する各社への取材を通じて、ウィズコロナ・アフターコロナ時代の企業の在り方や、新たなビジネスのヒントを探る。
自然に触れることで得られる多様な満足を求めて
コロナ禍で高まった自然回帰の欲求
コロナ禍においては屋内空間が敬遠される一方、「三密」を回避できる公園などへの人出が増え、さらに山や海といった自然豊かな環境を求める生活者が増加した。2019年に長野県茅野市にオープンした「TINY GARDEN(タイニーガーデン)蓼科」は、こうした都市生活者の自然回帰の欲求を、それぞれのレベルに合わせて満たしてくれる場所だ。施設を運営する株式会社アーバンリサーチのTINY GARDEN事業 ブランドディレクターである中馬剛仁氏は、「コロナ禍で公園などに出かける人たちが増え、その先にあるものとして注目されたのがキャンプだった。そして、自然から得られる情報量の多さに改めて気づいた人たちも少なくなかったのではないか」と昨今の自然回帰の潮流について分析する。同社では、施設と同様のコンセプト「湖畔と日常の新しい過ごし方」を掲げるブランド「EKAL(エカル)」も展開しており、自然と共生するライフスタイルを施設とブランドの2軸で提案し、新たな市場の開拓を目指している。
リモートワークの普及により、場所を選ばずに働ける環境が整いつつある中で、生活の拠点を自然がより豊かな地域に移す動きも見られる。住宅ブランド「BESS(ベス)」を展開し、近年、自然の近くでのびのびと暮らす「梺(ふもと)ぐらし」の提案を行っている株式会社アールシーコア 社長室 広報企画 リーダーの木村 伸氏は、「働き方が変化する中で、都心から離れた場所で『BESS』の家に暮らすことへのハードルが下がっている。その中で当社は、『クラシガエ』などを提案しながら、自分たちが大切にしてきた暮らしの価値観をより広い層に届けることに努めている」と話す。コロナ禍には単独展示場「LOGWAY(ログウェイ)」の貸切暮らし体験、またこの10月には新商品・走るログ小屋「IMAGO(イマーゴ)」を発売するなど、従来のアウトドアやDIY愛好者にとどまらず、新たな層との接点づくりに注力している。
広がる多拠点居住やワーケーション
近年は、自然が豊かな地域と都市部を行き来する2拠点生活などのライフスタイルも注目を集めている。1990年代後半から自然豊かな田舎での暮らしを提案するメディアを複数運営し、現在は雑誌『TURNS(ターンズ)』のプロデューサーを務めている堀口正裕氏は、「最近は多拠点居住においても、都市よりも自然豊かなローカルに軸足を置く人たちが多くなっている印象がある。また、『農』や『食』に関心を持つ人たちが目立って増えており、その背景には自然なくしては生きていけないという意識や、生命力を自ら高めていきたいという欲求があるのではないか」とウィズコロナ時代の人の動きや価値観の変化について語る。
自然が豊かな環境は、個人の「ウェルビーイング」を高めるだけでなく、仕事の生産性・創造性を向上させる効果もある。コロナ禍で働きながら休暇をとるワーケーションの利用が増えているという「TINY GARDEN 蓼科」店長の粟野龍亮氏は、「自然に囲まれた快適な環境は、仕事における創造性や集中力を高めてくれる。また、自然の中で過ごすオフの時間があることで、オンの時間に注ぎ込める力も増すのではないか」と自然がもたらす恩恵について語る。これは個人のワーケーションに限った話ではなく、本号で紹介している株式会社ルピシアをはじめ、企業が都心から自然豊かな地域へと本社を移転させる昨今の潮流の一因にもなっているのだろう。
自然との共生がもたらす未来
コロナ禍によって社会の在り方が問われている中、アールシーコアの木村氏は、「近年は行き過ぎた資本主義が指摘されているが、当社は以前から合理性や効率を追求することで失われるものがあると考えてきた。かねてから合理性よりも感性を重視する暮らしを提案してきた『BESS』は、今改めてそのメッセージを強く発信しており、ユーザーの方々もそうした暮らしを自ら選んだことに誇りを持たれている」と語り、その誇りが強固なファンコミュニティの求心力にもなっているようだ。さらに同社では、感性や文化を重視する日本的なビジネスの実践が社会に調和をもたらすという考えのもと、賛同する企業や大学との共創を通じて現代社会を再構築していくことを目指している。
「TINY GARDEN 蓼科」が、地域における人や資源、文化の循環を促すハブになることを目指しているように、自然と共生するライフスタイルやワークスタイルは、社会のサステナビリティを高める可能性も秘めている。『TURNS』の堀口氏が、「現状のワーケーションは一度きりの利用で終わってしまうケースが多いが、ワーケーションをする人たちが地域の事業者などと接点を持つことで新しい取り組みが生まれることもある。これからの企業は、ワーケーションの先にある地域と人のつながりを意識することが大切であり、事業者の意識が変わることで人の流れはよりダイナミックに変化する」と語るように、自然と向き合いながら地域のさまざまな循環を促していくライフスタイルやワークスタイルから、持続可能な社会やビジネスの在り方が見えてくるのかもしれない。


