コロナ禍で広がる「癒やし」消費の形

取材先
(社名50音順)
株式会社日比谷花壇 ホームユースマーケット事業推進室 マネージャー 谷 真由美氏
ハナノヒ運営グループ 田村朝紀氏
株式会社ミクシィ Vantageスタジオ Romi事業部 マネージャー 長岡 輝氏
森永乳業株式会社 営業本部マーケティング統括部 ビバレッジ事業マーケティング部 片岡由依氏
ロート製薬株式会社 べレアラボ 代表 星 亜香里氏
取材先(社名50音順)
株式会社日比谷花壇 ホームユースマーケット事業推進室 マネージャー 谷 真由美氏
株式会社日比谷花壇 ハナノヒ運営グループ 田村朝紀氏
株式会社ミクシィ Vantageスタジオ Romi事業部 マネージャー 長岡 輝氏
森永乳業株式会社 営業本部マーケティング統括部 ビバレッジ事業マーケティング部 片岡由依氏
ロート製薬株式会社 Vantageスタジオ Romi事業部 マネージャー 星 亜香里氏

1990年代以降、日本には幾度となく癒やしブームが起こり、アロマテラピー、料理、旅行、音楽、キャラクター、美容など、時代に応じてさまざまなモノやコトが生活者の癒やしのニーズを満たしてきた。癒やしブームが起こる背景には、不景気やストレスなど社会に対する生活者の不安があるといわれるが、コロナ禍による閉塞感が世界を覆った2021年もまた、癒やしをテーマにした数々のヒット商品、サービスが生まれた1年となった。年末特集となる本号では、生活者をさまざまなアプローチで癒やす商品やサービスを展開する企業への取材を通してこの1年を振り返るとともに、アフターコロナ時代のビジネスのヒントを探る。

生活者の気持ちに寄り添う「癒やし」というアプローチ

暮らしを整えるコロナ時代の癒やし

昨年に引き続きコロナ禍の日常を過ごすことになった2021年には、生活者の閉塞感やストレスを和らげる癒やしのビジネスが注目された。中でも、過ごす時間が増えた自宅の環境を彩り、心身を健やかにしてくれる商品やサービスの人気が高まっている。

2019年の設立以降、香りの研究や香りを通じた空間プロデュースなどを行ってきたロート製薬株式会社の「べレアラボ(BÉLAIR LAB)」は、コロナ禍にBtoC事業に着手し、アロマディフューザーなど香りを通じて生活環境を向上させる商品を展開している。コロナ禍において香りが果たした役割について、同ラボ代表の星 亜香里氏は、「コロナ禍によって香りには空間や気分を変える力があることを多くの生活者が理解するようになった。また、若い世代を中心に、香りを通じて心を落ち着けたい、精神統一をしたいというニーズも高まっている」と語る。各方面でメンタルケアの重要性が注目される中、香りを通じた癒やしによって心身の健康をサポートする製薬会社の新たなアプローチに今後も注目していきたい。

香りと同様に人気が高まっているのが花や植物だ。コロナ禍に会員数を伸ばした花のサブスクリプションサービス「ハナノヒ」を運営する株式会社日比谷花壇 ホームユースマーケット事業推進室のマネージャー 谷 真由美氏は、「癒やしのニーズはコロナ禍に始まったものではないが、自宅で過ごす余白の時間が生まれたことで、花に癒やしを求める人が増えた。手間をかけて花の世話を続けることで、心が落ち着く側面があるのではないか」と花が与えてくれる癒やしの効能について考察する。オンとオフの境界が曖昧になったコロナ禍に改めて注目された「ルーティンワーク」と同様に、毎日の花の世話を通じて自宅の環境や自らの心を整える行為は、ウィズコロナ時代ならではの癒やしの形といえそうだ。

癒やしから生まれた新たな関係性

森永乳業株式会社の「マウントレーニア 深い癒やしプロジェクト」は、コロナ禍で注目された応援消費と癒やしのニーズが相乗効果を生んだ事例だ。全国の動物園と水族館の動物の赤ちゃんの写真をパッケージに使用し、売上の一部を協力施設に寄付するキャンペーンである。同社のビバレッジ事業マーケティング部 片岡由依氏は、「ポイントは『マウントレーニア』が主役になるのではなく、あくまでも社会に貢献すること。コロナ禍で苦しむ動物園と水族館を応援しながら、コロナ禍でストレスを抱える日本全体を癒やすことに主眼を置いた」と企画意図を振り返る。全世界の人々が当事者であるコロナ禍において、「応援」と「癒やし」は、結果的に売上増にもつながる三方よしの施策となった。

最新技術が生んだ新しい癒やしとして注目されているのは、コロナ禍で急速に需要が高まっている家庭用ロボットの分野だ。ディープラーニング技術を駆使し、自然な言葉のキャッチボールを実現した自律型会話ロボット「Romi(ロミィ)」を開発した株式会社ミクシィのRomi事業部マネージャー 長岡 輝氏は、「他のコミュニケーションロボット同様、サイズ感や見た目、仕草、声などの面での癒やしも意識しているが、『Romi』独自の特徴は会話を通じて癒やすこと。ユーザーそれぞれに合わせた癒やしが提供できるように今後も会話を磨いていきたい」と話す。すでに多くのユーザーにとってかけがえのないパートナーとなっている「Romi」は、福祉や教育などの領域からの引き合いも強まっている。

受け身にならない前向きな癒やし

開発段階から癒やしをテーマに掲げてきたミクシィの長岡氏が、「これまでの癒やしは音楽など五感に訴えかけるものが多かったが、会話を通じて癒やす『Romi』のようにアプローチは多様化してきている」と語るように、ニーズの多様化やテクノロジーの進化に伴って、今後、癒やしのアプローチはますます多彩になるはずだ。アスリートらの協力のもと実証実験を重ねてきたロート製薬の星氏は、「スポーツの世界には体を動かしながら疲労回復効果を高めるアクティブレストという考え方があるが、香りにおいても日常的に使うことで心身を癒やし、健やかな状態を維持できるようにサポートしていきたい」と意気込む。「香りのアクティブレスト」という提案もまた、新たな癒やしの形といえるだろう。

一般消費者向けのみならず、オフィスの緑化事業なども手がける日比谷花壇だが、ハナノヒ運営グループの田村朝紀氏が、「これまでもオフィス緑化における癒やしの効果は注目されてきたが、コロナ禍では個人や家族単位でささやかな心の癒やしが求められるようになり、花を通じて家族を癒やしたいというお客様も増えた」と語るように、コロナ禍は商品やサービスを通じて受動的に「癒やされる」だけではなく、誰かを「癒やす」存在にもなり得るという認識を生活者に育んだともいえる。また、「深い癒やしプロジェクト」を展開した森永乳業の片岡氏が、「商品のスペックを強く打ち出すことよりも、それをご利用いただくお客様の情緒的な部分に訴えかけるブランドになることで、今求められている癒やしのニーズに応えたい」と将来を見据えるように、生活者の気持ちに寄り添い、癒やしを通じてユーザーとの深い関係を結んでいくことが、今後のビジネスのヒントとなりそうだ。

花のサブスクリプションサービス「ハナノヒ」
「ハナノヒ」は、花のサブスクリプションサービスだ。
AIを搭載自律型会話ロボット「Romi」
日本語データを学習し、AIを搭載した自律型会話ロボット「Romi」。
動物の赤ちゃん写真パッケージ「深い癒やしプロジェクト」
動物の赤ちゃんの写真をパッケージに展開した「深い癒やしプロジェクト」。
香りの研究、商品やサービスの開発、販売を行う「べレアラボ」
「べレアラボ」は、香りの研究、商品やサービスの開発、販売を行う。